多層プリント基板の3Dプリンターの可能性とは

プリント基板のオンデマンド製造の可能性

3Dプリンターと同時に開発が期待されるのが、電子回路などのプリント基板のオンデマンドマシーンだ。3Dプリンターで金型を使用しなくても1個単位から試作品が製造できるように、プリント基板が1枚単位から作れるようになれば、電子機器の製品開発はよりスピーディになるだろう。

一般的なプラスチックの筐体が金型を作らなければならないように、多くの電化製品に使用されているプリント基板も、量産が当たり前である。一度回路設計されたものを基板屋さんに以来し、一定の数量から試作してもらうという方法だ。

もしこれを自分でやろうとすれば、できないことはないが、ユニバーサル基板やスズメッキ線のはんだ付けといったかなり手間がかかることになる。また、ユニバーサル基板とスズメッキ線では、単純な回路図は再現できても、複雑な多層基板を再現することは不可能だ。

本日ご紹介するのはそんなプリント基板の製造や試作の概念を覆すマシーンだ。多層プリント基板の3Dプリンターとも言える、イスラエル企業Nano Dimensionの取組をご紹介。

高レベル、ナノ精度の多層プリント基板の3Dプリンター

イズラエル企業Nano Dimensionが開発する3Dプリンタートンボ2020は、高レベルの精度での多層回路基板をプリントすることが出来る。独自の導電性銀ナノインクとインクジェット堆積技術によって、複雑な多層基板のプロトタイプから1枚単位の製造まで幅広く対応出来るものだ。

これまでの外注のように一定量の数量から頼まなくても、回路設計のデータから直接製造が出来る。現在は基本的な製品概要の発表にとどまっているが、2016年までに本格的な実用化を目指す方向にある。もし、この3Dプリンターが実用化されれば、電子回路設計の分野に革新をもたらすだろう。

1枚単位から低コストでスピーディにつくることができれば、電化製品の新商品開発がよりスピードアップし、また資金力の不足するベンチャー企業でもアイデアと設計データから試作品をつくることが出来る。このトンボ2020で内部の核となる多層基板をつくり、筐体は3Dプリンターで作れば、実際に最終品に近い機能とデザインを持つプロトタイプを公開できるわけだ。

多層プリント基板 トンボ2020プリンター動画

まとめ 電化製品の製品開発が加速

ご参考までにプリント基板について簡単にご説明すると、多くの家電製品、テレビやパソコン、スマートフォンのなかには無数の細かい電子部品が装着された緑色のボードが入っていることをご存知の人も多いだろう。この緑色のボードがプリント基板と言われるもので、その製品を動かす核となる電子回路がプリントされている。

一見すると1枚の板に回路図が描かれているようだが、プリント基板は何層にも重ね合わされてできており、目に見える表面以外にも複雑な回路図が描かれている。現代の多くの電化製品の小型化や、薄型化の背景には、電子部品の極小化もあるが、このプリント基板の多層化ということも挙げられる。

これまで多くのボードに回路図を描かなければならなかったものが、薄いボードを重ねて1枚にすることで驚く程コンパクトにできるようになった。しかし、このプリント基板は前述のとおり、1枚単位で作ることは到底できず、常に一定量のロットが必要である。

しかし、今回ご紹介する多層プリント基板の3Dプリンターとも言えるマシーンが実用化されれば、回路図のプロトタイプ製造は驚く程手軽になり、コストや時間は圧倒的に短縮されることになる。すなわち従来以上に電化製品により優れたアイデアを反映できるようになり、製品開発が圧倒的に加速することになる。

またプリント基板はナノレベルでの高精度な仕上がりが求められるが、そこまでカバーされるとなれば、3Dプリンターとは違い、最終品をそのまま作れるようになるかも知れない。2016年度の登場が気になるところだ。

電子機器のクオリティを左右する、はんだの重要性についてはこちらをどうぞ

i-MKAERでは光造形3DプリンターForm3+やレーザー焼結3DプリンターFuse 1Raise3Dシリーズなど多彩な3Dプリンターのノウハウ、販売をご提供しています。ご質問や無料サンプルや無料テストプリントなどお気軽にご相談ください。