プリント基板の試作ができる時代に
電子機器を動かすのに必須のプリント基板。通常、電子工作や電子機器の試作において、プリント基板は市販のものを購入して使用するのが一般的だ。
その後購入してきたプリント基板の上にさまざまな電子部品を配置し、はんだ付けしていく。プリント基板の種類は非常に多くのものが存在し、組成や構造によっても多岐にわたるため、さいわい選ぶのに不自由はしない。
このプリント基板は、専門のプリント基板メーカーが数多く存在するが、市販には無いものをゼロから作ろうとすると大変だ。外部の基板メーカーなどに外注しなければならないし、当然のことながら大きなコストと時間がかかる。さらには機密保持があるとはいえ、電子回路という知的財産を少なからず公開することにもなる。
そのため莫大な資金を持たない起業家にとって、残された選択肢は、既に一定の電子回路が埋め込まれた市販のプリント基板の中から、最適なものを選んで使用するという方法しか残されていない。
しかし今、そんなプリント基板をオンデマンドで作ることができるプリント基板専用のインクジェットプリント技術が開発されている。しかもそのプリント基板の3Dプリンターともいえる技術は、銀ナノ粒子の高性能なプリント基板が高速で作ることができるという開発だ。
本日はイスラエルの企業NANO DIMENSIONが開発する高性能なプリント基板のオンデマンド生産技術をご紹介。

プロ品質の多層プリント基板を高速プリント可能
本日ご紹介するプリント基板のインクジェット技術は、まさにプリント基板のデスクトップ3Dプリンターともいえるマシーンだ。MakerBotやRepRapなど、低価格なデスクトップタイプの3Dプリンターを使うことで、オフィスや自宅で簡単にデータから物体が出せるように、このインクジェットプリンターを使えば高性能なプリント基板をオフィスで簡単に作ることができる。
ちなみん、低価格帯の3Dプリンターで作られるモノは仕上がりや精度などが決してよくはないが、このプリント基板のインクジェットプリンターは、高性能なプリント基板を作ることができる。
冒頭でも述べた通りプリント基板には数多くの種類が存在するが、現代の複雑な電化製品や電子機器は、基板の多層化が一般化している。多層化とは、ウエハースのように電子回路と絶縁体が何層にも重なっている基板のことを言い、パソコンなどの複雑な動作を要求される電子機器に使われる。
このNANO DIMENSIONが開発するインクジェットプリンターは、この多層基板の試作もできるというわけだ。しかもプリントするスピードも非常に早く、まるで紙のインクジェットプリンターでプリントするような感覚で絶縁基板に高い導電性を持つ銀ナノ粒子をプリントできる。
NANO DIMENSIONが開発するプリント基板のインクジェットプリンター


NANO DIMENSIONが開発するプリント基板動画
高い導電性を誇る銀ナノ粒子を高速プリント

イスラエルのハイテク企業
まさに高性能な電子回路の試作や開発に最適なデバイスだと言えるマシーンだがこのプリンターを開発するメンバーもすごい。
このマシーンの開発を手掛けるイスラエル企業NANO DIMENSIONは、2012年に結成されたこの分野のスペシャリスト集団だが、創業者兼CEOのAmit氏は、2011年から2013年まで、スイスで最も影響力のある人物300名の中に選出され、昨年の世界経済フォーラムのヤング·グローバル·リーダーズのメンバーでもある。
ナノテクノロジー、導電性インクの開発生産、インクジェットプリントシステム、プリント基板開発、ソフトウェアエンジニアに精通する専門集団で、イスラエルの経済産業省内部に事務所を構え、政府から50万ドル(約5000万円)の資金援助も得ている。
既にこの銀ナノ粒子のプリント技術は特許取得済みとのことで、多層プリント基板を作るために、正確で汎用性の高いインクジェット堆積ツールとして機能するよう開発が進められている状況だ。
まとめ
この高性能なプリント基板のインクジェットプリンターが完成すれば、多くの電子機器の開発に革命的な影響を与えるだろう。3Dプリンターを使うことで、多くの製品の製造と開発が効率化されていくように、電子機器の製品開発の生産効率はますます向上し、多くの新商品を輩出する動きを促進するに違いない。
間違いなく時代は製品のオンデマンド生産の時代に近づいており、電子機器の試作開発、小ロット生産も同じように可能になる。
とりわけこのNANO DIMENSIONが開発するインクジェットプリンターの注目すべき点は、高伝導率が期待できる銀ナノ粒子配合の導電性インクを使っている点と、複雑な多層基板が作れるという点があげられるだろう。電子機器の開発と製造にとってもっとも重要な部分は、導電性と接合技術に尽きてくるが、この機器はその二つのポイントを押さえているように思われる。
どんなに製品設計が良くても、実際にそれを正確に稼働させ、不良を起こさずに使用させるためには、高い導電性と、正確な接合技術が必要になる。
こうした点から言うと、プリント基板の試作が作れる3Dプリンターは各社開発に乗り出しているが、この二つの視点を備えたプリンターはNANO DIMENSIONが開発するインクジェットプリンターが最も期待が持てるかもしれない。
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