3Dモデリングソフトウェアを簡単にする開発。MITのFab Forms

3Dモデリング作業を簡単にする開発が進む

3Dプリンターの開発とともに発展が期待されるのが、3Dモデリングソフトウェアの開発だ。言うまでもなく3Dプリンターで出力するためには、ベースとなる3Dデータの制作が必要になる。しかしこの3Dデータは一定のスキルがなければ作ることができず、3Dモデリングソフトは誰でも気軽に扱えるわけではない。

もともと3Dデザインソフトは、高度な設計ソフトとして、ものづくりや建築分野での使用が当たり前であったが、3Dプリンターが特許切れと進化によって民主化が進む過程において、どうしても3Dモデリングソフトの民主化も行われる必要がある。既に、3Dデータを作成するための技術の一つとして、3Dスキャニングも容易になりつつあるが、同時にモデリング作業も簡略化しようという動きが加速している。

例えば3Dデザインソフトの最大手であるオートデスクは、誰でも気軽に3Dモデリングできるアプリ123DCatchや、クラウドベースのソフトウェアでも、従来よりははるかに簡単に扱えるように開発を進めている。

そのような中、新たにMITマサチューセッツ工科大学の研究者たちが、より3Dモデリングを簡単にしようという開発に着手している。本日はMITが開発する3Dモデリングを超簡単にするソフトウェアFab Formsをご紹介しよう。

3Dモデリングを簡単にする開発はこちらの記事もご参照ください

3Dスキャンを手軽にする開発はこちらの記事をご参照ください

仮想スライダーで3Dデータを視覚的に変更。物理的担保も

MITは3Dモデリングを簡単にするソフトウェアの開発にかねてから着手している。以前ご紹介した「MITはものづくりの知識がなくても誰でもデザインできる3Dプログラムを開発」という記事で、パーツを組み合わせることで一つのプロダクトを作るソフトウェア開発をご紹介したが、今回ご紹介するFab Formsは、より現在の3Dモデリング作業に近いもの。

このソフトはMITとともにイスラエルのHerzliya学術センターが共同で開発をおこなう。研究者たちの目的は、誰でも3Dプリントすることができる3Dモデルを制作できるようにすることにある。特に製品開発にまったく関わったことがない人、アマチュアの人たちが3Dプリンターを使用するには相当ハードルが高く、スキルの習得や3Dプリンターの仕組みを理解するためにそれなりの時間がかかる。

今回開発が進む3DモデリングソフトウェアFab Formsは、CADファイルをWeb上に取り込み、そのデータをシンプルな仮想スライダーを使用して変更することができるというものだ。言うなれば、3Dモデルを視覚的に操作することで、デジタル上の設計データを簡単に変更できるようにするもの。

従来の一般的なCADソフトウェアは、設計がどのように見えるかを変更するためには、ソフトウェア上の変数を変更し、最終的にそれが物理的に物体として成り立つかどうかまた、同時に3Dプリント可能かどうかを判断し、コンピューターに実行する必要がある。しかしMITの研究者がおこなうこの開発では、こうした専門知識が必要になる作業が、クラウド上で一瞬で操作が完了するようになる。

ちなみに現段階ではこのFab Formsの開発はテスト段階であり、いくつかのシンプルなモデリングデータを用いて実験中である。具体的にはチェスセット、コーヒーマグ、おもちゃの車、ハイヒールなど8種類の3Dデータであり、個々のパラメーターが変更された場合には、各オブジェクトがくるアド上で即座に反映され、さまざまなバリエーションデータを一瞬に変更できるように格納するとのこと。

より簡単に効率化し自動化する3Dモデリング作業

このFab Formsでは、3Dプリントすることができない変更や、不安定な変更は、システムが自動的にパラメータ値を除去し、ユーザーインターフェースが極力高められる仕組みになる。これは、以前もご紹介したオートデスクFusion360の構造解析機能に通じる部分であり、3Dプリントすることが不可能な箇所や、物理的に不安定な部分を修正、除去する動きに繋がるだろう。

現在ではまだ、シンプルな形状のモデルしか変更することができないが、この開発の行き着く先は、どのような構造的なモデルでも、瞬時に3Dプリント可能な、物体として物理的に問題のない状態に一瞬で変更できるようにすることである。いわば3Dデータ化する作業効率が大幅にアップし、極端な表現を使用すれば、まったくの初心者でも簡単にスライダーで形状をいじることが可能になる。もちろん、細かい設計や機械的特性が要求される製品開発においては、より詳細な検証が必要であるが、3Dモデリング作業がより簡単になることは間違いない。

簡単なモデリングで実験中

まとめ デザインの力が重要性を増す

このような3Dモデリングソフトの大幅な簡略化は、製品開発においてどのようなことをもたらすのだろうか。極端な表現を使えば、誰が操作しても3Dデータ化はできるようになる。また同時に、同じようなプロダクトが登場する可能性が高まるという事に繋がるのではないだろうか。

例えば、競合他社の製品をそのまま3Dスキャナーでスキャンし、ちょっと変更を加えて生産するということも可能になるかもしれない。ただでさえモノ余りの状況の中、似たようなプロダクトが蔓延する事になるだろう。そのような状況の中において、商品としてエンドユーザーの方々に認識してもらい、購入してもらうためには、もっと根本的な土台を確立させる必要があるだろう。

それは誰のためにどんな価値を提供するかというコンセプトの確立であり、さらにそれを最適な形でアウトプットするプロダクトデザインの力がこれからの時代最も求められることになる。

3Dプリンターとデザインに関する記事はストラタシス3Dプリンタ研究室ブログでも連載しています。

i-MKAERでは光造形3DプリンターForm3+やレーザー焼結3DプリンターFuse 1Raise3Dシリーズなど多彩な3Dプリンターのノウハウ、販売をご提供しています。ご質問や無料サンプルや無料テストプリントなどお気軽にご相談ください。