MITの3Dプリンターと3Dスキャンの融合はマルチ素材プリントを可能にする

職業訓練校から最先端研究所になったMIT

アメリカにおいて最先端技術の研究と言えばシリコンバレーが有名だが、それと同じぐらい中心的な役割を果たしているのが、ボストンにあるルート128地域だ。実はボストンにはアメリカでトップレベルの大学が多数存在することでも有名。

ハーバード大学や、ウェルズリー大学、そして本日ご紹介するMIT、マサチューセッツ工科大学だ。マサチューセッツ工科大学は、世界で最も最先端研究が行われている学校の一つで、ノーベル賞受賞者も多数輩出している。同じ市内にあるハーバード大学とはライバルと同時に提携も結んでいる関係にもある。

今では最先端というイメージが強いMITだが、実はもともとは学生向けに開始された大学ではなかった。創立当初は、社会人が主な対象であり、エンジニアや機械工、熟練工、建設業者など、特定の技能を身につけた人たちが勉強する大学として始まっている。

そうした歴史的経緯から、当初は職業訓練学校としてハーバード大学などから下に見られることも多かったが、第二次世界対戦中における軍事技術の研究に参加して依頼、常に最先端分野の研究をリードする存在にまでなっている。

そんなMITだが、3Dプリント技術の研究開発においても、さまざまな研究開発を行っている。本日はMITの3Dプリント技術と3Dスキャン技術を融合させる新たな技術開発をご紹介。

新たな3Dスキャニングの使い方

先週MITはアイスクリームの3Dプリント研究を発表したが、同じクラスの他のチームは全く異なる3Dプリント技術を研究していた。その研究はなんと、3Dプリンターに3Dスキャニング技術を組み込んでしまうというものだ。

ご存知のとおり、3Dスキャンの使用方法は、物体をスキャニングし三次元データ化、その後そのデータから3Dプリンターで複製するというやり方。

製品開発の現場では、リバースエンジニアリングの際に使用されてきたが、最近では人をスキャンしてフィギュアにするサービスなど、エンターテイメントとしても使用が開始されている。そのため3Dスキャニングは、3Dプリンターで作るためのデータを取得するために使用されるのが一般的だが、MITの研究はどのようなものなのだろうか。

下記はMITが開発した3Dプリンターに3Dスキャンを組み込んだ動画だが、それによると、途中で中断してしまったり、止まってしまった物体を蘇らせるためのもののようだ。

3Dプリンターに3Dスキャニング技術をいれた開発動画

レーザーとカメラで物体の位置と高さを正確にスキャンする

仕組みはプリンターのヘッドに取り付けられたレーザーとウェブカメラにより平面ラインを読み取り、台座にある物体の状態をスキャニングすることができるというものだ。もし、台座に物体があれば、下記の図のようにレーザーラインが歪んでその物体の形状を認識するというものだ。そして物体の正確な高さを読み取り、そこから3Dプリントを再構築することができるというもの。

物体が存在するとレーザーラインが歪み、正確な高さをスキャンできる

ミスプリント防止や異なる材料の組みあわせが可能

この3Dスキャニング技術の融合は、二つの部分で3Dプリンターの性能を高めてくれる。第一は、FDM3Dプリンターで課題となっているミスプリントによる材料の無駄をなくしてくれる。フィラメントを溶融し、ノズルから押し出して積層するFDM方式の低価格3Dプリンター問題点は、ミスプリントが多いという点だ。

周囲の温度、湿度、データの状態、というさまざまな要因が影響するため、生成途中で止まってしまうことや、ノズルが詰まることも珍しくない。もし作りかけの状態で停止してしまえば、それは捨てるしかなく、その分の材料と時間は全く無駄になってしまう。

しかし、この技術を利用すれば、作りかけの状態で停止したとしても、正確に作りかけの形状がスキャニングされるため、そこから再開することが可能だ。

第二は、異なる素材に途中で変更可能だという点だ。上記で公開した実験動画で示しているとおり、既に途中までつくられた白いピラミッド形状のものはABS樹脂を使用してプリントされたもので、途中からスキャンされて、追加でプリントされた、ブルーのキューブはPLA樹脂によって生成されている。ABSPLAは同じ樹脂だが、温度依存性や剛性など物体としての性質が全く異なる。

白い部分はABS樹脂、ブルーの部分はPLA樹脂で構成されている

異なる素材のマルチプリントの可能性

まとめ -低価格のマルチプリンターの可能性-

現在この研究は、3Dスキャニングの精度をさらに向上させ、より細かいレベルまでスキャンできるようにしようとしている。この技術開発の示しているところは、上記で述べたとおり、ミスプリントをリカバーするだけではなく、異なる素材に途中から自由に切り替えすることを可能にする。

こうしたことから見ると、3Dプリンターの性能が飛躍的に向上することが分かる。現状の低価格モデルの課題である、ミスプリントをなくすだけではなく、将来消費者向け市場で主要な地位を占めるマルチ素材に対応した3Dプリンターの雛形となる技術だ。

この研究が精度を高めて実用化されれば、積層の粗さがめだち、ミスプリントが懸念されるFDM方式の強みが出せる事になるだろう。光造形だけではなくFDMもまだまだ開発状況によっては、市場で主要な地位を占める可能性がある。

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