MITは蝋と泡からなる硬さが変わる形状記憶3Dプリント材料を開発

先端分野の研究開発から産まれる新素材

3Dプリンターの研究開発の焦点は、何の製造に利用することができるか、という視点から行われるケースが多い。

とくに最先端技術である宇宙開発やロボット工学、先端医療などの分野では、開発目的が明確であり、その目的を達成させるためにあらゆる研究が行われる。

なかでも製法と素材、この二つの研究開発が主導的地位を占めていると言ってもいいだろう。今回ご紹介する新たな3Dプリンター材料もそんな、先端技術の製品開発の要望を受け、産まれた素材の一つだ。

本日はMITが開発した硬さと柔らかさが切り替えできて形状記憶機能をもつ新素材をご紹介。

泡の収縮性と蝋の形状変化に注目

今回MITが開発した素材はもともとアメリカ国防総省の国防高等研究計画庁、通称DARPAの要望に基づいて開発されたものだ。研究開発にあたったのは、MITの機械工学と応用数学の教授が率いる専門チーム。

国防高等研究計画庁からの要望内容は非常に狭い場所でも活動することができるロボットの開発だ。

その要望に基づいて研究チームが熟慮した結果、硬さと柔らかさが切り替えることができる素材ではないとこの要望を満たすことができないとの結論に達した。この素材の開発秘話が面白いのがこの後だ。

なんとこの結論から導き出された素材は、我々の身の回りに存在する泡と蝋だという。この二つの素材を選んだ理由は、それぞれの物性にある。まず泡、すなわち発泡体だが、物性上、小さく圧縮できるという特長を備えており、非常に狭いところで活動するという使用条件にピッタリなところから選ばれている。

次にワックスすなわち蝋は、熱を加えると柔らかく、冷やすと硬くなるという物性を備えている。これもDARPAが希望するロボットの条件にピッタリだ。これにより、溶けた蝋に、ポリウレタン発泡体を浸すことでこの新たな3Dプリント材料が誕生することとなった。

硬い場合と柔らかい場合

熱して柔らかくなったものと硬い状態の比較

最先端ロボット開発での利用

それではその驚異の物性を見てみよう。下記の動画はMITのチームが開発した硬軟切り替え可能な3Dプリント材料だ。形状記憶を保ったまま、柔軟な状態をキープしているのがわかる。また熱を加えることで蝋のもつ物性を再現している。

MITが開発した形状記憶素材の動画

この新素材の利用範囲はDARPAの要望から、震災時における瓦礫の隙間や人が入ることができない場所での人命救助、調査を目的としたロボット製造に使用されることになる。また、形状記憶機能や硬軟切り替えができる機能から、患者の身体の中を傷つけることなく手術できるとして医療用手術ロボットの開発に使用されることを期待されている。現在MITの研究チームはより実用化に向けた研究に進んでいる状況にある。

まとめ

MITが開発したこの新素材が実用化されることで災害時の緊急対応や、医療手術の幅が大幅に拡大することになる。特に、硬さを変えられて、形状を記憶することができるという機能は、これまでにない特性であり、上記以外の様々な分野で応用されるかも知れない。一つの新素材の研究開発は、それそのものが大きな意味を持っている。

とりわけ3Dプリント材料の研究は、あらゆる分野に影響を与えかねない。今後も注目を払うべき分野だ。

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