モノを作るには構造体の理解とパーツの知識が必要
世の中に存在するほとんどのモノ、製品は、複数の異なるパーツで構成されている。
テーブルや椅子といった家具のように数少ないパーツで構成されるシンプルなモノから、テレビや車のように基板まで含めると数え切れないほどの無数のパーツで構成される複雑なモノまでさまざまだ。
こうしたモノの構造を知ることは、デザインを行う上で、ものづくりを行う上で理解しておかなければならない必須の知識といえる。しかし、その構造体を全て理解し、必要な細かいパーツ類まで全てを把握することは難しい。
例えばIKEAで購入する家具には、あらかじめ組立指示書と、組立に必要なネジ、ブラケット、などのパーツ類が梱包されている。しかし、こうした指示書や、必要なパーツ類があらかじめ分かっていなければ、どんなモノでも作るのは不可能。
ここ数年、個人のものづくり、パーソナルファブリケーションという概念が浸透してきているが、日曜大工のようなDIY感覚まで広がるには、このような構造に対する理解と、それを構成するパーツ類の把握は不可欠だ。
そんな中、MITマサチューセッツ工科大学が、こうした課題を克服する面白いデザインプログラムを開発している。このプログラムでは、3Dでモノをデザインできると同時に、それに必要な全てのパーツ類を示してくれるという画期的なプログラムだ。
どんなモノも複数のパーツとパーツが接合されて構成されている
組立に必要な接合部のパーツまで全て把握するのは難しい
必要なパーツを自動的にピックアップする3Dモデリング
MITが開発このデザインプログラムは、言うなれば、作りたいモノのパーツを全て自動で選定してくれる3Dモデリングプログラムだ。そこに組み込まれているパーツ類のデータは大規模なもので、例えばある家具をプログラム上で組み立てれば、その家具に必要なパーツを自動で選び出してくれる。
それは大まかなパーツだけではなく、パーツとパーツをくみあわせる細かいネジや溶接部、取付口、ブラケットなども含まれる。そのためその製品の構造体に関する知識や、接合するための必要なパーツ類の知識を持っていなくても、モノを作り出すことが出来る。
極端な言い方をすれば、その製品の知識がない人や、ものづくりのスキルがない人でも、ものづくりができるという点だ。MITでは代表的な例として家具とゴーカートを構成する3Dデザインプログラムを公開しているが、視覚的で簡単なインターフェースで、まるでiPadのアプリケーション感覚でモノがデザインされていくのが分かる。
一見すると単純なパーツ類のカスタムメイドに見えるが、格納されているデータベースが膨大であるため、まさに千差万別の製品をつくることができる。
MITが開発した3Dデザインプログラムの動画
パーツの膨大なデータベースを格納
構造体によって自動的に必要なパーツを選出
自由にパーツを組み合わせて構造体を作れる
3Dデータでデザインした家具を実際に組立
3Dデータでデザインしたゴーカートとその実物
まとめ カスタマイズ製造を加速させる開発
MITの発表では家具とゴーカートの3Dデータが公開されているが、全ての商品に利用可能だという。例えば普通の人ではつくることが不可能な機械加工品なども、このプログラムでは膨大なパーツ類をデータベース化できるため対応可能になる。
コンピューターやスマートフォン、車、服など、この世に存在するどんな製品も適応できるとのことだ。もちろん、それに必要なパーツ類を用意するのが大変だろうが、少なくとも、デザインと必要なパーツ類の選定を行うことができるというわけだ。
このデザインプログラムが革新的な点はいま進化しつつある3Dプリント技術と融合させることで大きな力を発揮することになる。
例えば、Googleと3Dsystemsが行うスマートフォンのカスタマイズ製造もこのMITのデザインアプリケーションに近いが、MITの場合は、膨大なパーツのデータベースにより複雑なモノや、さまざまなモノでのカスタマイズができるようになる。
また、Shapewaysなどのようにクラウド上で商品をカスタマイズできるサービスも登場しているが、こちらのMITのプログラムが実用化されれば、カスタマイズの幅は無限大に広がることになる。
まさにカスタマイズ製造を拡大する可能性を秘めている開発だ。もっと突っ込んでいうと、将来3Dプリンターがより低価格で使用できるようになり、また様々な素材を組み合わせて使用できるようになれば、個人のものづくりが今のDIYと同じ感覚で行える時代が来るのかもしれない。
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