量産性とミクロレベルの高精度を実現、金属3Dプリント「マイクロコンポジット」

製品開発におけるミクロレベルやナノレベルの重要さ

ミクロレベルという言葉がよく使用されるが、ミクロでモノを作りあげることのメリットはどのようなことがあげられるのだろうか。国際的な単位で見てみると、ミリメートルの次がマイクロメートルで1000分の1ミリ、その次がナノメートルでマイクロメートルすなわちミクロンの1000分の1、そしてさらにその先にはピコという単位も存在する。

現在ものづくりや製造現場で頻繁に使用される単位はおそらくナノメートルまでで、ナノメートルの単位は、半導体製造の現場などで使用される。半導体にもさまざまな種類があるが、ナノメートルの技術はどのような点に活かされているのだろうか。その機能と概要をわかりやすく簡単に説明すると、一つの細かい部品に見える半導体だが、実はその中に複雑な電子回路がナノメートルレベルで描かれている。

現代のさまざまな電子機器はいろいろな機能を発揮することができるが、その機能性を発揮するためには、ナノレベルで描かれる複雑な電子回路が必要だ。例えば現代のスマートフォンや超薄型のノートパソコンを思い浮かべていただきたい。あの小さいコンパクトな中に、様々な機能が搭載されている。この機能を発揮するためには、複雑な設計を超コンパクトに行わなければならないのだ。

言うなれば製品の小型化とハイスペック化にとってナノレベルやミクロレベルのものづくりは必須の存在と言える。こうしたナノレベルの半導体技術が、現代のエレクトロニクスの発展に欠かせなかったように、製品の性能向上には、ナノレベル、ミクロレベルの製造技術が欠かせない。そして今、新たなミクロレベルの超高性能な金属加工技術が登場している。

レーザー焼結よりはるかに高精細で量産もできる

本日ご紹介する新たな金属加工の製造技術は、レーザー焼結などよりもはるかに高精細のミクロレベルの金属パーツの製造を可能にする技術。この製造技術で高度なエンジニアリング金属パーツを提供するのはMicrofabricaというカリフォルニア州に本拠を置く企業。世界で唯一の金属パーツの量産3Dプリントを行なう企業だ。

その詳しい製造技術の原理は明かされていないが、「マイクロコンポジット」と言われるこの製造技術は、レーザー焼結よりもはるかに高精細なミクロレベルの金属パーツを3Dデータからダイレクトに製造することができる。また、ダイレクト製造だけではなく、量産することも可能とのことだ。そこには前段で述べたナノレベルが要求される半導体製造の技術が応用されているとのこと。アッセンブルの必要性が無い微細な金属パーツをデータから直接生成することができる。

下記はレーザー焼結法と比較した場合のマイクロメートルレベルの拡大図だが、レーザー焼結法で作られた金属パーツよりもはるかに直線性を保っている。この「マイクロコンポジット」により作られた微細金属パーツは主に、航空宇宙産業、医療機器、半導体産業などを目的に使用され、数百万のパーツを製造することができる。金属の使用範囲もニッケル、コバルト、パラジウム、ロジウム、銅といったエンジニアリンググレードの金属を使用しており、誤差も±2μメートルという驚異的なもの。

±2μメートルの誤差を誇る「マイクロコンポジット」動画

ものづくりの進化には、小型化と接合技術が最重要

モノづくりの発展と進化、特にハイテク産業において超小型化と精密な接合技術は必須である。前述したとおり、多くのコンピューターが驚くほど高性能で小型化している背景にはミクロレベル、ナノレベルの製造技術が大きな役割を果たしている。複雑で小型化した設計を実現させることで、これまでできなかった可能性が生まれてくるからだ。

また同時に接合技術が非常に重要になる。ここでいう接合技術とは、精度の高いパーツとパーツを正確に適切にくっつける技術のことを指す。どれだけモノやパーツが小型化されたとしても、本来あるべきカタチでそれが接合されていなければその製品の機能や性能に大きな障害をもたらす。いわば小型化し複雑化すればするほど接合技術は極めて重要になる。

そうした点から言うと、本日ご紹介したMicrofabricaの「マイクロコンポジット」で作られたパーツは、マイクロメートルでも直線性を失わない高精細を保っている。データからダイレクトに作れるということは極めて大きな進歩だが、積層する際の精密さは、接合レベルにダイレクトに影響するため、細心の注意が必要になるだろう。小型化と接合技術がこれからのものづくりにとってますます大きな役割を発揮するに違いない。