アメリカすべての学校に3Dプリンターを導入する狙い
MakerBotは2009年に設立された3Dプリンターメーカーで、デスクトップ型3Dプリンターでは圧倒的な市場シェアをもっている。
最近では3Dプリンターのパイオニア企業の一つストラタシスに買収され子会社になっている。MakerBotが提供するデスクトップ型の3Dプリンターは高性能な3Dプリンターに比べて比較的安い値段で提供されているため、デザイナーや建築家や教育分野での導入が進んでいるようだ。
また、個人が小規模レベルで3Dプリントサービスが始まりつつあるが、そうした人々が使用する3DプリンターもMakerBot製のものがとても多いのが現状だ。
このMakerBotが新たな動きをはじめた。教師向けのクラウドファンディングDonorsChoose.orgと提携を行い、学校への3Dプリンターの導入を加速することを狙っている。
このMakerBotのミッションはアメリカの全ての学校にデスクトップタイプの3Dプリンターを設置することだ。
もともとは2012年にオバマ大統領が3Dプリンターによってアメリカに製造業の革命を起こすという演説を行い、1000校の学校教育機関に3Dプリンターを設置し教育分野にも取り入れることを発表した経緯がある。
さらにはオバマ大統領の演説だけではなく、様々な要因によって2013年から世界中で3Dプリント技術に対する注目が集まりつつあり積極的に導入しようという取組が始まっていることは間違いない。
こうした世界的な「次の産業革命」といった気運の中、MakerBotはアメリカの全ての学生に対して、製品を設計し作成する能力を与えたいと考えているようだ。
また同時に、MakerBotの社長が言っていることは、若い世代の人々に対して従来のような消費者思考ではなくメーカー思考を与えたいと考えている。
MakerBot Replicator2
学校向けクラウドファンディングDonors Choose.orgとは
それではMakerBotが提携するDonors Choose.orgとはどのようなサービスを提供しているのであろうか。Donors Choose.orgは学校を支援するクラウドファンディングで、オンライン上の慈善団体と言える。
サイトを訪問した人は支援したいプロジェクトに対して寄付を行い、目標金額に達するとプロジェクトが成立するというものだ。
寄付は1ドルから可能で、自分が寄付したプロジェクトが成立した場合には、プロジェクトの進捗状況の報告や写真、先生や生徒たちからのお礼の手紙が受け取れるというもの。資金調達期間は最大で4ヶ月で、プロジェクトの成功率は70%に上っているという。
例えば3Dプリンターを自分の学校に設置したい場合は、教師がDonors Choose.org上の
MakerBotとの提携プロジェクトに登録を行い資金調達するというものだ。
Donors Choose.org TOP
また、MakerBotの最高経営責任者Bre Pettis氏は個人的に、MakerBot本社があるニューヨークのブルックリンの公立高校に対してMakerBot® とReplicator®の二つの3Dプリンターを置くことを約束している。
さらに機器本体を設置するだけではなく、親会社であるストラタシスの創立者で技術開発を行ったRalph Crump氏がサポートすることを約束した。
MakerBotはこのように発表している。「MakerBotの使命の中核は、学生たちが自分の創造性のロックを解除し、将来のキャリアのために準備をすることを支援することにある。また、同時に設計思考をもつ次の世代の人材を鼓舞することにある」としている。
まとめ
MakerBotが掲げる目標「アメリカの全ての学校に3Dプリンターを設置する」というものはアメリカのこれからの製造業の根幹となる人材を育成するという理念に基づいたものだ。
製造業を確固とした産業として確立するためには、エンジニア、プロダクトデザイン、といった根幹になる人材を確保しなければならない。
そうした点からも高度な製造ツールと次世代型のモノづくりの方法を学生のうちから実地に体験し製造に対する考え方や新たな発想法を学んでもらうことがとても重要になるのではないだろうか。こうした教育界に対する導入と教育カリキュラムの開設は、今ある製造業に対して3Dプリンターを導入することと同じくらい重要な意味をもつ将来への投資であると考えられる。
また導入にあたって面白いのが、政府が補助金を出して導入するという取組以外に、学校教育向けのクラウドファンディングDonors Choose.orgとタイアップして資金調達を行なっている点にある。
資金集めを行うクラウドファンディングはキックスターターが有名で、数々のプロジェクトのために寄付金を集めているが、Donors Choose.orgは教育に特化しているため、慈善活動としての意味が強いのが特徴だ。
こうした取り組みによって自分の生徒たちに3Dプリンターを触れさせてあげたい、モノづくりの楽しさを教えてあげたいという学校には最適なプロジェクトと言える。
アメリカはこの教育界への3Dプリント技術の導入だけではなく、自動車や航空宇宙産業、エレクトロニクスなどの主力産業での3Dプリンターの導入や、次世代素材の開発分野における3Dプリント技術の研究など、あらゆる分野での3Dプリント技術の向上に努めており国を挙げて総体的に取り組んでいると感じられる。
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