MakerBotのオープンソース冷蔵庫の開発イベント
GEのオープンコミュニティであるFirstbuild。GEの家庭用家電製品がコミュニティにオープンに公開され、参加者はその家電製品を元に自由な発想で製品開発をすることができる。Firstbuildの取り組みは度々ご紹介してきたが、クラウド上におけるコミュニティをリアルな場所で行うものとして今後の製品開発に影響を与えるものとして注目されている。
すでにいくつかのプロダクトが登場しているが、しずれもこれからの時代のデジタル技術をつかった画期的なプロダクトだ。以前もご紹介した冷蔵庫ChillHubもそのうちの一つと言える。ChillHubは一言で言うとオープンソースの冷蔵庫で、冷蔵庫が一つのハブとして機能し、追加で55種類の家電製品を接続し使用することができる。
ChillHubにはUSBポートとモバイルアプリケーションを備えており、ハードウェアとソフトウェアアプリケーション両方がオープンソースだ。つまり、製品開発のアイデアを持つ者たちはこのChillHubのオープンな仕組みを使い、そこに接続して使用するさまざまな製品を自由に作ることができる。
このChillHub、接続して使用するプロダクト開発のハッカソンがMakerBotによって開催されている。今回で3回目になるMakerBotによるハッカソンが6月13日と14日に開催される予定だ。
冷蔵庫と55種類のキットのハード・ソフトがオープンに
今回開催されるMakerBotのハッカソンはニューヨークブルックリンのMakerBot本社で行われる予定だ。参加者はGEのFirstbuildに参加するメーカーやデザイナー、エンジニアを対象にして行われる。今回もこのChillHubのハードとソフト両方がオープンにされ参加者のアイデアがプロダクトに反映される。
ちなみに参加者によって考案されたプロダクトの試作品はMakerBotのレプリケーターで3Dプリントされる事になる。ちなみにChillHubではスターターキットと呼ばれる部分には55種類もの機能性パーツが付属されており、その55種類も全てオープンソースだ。過去にはこのChillHubと機能性パーツを使用し脱臭ペットボトルなどが開発された。
この製品開発コンテストの受賞者にはMakerBotレプリケーター第5世代とグッズが授与される。ちなみに参加費は無料で6月13日と14日の2日間開催。以前もご紹介したが、Firstbuildでは、200以上ものチームが参加して33時間でGEの家電製品を改良する取り組みが行われた。
今回のMakerBotのイベントはChillHubをつかったものに限定されているが、新たなかたちのコミュニティによる製品開発が今後も進みそうだ。
オープンソースとコミュニティの製品開発は時代の主流に
Firstbuldはもともと自動車のクラウドコミュニティ、ローカルモーターズのコミュニティとGEによって作られたリアルなコミュニティだ。コミュニティメンバーはFirstbuildに配備されている3Dプリンターやレーザーカッターなど、さまざまな試作機を使って自由に製品開発をすることが可能だ。
すでにローカルモーターズはマイクロファクトリと呼ばれる自動車の製造工場を各地に展開させ、バーチャルとリアル双方から、コミュニティメンバーによる製品開発を進めているがこの動きは、今後ハードウェア関連の製品で顕著になるかもしれない。すでに我々の身の回りには基本的なスペックを満たす家電製品が当たり前のように存在している。
テレビ、掃除機、エアコン、冷蔵庫、洗濯機など、どのメーカーのものを見てもほぼ遜色がないレベルで、極論を言えば、どのメーカーの製品を買っても変わらない。このような時代にあって、今回のMakerBotとFirstbuildのオープンソースの製品開発は一つの主流として時代の先端を行くものだろう。
まとめ 特化したこだわりの製品開発かオープンコミュニティ型製品開発か
このようなモノ余りの時代にあっては、よりその分野に特化したこだわった製品開発を行うか(掃除機のダイソン、布団掃除機のレイコップ、扇風機のバルミューダなど)、あるいはより多角化するエンドユーザーの要望にいかに応えるかという製品開発に尽きるだろう。この製品開発の方向性は水と油ほどに方法もこだわりも異なることになる。
1分野にこだわり尽くした製品開発は明確なコンセプトと価値の追求を行うことから、不特定多数の人間のアイデアや機能は全く不要で、ある意味特化し削ぎ落とした強さという部分が求められる。
その一方で今回ご紹介したChillHubのようなプロダクトは全く異なる価値観によって成り立つ製品開発だと言えるだろう。ここでどちらの製品開発の手法、どちらのプロダクトがいいか悪いかという点は抜きにして、今後製品開発を志す企業や起業家は、このどちらかの手法を選択するしかないということが言えるだろう。
中途半端なマイナーチェンジ、ある一部分だけの機能的なこだわり(たとえば従来の日本メーカーのように解像度や画素数で競うというような)の製品開発はゴミのように市場から淘汰される危険がある。
すでに右も左を見渡してもほぼ同レベルの機能やデザイン、価格であるならば、異分野に特化しつくし、とんがったものづくりを行うか、巨大なコミュニティを背景に圧倒的な速度で製品化を進めるオープンソースの製品開発しか差別化はできないし、人に価値を与えることもできないと言える。
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