Maker Clubとイギリス政府の教育プログラムは未来の起業家を育てる

イギリス政府が教育カリキュラム改革のため8万ポンドの助成金を授与

イギリス政府の義務教育におけるITカリキュラムの制定が着々とおこなわれている。以前も「3Dプリントとプログラミングの義務教育化と新たな電子工作キットの動き」という記事でイギリスの教育改革について述べたが、単純にカリキュラムとして制定するだけではなく、より実務的な動きに出ているようだ。

今回イギリス政府は、3Dプリントやプログラミング、ヴァーチャルリアリティ、科学技術など、次世代技術と期待される分野の企業に助成金を付与した。

その企業の数は15社にも上っており、3Dプリント関連の企業が2社含まれている。以前ご紹介したMaker Clubと、Anarkik3Dという企業が含まれている。この助成金を授与された15社は、イギリス政府がスポンサーになって実施するコンテスト「科学技術の学習:インパクトのあるデザイン」の優勝企業たちで、数百社の中から勝ち抜いてきた企業たちだ。

イギリス政府は義務教育のカリキュラムを時代に合った形に適合させようとしているが、体制づくり以前に、その源泉となる企業をバックアップする必要性を感じているのだろう。各社、授与される助成金額はまちまちだが、最高で約8万ポンド、日本円にして約1400万円相当の金額に上る。本日はMaker Clubの本当の狙いをご紹介。

助成金を受けたCarduinoの記事はこちらをどうぞ

8万ポンドの助成金を得たMaker Clubのキット

大規模オンライン教育プラットフォーム 技術習得から販売まで

Maker Clubに関しては以前も何度かご紹介したが、改めてイギリス政府が義務教育に正式に取り込んだ際に、どのような内容を子供たちに教えようとしているのかご紹介しよう。

まずMaker Clubが提供する製品・サービスを簡単にご説明すると、子供向けに3Dプリント電子工作キットを提供している。この電子工作キットを行なうことで、3Dプリンターの扱いから、無線でモノをコントロールするプログラミングの取得まで、次世代の製造技術に必須の二つの技術が習得できるというものだ。

彼らの提供する製品は、スマホでコントロールラジコンタイプのキットがメインだが、全てオープンソースでweb上でダウンロード、購入ができる仕組み。

だが彼らが本当の狙いは、こうしたキットの紹介や販売ではない。目下整備しているのは、オンライン学習システムの構築だ。このオンライン学習プラットフォームは、ストリーミングやライブチャットを使うことで自由に世界中の教室の子供たちに、3D電子工作キットを学習してもらう狙いがある。

また、単なるオンラインの教育システムではなく、そこでは、マーケットプレースとしての機能が搭載され、巨大なオンラインコミュニティとしての役割を持たせる計画のようだ。子供たちがオープンソースを利用して作ったオリジナルなロボットやキットを公開し、販売することもできる。

このオンライン学習プラットフォームでは、プログラミングコードの書き方や、3Dプリンターを使ったエレクトロニクスとデザイン、携帯アプリの開発など、いわば技術習得を狙いにした機能はもちろんのこと、自分で作ったモノをオンライン上で販売するといった現代的な販売方法まで実践することができる。

オンライン教育プラットフォーム

子供たちがオンラインプラットフォームで技術習得から販売まで学ぶ仕組み

まとめ ビジネスに結びつく実践的な教育

このイギリス政府とMaker Clubの大規模オンライン教育プラットフォームは、これまでにない画期的な教育システムだと言えよう。既成の教育体制では、(とくに日本はそうだが)子供たちや学生に平均的な知識や技術を習得させることを目的に作られている。

しかし、この企業と共同で進める教育プラットフォームでは、オープンソースにモノや技術を提供し、なおかつ適切な教育を行なうことで、一人ひとりの個性やアイデアが具現化させることが可能だ。

最も驚きなのは、マーケットプレースとしての機能がある点にある。例えば、このオンラインプラットフォームで教育を受けた子供が、自由に製品を作り販売して事業化することだって不可能ではない。少なくとも、子供たちの創造性を伸ばし、それをさらに育てる環境を作るという点では、画期的な役割を果たしている。

いずれにせよ、公共機関である政府が企業と組んでこのような取り組みを開始することが日本ではあまり考えられない事例である。とりわけ公平性や平等性を優先する日本の行政機関では、こうした時代と適合する取組を実施することは不可能だ。だが、必要とあれば躊躇なく助成金を提供し、企業と連携するといった柔軟な対応が、今後の日本の行政機関に最も求められるているのではないだろうか。

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