ローカルモーターズの今後の事業計画とは?
先週末ローカルモーターズがわずか6日間で3Dプリントカーを製造した事実が発表され、3Dプリンターが新たな製造マシーンとして注目を浴びている。
彼らは今回の3Dプリント電気自動車Strati’sの完成により、世界中に新たなメーカーとしてのカタチを示したが今後どのような展開を考えているのだろうか。ここでローカルモーターズの現状と今後の展望について海外メディアに語ったCEOの発言をもとにご紹介してみたい。
現在ローカルモーターズのサイト上には130ヵ国から約5千人近いエンジニアやデザイナーが参加している。基本的な彼らのビジネスモデルは、このオンライン上に集まる巨大なコミュニティをもとに、製品開発を進め、3Dプリンターで製造するという方法だ。
彼らのビジネスモデルの特長は2つある。一つは増え続ける膨大なコミュニティの力により、より多くのアイデアを製品開発に反映できること。投稿されたアイデアはコミュニティの投票により、最も優れたアイデアやデザインが採用される。また、このコミュニティの力は製品開発だけではなく、その製品改良にも力を発揮する。オープンソースの概念で改良するスピードが一般的な縦組織よりもはるかに早い。
特長の第二は、高速3Dプリンターによるローカル製造が可能だということだ。かれらはオンライン上のコミュニティで練り上げられたアイデアを具現化するための場所として、マイクロファクトリと呼ばれる工場を設けている。この工場は現在アメリカで3カ所設けられているが、オンラインコミュニティによって開発された新商品はこのマイクロファクトリで実際に製造されて顧客のもとに発送される仕組み。
この二つの特長、デジタルとローカル製造の仕組みを車輪の両輪のごとく機能させることで、顧客一人一人の要望に合った製品にカスタマイズし、物流コストをかけることなく迅速に提供することが可能だ。それではローカルモーターズは今後どのような事業展開をしていくのだろうか。
6日間で3Dプリント製造された電気自動車Strati’s
3Dプリンターのスピードを1000倍高速化
ローカルモーターズのCEOジェイ·ロジャース氏が海外メディアに語ったところによると、今後の事業展開はローカル製造の規模をますます拡大させ、3Dプリンターによるカスタマイズ製造を世界規模で行うものだということがわかる。
少なくとも先週の国際製造技術ショーでお披露目した3Dプリント電気自動車Strati’sは、1年以内にはローカルモーターズのサイト上で販売されることになる。
価格は18000ドルから34000ドル(約180万円から340万円)で、公開されたStrati’s以外に複数のモデルを同時販売する予定。実際、Strati’sを選考するに当たっては、デザイン案が207も投稿され、ほかにも斬新でかっこいいデザイン案が投稿されている。
この自動車の3Dプリント製造は、オークリッジ研究所とシンシナティ株式会社が開発する巨大高速3DプリンターBAAMにオートデスクと開発する専用OSスパークが搭載され、技術的には現状の1000倍まで製造スピードを上げることが可能だ。
この数値はCEOによると決して絵空事ではなく、早晩達成することができるとの見通しだ。この高速製造の拡大により作られる自動車のバリエーションもさらに増やす意気込みだ。
彼らのオンラインコミュニティ上ではさまざまなコンセプトカーのデザインコンテストが行われているが、こうしたデザインコンテストは将来BAAMがよりパワーアップし本格稼働したときの布石に他ならない。既に行われている電気自動車のカスタマイズ製造以外に7人乗りのバスなども嘘ではなく現実に製造する計画も出ているという。
そのため上記のような3Dプリンターの高速化は必須だが、対応する素材の幅を広げることも同時に取り組んでいる状況。Strati’sではカーボンファイバーを複合したプラスチック素材でプリントされたが、これ以外に50種類近い異なる素材も今すぐ使用できる状態にある。
他の3Dプリントカーの販売も計画
10年で全世界100カ所にマイクロファクトリを展開
また彼らが注力するのは3Dプリンターの高機能化だけではない。
オンラインコミュニティのアイデアをカタチにするためのマイクロファクトリの大幅拡大も計画中だ。現状存在するマイクロファクトリはアリゾナ州のフェニックス、ネバダ州ラスベガス、テネシー州ノックスビルの3カ所だがこれを、今後5年間で50カ所に増やすという。また今後10年で100カ所にし、全世界にマイクロファクトリをオープンさせるという野望を持っている。
近い将来では既にドイツのベルリンと、ワシントンDCのクリスタルシティにオープン予定。既に稼働している3つのマイクロファクトリでは、ここだけで完全な3Dプリントカーの生産ができてしまう状況にある。また、ローカルモーターズは自動車以外の3Dプリント製造も計画している。
既にオンラインショップでは家具やアクセサリといったその他プロダクトの3Dプリント製造を開始しているが、飛行機や人工衛星を将来的に着手する可能性があることを示唆している。現在GEと共同で設立したFirstBuildでは家電製品の開発を行なっているが、早晩自動車以外の開発に着手する計画だ。
アメリカは3Dプリンターによる製造業のアメリカへの回帰を打ち出しているが、ローカルモーターズはアメリカへの回帰だけではなく世界に打ち出す計画だ。仮に10年後に全世界でマイクロファクトリが設置されることになれば、オンライン上で自動車をカスタマイズし、最寄のマイクロファクトリで組み立てて購入することが現実化するかもしれない。
巨大高速3Dプリンターを配備したマイクロファクトリを世界展開する計画
マイクロファクトリでは3Dプリント製造から組み立てまで一貫して製造が可能
ローカルモーターズ動画
まとめ ローカルモーターズはアメリカの総力をあげた企業
ローカルモーターズの計画は、3Dプリンターとクラウドコミュニティによる完全なるローカル製造を確立することだ。アメリカはオバマ大統領が発表しているように3Dプリンターを軸にアメリカ本土への製造工場の回帰を果たそうとしているが、ローカルモーターズの動きはその先鞭をつけるものに違いない。
彼らの動きを見ている限り一企業単独で動いているわけではなく、そこには官民一体となったアメリカの底力がうかがえる。例えば、彼らの力の源である巨大3Dプリンターはアメリカの最先端技術の国立研究機関であるオークリッジ研究所が中心になり、製造機器メーカーとして老舗のシンシナティ株式会社が取り掛かっている。
そして、その巨大3Dプリンターの性能を向上させ、超高速化を果たすために、CADソフトで世界一のオートデスクが専用OSの開発を担っている状況にある。
また、ローカルモーターズのもう一つの強みである巨大なクラウドコミュニティは、3Dプリント技術で20年の歴史を持つGEと協力し、そこには3Dプリンターメーカーの雄ストラタシスも加わっている状況だ。
このように見てみると、個々の企業の動きは単なる一企業の動きではなく、すべての動きが連動し、アメリカ製造業の強化のために動いていることがわかる。まさにアメリカは企業、政府、研究機関、そして巨大なオンラインコミュニティが一体となり、自国の競争力を高めるために総力戦を行っている状況。
世界各国が自国経済を発展させる根幹技術として3Dプリンターに注力しているが、アメリカはますます先を行くだろう。このような競争スピードが速まる中、我々日本も負けてはいられない状況だ。
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