仮想世界の特殊車両のデザインコンテスト
自動車のオープンコミュニティ、ローカル・モーターズが新たな3Dデザインコンテストを開始した。今回行われるコンテストは、仮想世界での自動車のデザインを募集するというものだ。その設定がまた何ともリアルに細かく作られた世界だ。ストーリーが面白いので簡単にご紹介する。
オゾン層が破壊された2214年の世界
ときは西暦2214年4月7日、地球の人口は大幅に減少しており、資源も枯渇した荒廃した世界が舞台。空気は茶色く汚染され、長年のCO2排出によってオゾン層は破壊され、太陽からの放射線が降り注ぐ世界だ。
地球上の人類はこのまま地上に住み続けることができなくなってしまったため、ときの政府である世界統治連盟(WGF)は別の惑星に移住する計画を立て始める。
新たに発見された惑星「E176 」に移住するための輸送シャトルの建設が着々と進行する。しかしシャトルが完成するまでの間、強まる放射線と毒性汚染のため、人類は地下に一時的に避難する必要があった。
地下に避難するためにはROTUAVといわれるトンネルドリル車の設計開発が必要だ。人類が地上に住める期間はわずか14カ月から18ヶ月。
その間にトンネルドリル車であるROTUAVを完成させ地下に潜らなければならない。
2214の世界の動画
コンテスト参加者は、世界統治連盟から、地下に潜るためのトンネルドリル車ROTUAVの設計を提案する依頼を受けているという設定だ。
賞は2種類それぞれ1位から5位までの合計10名が選出されることになる。選出された応募者のROTUAVはストーリ上の艦隊に組み込まれることになる。何とも、SF映画の脚本張りに作りこまれた設定だ。
応募されているROTUAVのデザイン
画像出所:ローカルモーターズ
受賞者はヨーロッパ最大の自動車デザイン賞でプレゼンが
このコンテストはストーリーなどの背景の設定も作りこまれていて面白いが、一番は受賞者への特典が面白い。
基本的に応募者は二つの方法を選択することが可能だ。その方法とは、高度な3DソフトであるZbrushを使ってROTUAVをデザインし応募するという方法と、それ以外の2D、3Dのソフトを使って応募するという方法だ。
それぞれ1位から5位まで合計10名が受賞されることになる。
また、10名にはヨーロッパ最大の自動車デザイン賞と言われている2014オート®デザインチャレンジでプレゼンテーションが可能だ。ちなみにこのオーとデザインチャレンジで受賞されると世界42カ国、300以上のメディアに公開されることになる。
まさに自動車のデザインを行う人々にとっては充実した賞と言える。また、ZBrushを使う応募方法の方は、MakerBotの3Dプリンターで出力したモデルももらえることになる。下記が具体的な受賞の特典だ。
高性能3DソフトZbrush
3D ZBrushのチャレンジ賞
- 1位:賞金500ドル
- 2位:賞金400ドル
- 3位:賞金300ドル
- 4位:賞金200ドル
- 5位:賞金100ドル
- 各賞共通:デザインしたROTUAVをMakerBotで3Dプリントした模型、2014オート®デザインチャレンジでプレゼンテーションする権利、モデルがプリントされたAutoR Tシャツ2枚
2D/3Dチャレンジ賞
- 1位:賞金500ドル
- 2位:賞金400ドル
- 3位:賞金300ドル
- 4位:賞金200ドル
- 5位:賞金100ドル
- 各賞共通:3DソフトZBrushのライセンス、2014オート®デザインチャレンジでプレゼンテーションする権利、モデルがプリントされたAutoR Tシャツ2枚
その他の賞
- 風変りなデザイン:モデルがプリントされたAutoR Tシャツ2枚、描画する方法のコピー
- 最も実現可能なデザイン:モデルがプリントされたAutoR Tシャツ2枚、描画する方法のコピー
- オート(R)招待者が選定したデザイン:モデルがプリントされたAutoR Tシャツ2枚、描画する方法のコピー
まとめ –隠れた才能を世に送り出す仕組み-
ローカルモーターズには約3660名もの自動車製造にかかわる様々な人たちがいる。
デザイナーやエンジニア、自動車パーツの加工業者などだ。今までに421もの開発プロジェクトが行われてきたが、オープンコミュニティから様々なアイデアを募ることで、従来のスピードでは実現できなかったデザインや製造が可能になるのではないだろうか。
今回のコンテストも受賞者にはヨーロッパ最大の自動車デザイン会議へのプレゼンテーションの機会が与えられるなど、デザイン業界にはこれまで無かった取組だ。従来自動車のデザインは車体全体のデザインは一人の巨匠と言われるようなデザイナーが行い、個別のパーツをデザインする人はひたすらその部分のデザインしかできないようになっている。
例えばライトの部分をデザインする人はライトのみとか、バンパー担当の人はバンパーしかしないとか。確かに、一人の優れたブランドマネージャーがその自動車のブランドコンセプトを確立させるという方法は製品をブランディングするうえでは非常に大切なことになる。
しかし、ローカル・モーターズのようなオープンコミュニティでは、評価されるかしないかは別として、少なくとも自由に車体自体をデザインすることができる環境だ。
中には長年バンパーのデザインしかしていない人でも、本当は車体全体のデザインがしたい人だってたくさんいるはずだ。そういう点からするとローカル・モーターズのようなオープンコミュニティは隠れたデザイナーや、これまで権限を与えられなかった人々を世に送り出す門戸としての役割があるのではないかと考えられる。
これがIT技術のもたらす最たるものであれば、より優れた人材や隠れた才能を持つ人々がどんどん世の中に登場してくるだろう。
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