高速道路でも使用できる実用的な3Dプリント自動車のデザインが決定
先月の6月の頭にローカルモーターズが、実際に使用することができる3Dプリント自動車のデザインチャレンジを開始したが、ようやくその最終デザインが決定したようだ。
昨年6月にシカゴ国際製造展示会で発表された3Dプリント自動車Stratiは、あくまでもデモンストレーション用で、実際に商用化されたものではなかった。しかし、今回行われたデザインチャレンジで製造される3Dプリント自動車は、アメリカの連邦自動車安全基準と規制にも適合し、高速道路すらも走行可能とするものである。
わずか1ヶ月の間におよそ60以上ものデザイン案が投稿されたが、コミュニティと専門家の審査によって最終案が決定されることとなった。
今回採用されたデザイン案は2011年以降、ローカルモーターズのコミュニティのメンバーとなり、21ものチャレンジに参加しているケビン・ロー氏のデザインが採用された。これにより、ケビン・ロー氏のデザイン案はローカルモーターズから賞金を受け取るだけではなく、同時に、世界初となる完全に3Dプリントされた自動車の名誉ある第一号となる資格を与えられることとなる。
本日は世界で初となる可能性のある3Dプリント自動車のご紹介と、3Dプリンターで製造する意義、ダイレクト・デジタル・マニュファクチャリング(DDM)の真髄をご紹介しよう。
ボディタイプを2種類に選択可能。ユーザーもカスタムできる3Dプリント自動車
今回1位に選出された3Dプリント実用車のデザイン案は、3Dプリンターの真の力、すなわちダイレクト・デジタル・マニュファクチャリング(DDM)の力が十分に発揮されるデザイン案だといえよう。
3Dプリンターの最大の特長は1個単位でデジタルデータからダイレクトに物体を製造することができる機能性だが、このケビン・ロー氏が開発したデザイン案は、自動車の機関となる一つのボディフレームをベースに、外側のボディパネルのパーツを3Dプリンターで変更することできるというもの。
このSwimとSportのベースは上記で述べたとおり、同じ機関部をもつことになるが、自動車としてのタイプも2種類製造を予定している。また、このデザインの更に一歩進んでいる点は、実際にユーザーが購入する際には、SwimとSportという2種類を選択するだけではなく、選択したボディパネルを簡単に再設計することが可能になるというものだ。
高速道路対応モデルと、低速電気自動車モデルの2種類で発売予定
今回のデザインチャレンジの目玉であるアメリカ国内の法律に準拠した高速道路対応自動車と、低速電気自動車(LSEV)の2種類だ。発売時期も自動車の種類によって時期を分けており、LSEVは今年の11月からで、高速道路対応モデルのほうは2016年を目処にしているとのこと。
実際のデザインとボディパーツの最終状態は今年の9月が完成予定で、LSEVは、新たに11月にオープン予定のテネシー州ノックスヴィルのマイクロファクトリで製造が行われる予定だ。価格は未定だが、おそらく低速電気自動車LSEVモデルが18,000ドル(220万円)で、高速道路対応モデルが30,000ドル(366万円)の予定。いよいよ本格的な3Dプリント自動車が登場することになりそうだ。
3大学機関に3Dプリント自動車を開放、提携による独自開発を加速
ローカルモーターズの3Dプリント自動車開発は、この実用的な車両開発に留まるものではない。デジタルにベースを置く3Dプリンターの力を更に引き出す取り組みも開始している。それが、外部機関との連携だ。一般的な外部機関との連携であれば、どの企業も行っているが、ローカルモーターズの場合は、新たに提携をした機関に対し、自らの3Dプリント自動車を提供、それをベースにその機関独自の新素材開発や新製法開発を促している。
今回ローカルモーターズと提携を行い、車両開発プログラムに参加したのはミシガン大学、アリゾナ州立大学、ネバダ大学の3つの大学機関。例えばこのローカルモーターズの3Dプリント自動車をベースにミシガン大学は、学生がキャンパスに通勤するための自律走行車の開発に注力しており、ネバダ大学では、新たな先端素材と3Dプリント技術の開発に注力し始めている。
こうした製品開発の発想は、明らかにデジタルにベースを置くオープンソースの発想であり、オンラインコミュニティによる発想がそのまま実際の企業や組織との連携に結びついているようなものだといえよう。
ローカルモーターズ動画
まとめ オープンの製品開発が3Dプリンターの真の力を発揮する
ローカルモーターズが従来の一般的なメーカーと、決定的に異なる点は、製品開発の方法論や概念が全く異なるという点に集約されるだろう。上記の大学機関との提携やオンラインコミュニティによる製品開発は、これまでの一部の人間が製品開発を行うメーカーからは絶対に出てこない発想である。
従来のメーカーと言われる存在は、社内に製品企画部や開発部という部署があり、その部署がマーケティングや製品企画、試作開発まで行うという形態、方法が常態だ。そのため、その製品の開発に関して意思決定を行い、将来の市場性や、時代に適合させるといった、人の価値を計るという行為(ビジネスにおいて最も必要とされる行為)も、一部の限られた人間が行うことになる。
どんなに社員数が多い大企業でも、製品を生み出すという行為は、ほんの限られた人数が行うのが当たり前というわけだ(ちなみにこの従来型の製品開発の方法が悪いと言っているわけではない。優れた人間が集まれば、コミュニティ型が作り出すものとは違う、強力な、時代を変える製品を開発することもできる)。
しかし、ローカルモーターズはこの製品企画、開発と言われる部分を、完全にコミュニティの力を利用して行っている。さらにはオンラインの枠を飛び越え、リアルな現実世界でもその動きを加速している。上記の大学機関との提携や、GEやストラタシスと進めるFirstBuildもいい例だろう。
この新たなコミュニティが行うオープンな製品開発の最大のメリットは、優れたアイデアやデザインを集めやすいだけではなく、高速でそれをカタチにすることができるという点だ。それこそが3Dプリンターとデジタルによるダイレクト・デジタル・マニュファクチャリングの真髄であり、3Dプリンターを本当に有効活用するのであれば、このオープンな製品開発のマインドと機能する「仕組み」がなければ真の革新を起こすことはできないだろう。
そうした点からローカルモーターズの動きを知ることは、大いに参考になると言えるだろう。
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