3Dプリンターと相性がいいカスタムメイドの治具製造
治具という言葉をご存知だろうか。おそらく製造業に携わっている人ならば馴染みのある言葉だ。もともとは、加工や組立を行う際に、部品や工具の作業をスムーズに行うために、指示するための器具として捉えられてきた。
しかし大量生産を経てきた現代の製造業では、もはやより広い意味で「ある製品を効率よく生産するための専用の道具」としての役割が定着しつつある。
もともとは英語の”jig”に(ジグ)がそのまま使用され治具となった言葉で英語のjigの意味は「工具の位置合わせ」という意味があるが、どのように使用されるのだろうか。基本的には、作る製品ごとによってそのカタチや用途は変わってくる。
その製品を作る製法ごとに専用に設計され、樹脂や金属の加工業者に作ってもらうというのが一般的な流れだ。そのため作る数量や種類はさまざまで、その製品の製造規模によるが専用設計の1点物が多い。
まさにカスタムメイドで単品生産のものだといえる。こうした治具は高いカスタマイズ性とオンデマンド生産を可能にする3Dプリンターに最適な分野だ。
多品種少量生産が中心の日本の中小製造業に最適
例えば従来の治具の製造手順だと、治具の設計→加工業者に製作を依頼→治具の納品という流れで、使用できるまで短くても1週間はかかることになる。
これが3Dプリンターで生産することができれば、そのリードタイムはかかって1日、早ければ当日中にその治具を作って使用することが可能だ。
このリードタイムの削減のメリットは下請けが中心を占める多くの中小企業にとっては非常に大きく、リードタイムが短い分生産を早く進められることが可能で、顧客の要求期日までに余裕が持てるというわけだ。
また、加工業者に外注する分よりも3Dプリンターで生産したほうが遥かにコストカットに繋がる。一般的に治具の生産は大量生産をする場合には製造体制を最適化することから多くのメリットがあるが、多品種少量生産の場合には多数の治具が必要になり、治具自体の生産にコストがかかってしまい、利益を圧迫するという問題が存在する。
こうしたことからも多品種少量生産が中心の日本の中小製造業には最適なのではないだろうか。
治具は製造物に応じたさまざまな用途で使用される
自動車メーカーオペルは治具の3Dプリントで90%コスト削減
上記で述べたような治具生産は海外企業では既に一部開始されているようだ。例えばドイツの自動車メーカーオペルはサイドウィンドウの車名ロゴを生産するために組立治具を使用している。
下記の図はその組立治具の3D画像で、合計で40もの治具をくみあわせることで、ロゴの生産を最適化している。この治具セットはこれまで樹脂による伝統的な加工方法をとっていたが、3Dプリンターで作ることにより最大90%のコストカットと、70%の重量削減に成功した。
オペルの製造に使用される組立治具の3D画像
樹脂の3Dプリントで治具を製造
オペルはこの取り組みによって、大きなメリットを得ていると発表している。例えば車両の部分的なマイナーチェンジや、ちょっとした変更があった場合でも、3Dデータを数クリックするだけで、それ専用の治具を簡単につくることができるためだ。
これは商品の自由な発想と変化を可能にすることにもつながっているという。これまでの伝統的な治具製法、金型や切削では、ちょっとした変化でも発生する治具のコストを考慮してしまい、さまざまな取り組みができなかったとしている。
しかし3Dプリンターであれば、1個単位からコストもほぼかけることなく製造することができるため、自由に改良のアイデアを試すことができるというわけだ。
まとめ
治具は製造業にとって最もわかりやすい3Dプリンターの利用方法だ。企業によって異なるだろうが治具は製造現場で日常的に使用される最も用途が多い用具であり、尚且つ1個1個製品によってカスタムメイドになることから3Dプリンターとの相性が最もいいといえる。使用方法によっては金型の製造や、試作品の製造よりも大きな効力を発揮するかもしれない。
とりわけ海外の製造業に対して、多品種少量生産で競争力を打ち出している日本の中小製造業にとって、3Dプリンターは競争力を強化し、製造現場で大きな役割を果たしてくれる技術だ。
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