インテルと共同開発。低価格なFDM3Dプリンターを変えるMostfun Pro

廉価版FDM3Dプリンターの課題を解決する中国のスタートアップ

フィラメント状の樹脂を熱で溶かし積層し固める3Dプリンターの代表的製法、FDM熱溶解積層法。ストラタシスが開発したこの製法は、特許切れによって数多くのデスクトップモデルを生み出している。その特長は3Dプリンター用のABSフィラメントPLAフィラメントをベースに、さまざまなプラスチック素材を使用できる点だ。

しかし、ハイエンドなFDM3Dプリンターであれば、高度な造形が可能になるが、多くの廉価版では、今ひとつ精度や品質が安定しないのが現状と言えるだろう。

例えばFDMはノズルから溶かしたフィラメントを抽出して積層していくが、部屋の温度や湿度、物体のデータなどによって影響を受ける。また、基本的な部分だが、機械を置く場所なども注意が必要だ。完全に平面な部分に機械を設置しなければ、斜めなどになっている場合には造形物が歪んだり、正しい形状でプリントすることは難しい。

こうした廉価版のFDM3Dプリンターは機械としての安定性、完成品のクオリティ、この二つの部分で改善の余地が多く残されていると言っていいだろう。そのような中、中国のベンチャー企業mostfunがインテルのモジュールを使用し、驚く程ユーザーエクスペリエンスが高められたFDM3Dプリンターを発表している。

それは従来の廉価版の不安定性を解決し、誰もが手軽に使用できるという画期的な改良をもたらしている。本日はインテルエジソンモジュールを使った画期的なFDM3DプリンターMostfun Proをご紹介しよう。

インテルと共同モジュール開発で徹底したユーザーエクスペリエンスを実現

今回ご紹介するMostfun Proを開発するmostfunは、中国の成都に構えるスタートアップ。成都テクノロジー&エンジニアリング大学の大学院を卒業した若手エンジニアたちによって立ち上げられた。このMostfun Proは現在キックスターターで資金調達を行っているが、インテルのプロセッサーに依存する初の3Dプリンターと言えるだろう。

使用されたのはインテルエジソンモジュールという小型のモジュールだが、このプロセッサーと独自開発の押出ノズルにより、従来廉価版のFDM3Dプリンターが持っていた多くの課題を解決している。また、価格も1台あたり、573ドルからというリーズナブルな値段で、使い勝手といい価格といい、徹底したユーザーエクスペリエンスのこだわりが見て取れる。

それでは一体、インテルエンジンモジュールの搭載によってどのような点が他の廉価版と異なるのだろうか。

インテルエジソンモジュール

Mostfun Pro動画

オートレベリング機能でトレイの傾斜もそのままプリント可能

このMostfun Proの最大の特長の一つが、このオートレベリング機能と言われる部分だ。これはトレイの傾きを自動で測定し、傾きに合わせて造形してくれるという調整機能とも言えるもの。FDM3Dプリンターはご存知のとおり、トレイに溶かしたフィラメントを抽出し積層して造形するが、土台となるトレイが斜めに傾斜していれば正確に造形することはできなくなる。

しかし、このMostfun Proはオートレベリング機能によって自動的にトレイの傾斜角を測定し、印刷中にそれを補償することが可能になる。

トレイが斜めでも自動調整

緊急保護と一時停止によって自由な中断、フィラメント変更が可能

Mostfun Proは、インテルエジソンモジュールの搭載によって、従来の廉価版がもつ機械としての不安定性を徹底して取り除いている。例えば、緊急保護と一時停止などもその最たる例だ。緊急保護とは、電源が予期することなく切断された場合に、現在造形中のプロセスをそのままの状態で保存する仕組みだ。

ブレーカーが落ちたり、何らかの原因で電源が落とされた場合に、プリンターがシャットダウンする前に保存してくれて、Mostfun Pro本体の内蔵電源で再開することが可能となる。その場合はプリンター本体の背面にある電源スイッチを押し、起動させれば再開が可能。

この緊急保護と一時停止の機能は、それ以外に、造形モデルの取り替えなどの方法も可能にしてくれる。例えばある長時間のプリントがかかるモデルを造形している最中にこの機能を使えば、一時的にモデルを途中の状態で取り外し、その他の短時間のモデルを構築することも可能だ。さらにはフィラメントを交換し、まったく異なる色のフィラメントに変更もできる。

途中で中断しても安心の機能。一時停止と再開が自由

ドライバ不要でWifiで手軽に使用できる

Mostfun Proのもう一つの特長は、わざわざパソコンにドライバをインストールする必要がない。パソコン、タブレット、スマートフォンなどあらゆる端末に対応しており、機械を設置後すぐさま使用することができる。この3Dプリンターは、共有デバイスとしてネットワークに参加することができ、印刷の終了やフィラメント材料の不足などをE-mailで通知してくれる。

さらに迅速に専用アプリケーションにアクセスするために、プリンターのパネルに表示されるQRコードをスマートフォンでスキャンすれば、即座に専用アプリにアクセス可能だ。

ドライバーインストール不要

品質、対応素材の多さ、大きさ、重量全てにおいて使いやすい

このMostfun Proは、インテルエジソンモジュールと、独自押出ノズルの開発によって、これまで課題とされてきた廉価版のFDM3Dプリンターを飛躍的に使いやすくすることに成功した。またこうしたユーザーエクスペリエンスの向上だけではなく、造形精度も50ミクロンまで対応が可能となっている。

さらに使用できる素材は従来からのABS樹脂、PLA樹脂に留まらず、TPU、WAX、HIPS、ナイロンなども使用可能。高度な安定性を保ちながら、様々な素材を使い勝手よく使用できる。また、プリンターの素材もアルミボディでサイズも約30センチ四方とコンパクトサイズ。重量も8キロほどであり持ち運びも容易だ。

軽量、コンパクト
仕上がりもきれい

Mostfun Proスペック

まとめ 低価格FDM3Dプリンターの性能向上が期待される

いくら特許が切れて爆発的に3Dプリンターが登場してきたとは言え、本当に売れる製品、ユーザーから求められる製品はごく一部なのだろう。それは徹底したエンドユーザーのための製品開発がされていなければならない。そうした点から言うと、この中国のスタートアップが開発したMostfun Proは、新たに3Dプリンターを使い始めようとする不慣れな初心者でも安心して使用することができるモデルだといえよう。

現在樹脂素材を使うことができる低価格な3DプリンターはFDMと、液体のエポキシ樹脂アクリル樹脂ポリウレタンなどをベースにした紫外線硬化性樹脂に紫外線を照射し硬化させる光造形と2種類登場しているが、FDMの機械としての安定性と、造形性能のクオリティの上昇は、従来からもつFDMのよさでもある、素材のバリエーションと相まって、今後の主流になるかもしれない。これからの開発状況がますます気になるところだ。

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