「ものづくりのイノベーター」を生み出す職業能力開発総合大学校

「ものづくりのイノベーター」を生み出す大学校

職業能力開発総合大学校は厚生労働省所管の省庁大学校で、日本のものづくりを支える人材を育成する大学校だ。一言で「ものづくり」といってもその範囲は非常に幅広い。

製品企画から開発、加工、生産など幅広い分野を含む。そこでは各専攻20名程度といった少人数のものづくりスペシャリストの実践教育が行われており、学校内にものづくり現場を作り出し、即戦力となる技術者を育成している。

例えば総合課程においては、単なる製品開発だけではなく、実践的な製造技術、更には生産プロセス全体を管理できる「ものづくりイノベーター」を生み出すことを目的としている。

機械専攻コースは未来の技術を創造する人材を育成する

中でも今回ご紹介する機械専攻では、材料や機械などの基礎的な知識から、設計、加工、計測、生産システムに至るまで、製品を生み出す一連のプロセスを学ぶことができる。

このコースを卒業した学生たちは、自動車や家電、ロボット、航空機といったメーカーから、工作機械や金型など、日本の製造業の中核を担う業界へ進んでいる。

なぜこれほど実践的なものづくり教育が可能なのだろうか。それは、まさにリアルな製造現場そのものの環境で学ぶことができるカリキュラムや設備があるからだ。

職業能力開発総合大学校

自動化やIoTなどこれからのものづくりを担う人材を育成している。

本物の製造現場で“ものづくり”の基礎から実践を学ぶ

一般的に大学での勉強というと講義スタイルをイメージしやすい。もちろん職業能力開発総合大学校では講義形式での授業も存在する。

しかし、その授業の多くは演習や実験、実習といったより実践的な技術力を習得するカリキュラムに費やされる。中でも特徴的なのが、メーカーの製造現場や加工現場そのままの環境を使い、実際のものづくりを通して技術の習得ができることである。

3つのカリキュラム。ものを作る加工から生産プロセス全体まで学ぶ

機械専攻のカリキュラムは大きく分けると3つの実習に分けることができる。

それが機械工作実習と精密加工実習、メカトロニクス実習だ。このカリキュラムの最大の特徴は、この3つの実習をとおして、“モノ”を形にする基本的な技術から、より精密で複雑な加工技術、更にはセンサーやモーター、プログラミングなどを組み合わせた“生産プロセス”まで学ぶことができる点にある。

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ものづくりの基本から応用まで学ぶ

機械工作実習。手仕上げから旋盤、フライス盤、溶接まで基本を学ぶ

3つのカリキュラムの基本となる部分が機械工作実習だ。

この実習では、ものづくりの基本である加工技術を学ぶことになる。ものづくりの一番の基本は手による加工だが、ここでは手仕上げから、材料に力を加えて変形させる塑性加工、溶接などを学ぶことができる。

塑性加工では、プレス機を使ったプレス加工や、フライス盤や旋盤などの切削加工など、幅広い加工方法を実際の工作機器を使用して習得する。

溶接なども一人1ブースの溶接設備が利用可能で、多様な加工技術を学び身につけることができる。

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基本の手作業から学ぶ

精密加工実習。金型や精密機器を図面から作り公差や精度を学ぶ

機械加工実習で基本を学んだあとは、より複雑な加工や組立を学ぶことになる。それが精密加工実習だ。

ここでは、機器の取り扱いだけではなく、本物の金型や精密機器を作ることで、仕様や図面の作り方、そして公差や精度といった、ものづくりに影響を与える“品質”の部分も学ぶことになる。

この実習では、より複雑で正確なものづくりが身につくとともに、自主的により良いものを生み出す力がつくようになる。

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精密な機械加工を実習で学ぶ

メカトロニクス実習。“自動化”と“IoT”の入口まで学ぶ

精密機械実習の発展となるカリキュラムがメカトロニクス実習だ。

センシング技術やモーターなどを使い、メカトロニクスの設計と製作を行う。ここでは精密機械実習で培った技術を使い、複雑さと正確さが求められるメカトロニクスのパーツや筐体などを作り出す。

また同時に、プログラミングや配線を駆使して機械を正確に動かす技術も学ぶ。

ちなみにメカトロニクスとは、機械工学、電気工学、電子工学、情報工学の融合のことで、これからの時代のキーテクノロジーである“自動化”や“IoT”の入口ともなる技術だ。

下記は、実習で学生たちが作り出したメカトロニクス製品だが、製品の大きさによって自動で振り分けるシステムを備えた機械だ。

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メカトロニクスで作られた機械。

マシニングセンタからレーザー加工機、射出成形機までそろう

こうした「ものづくりのイノベーター」を輩出するカリキュラムをより充実させるのが、本物の製造設備だ。職業能力開発総合大学校には、実際の製造現場や工場そのものの設備がそろう。

ここではあらゆる加工機や製造設備が整っており、学生たちは、こうした設備を使いこなすことで、実践的で最先端なものづくりの技術を習得することができる。

上記であげた溶接ブースやプレス加工機に加え、NC旋盤やマシニングセンタなどの切削加工機、更にはレーザービームで溶接するレーザー加工機や、金型量産を行うための射出成型機まで配備されている。その環境はまさに工場そのものだと言えよう。

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溶接ブース。一人1ブースで学ぶことができる。

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マシニングセンタで精密加工もできる。

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さまざまな金属加工に対応している。

製造現場に必須の「5S」も学ぶ

職業能力開発総合大学校のカリキュラムの特徴の一つが、ものづくりの在り方も学ぶ教育内容だ。上記でご紹介したようなさまざまな製造機械を実習を通して使うが、ものづくりの精度を保つために必須の「5S」の概念もしっかりと学ぶ。

「5S」とは、整理、整頓、清掃、清潔、躾の5つの頭文字をとった概念で、製造現場を常に清潔に保ち、より高品質で不良が無いものづくりを目指すというもの。

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実習を通してものづくりに必須の5Sを習得するツール

この概念はものづくりを行ううえで基本であるとともに最も重要な概念で、故障がない品質を保つとともに使う人達の安全性にも関わる部分だ。

例えば、エレクトロニクス製品などの不良を防ぐのもこの「5S」であり、日本製品の優れた品質の根本を支える概念だ。

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日本のものづくりを支える高い品質も学ぶ

3Dプリンターも配備。プロトタイプ開発や製品設計のデジタル化も

職業能力開発総合大学校では、従来からある切削加工や金型だけではなく、デジタルものづくりの核となる3Dプリンターも配備し、プロトタイプ開発や製品設計での利用も始まっている。

既にカリキュラムや実習の過程では、3DCAD設計などを使っていることから、3Dプリンターでの利用も登場している。

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3Dプリンターも開発に使用されている。

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まとめ。基本から最先端の自動化、デジタル化まで学ぶ

職業能力開発総合大学校の機械専攻では、工場さながらの多様な製造設備を通して、ものづくりの基本から実践、更には最先端の技術まで身につけるカリキュラムを提供している。

そこには、基本的な加工技術だけではなく、「5S」といったより良いものづくりを行うための概念、更には、未来のものづくりに求められるファクトリーオートメーションに関わる技術の習得までが含まれている。

例えば、メカトロニクス実習では、自動化やIoTに関する一連の技術を、実習を通して学ぶことができる。また、3Dプリンターの利用は、製品開発の効率化や幅の拡大を学ぶことにつながっている。

こうした一連のカリキュラムは、まさに「ものづくりのイノベーター」を生み出す取組だと言えよう。

30年で拡大したデジタル製造の集大成。ストラタシスブースレポート

ハイエンドモデルが主流。導入事例が拡大するストラタシス

今回で第29回目の開催となる設計製造ソリューション展。今年も数々の3Dプリンターメーカーが登場しているが、近年の市場の傾向としてハイエンドタイプの進化と拡大が顕著だ。

特にその技術的進歩によって、試作レベルから機能性プロトタイプや生産の分野まで拡大しつつある。中でも今回ご紹介するストラタシスのブースでは、数々の3Dプリンターを使った事例が登場している。

創業から30周年を迎えるストラタシスだが、今や単なる3Dプリンターメーカーとしてではなく、ソフトやコミュニティ、パーツサービスなど包括的な3Dプリンティングソリューションカンパニーに成長している。

今回は、 未来のデジタル製造を感じさせてくれるストラタシスの展示をご紹介しよう。

ストラタシス

FDM開発から30年。その集大成ともいえる展示

ストラタシスは今年で創業から30周年を迎える。現在、数多くのデスクトップタイプの3Dプリンターの元ともなる熱溶解積層法(FDM)が、ストラタシスの創業者 、現会長スコット・クランプによって開発されたのが1988年。

以来、プロトタイプを作るためのデスクトップタイプから、生産レベルまで使用できるハイエンドモデルまでラインナップを広げている。

更に2011年にはインクジェット製法であるPolyJet 3DプリンターのメーカーObjet社と一つになることで、FDMとPolyJet二つのラインナップを武器にデジタル製造の分野でトップを走る存在となっている。今回のストラタシスの展示は、まさに30周年の集大成ともいえる展示が行われた。

ストラタシスの二大ラインナップの進化

ここでストラタシスの二つのラインナップ、熱溶解積層法(FDM)とインクジェットタイプであるPolyJetについて簡単にご紹介しよう。

FDM 熱溶解積層法

まず初めに熱溶解積層法(FDM)は、3Dプリントの代表ともいえる技術で、金型で使用される本物の熱可塑性樹脂と同じ材料を扱えるのが特長だ。

熱可塑性樹脂とは、現在世の中に存在するあらゆる製品に使用されているプラスチック材料で、これまで金型での利用が中心であったがストラタシスのFDMテクノロジーの進化によって、3Dプリンターでの利用も登場しつつある。

PolyJet インクジェットタイプ

一方、インクジェットタイプのPolyJetテクノロジーとは、液体状の紫外線硬化性樹脂を使い造形するタイプのものもの。その特長は、ハイエンドタイプでは高精彩で滑らかな質感をもち、あらゆる表現が可能になる点にある。

最大50万色のフルカラー表現に加え、場所によって物質の特性、硬さや軟らかさを変えることも自在にできる。更には他の製法ではまねできない、3Dプリンター樹脂型、デジタルモールド®も作ることが可能だ。

そして今回の展示ではこうした二つのラインナップが驚くべき進化を遂げている。

進化する熱溶解積層法(FDM)。最終品パーツから治具、エンボス加工まで実現

今回登場したストラタシスブースでは、熱溶解積層法(FDM)の多彩な事例が登場している。一般的に他社の安価な熱溶解積層法(FDM)3Dプリンターでは、プロトタイプなどが中心となるが、ストラタシスでは最終品から治具、まで幅広い用途に対応している。

炭素繊維配合ナイロン12に特化。Fortus 380 CF

ストラタシスの熱溶解積層法(FDM)3Dプリンターで新たに登場した機種がFortus 380 CFだ。ストラタシスの熱溶解積層法(FDM)の一つの特長が多彩な熱可塑性樹脂を使用できる点にあるが、Fortus 380 CFは炭素繊維配合のナイロン材料に特化している。

ナイロン12は最高レベルの靭性を持つ材料として知られ、そこに軽くて強度を持つカーボンファイバーを35%の割合で配合することで、エンジニアリングレベルのパーツ製造を可能にしている。

近年、自動車や航空機など、金属の代替パーツとして、軽量高強度なエンジニアリングプラスチックが注目されているが、炭素繊維配合のナイロン12はまさに軽量・高機能なパーツ製造に最適といえる素材だ。

また、Fortus 380 CFは、あえてこの材料の造形に機能を特化することで、他のFDMよりもより手頃な価格で高機能パーツの3Dプリントを利用することが出来る。

ストラタシス Fortus 380 CF

カーボンファイバー配合ナイロンで、軽量強化パーツの造形ができる。

シボやエンボスなど微細な造形に進化するFDM

今回のストラタシスの熱溶解積層法(FDM)3Dプリンターの展示でもう一つ注目すべき点が、FDMの造形精度の向上だ。これまで熱溶解積層法(FDM)は、インクジェットなどとくらべ、積層跡が目立つなどの表面の滑らかさの点で、課題が残ると言われていたが、その表面の造形精度も驚くほど向上してきている。

例えば、従来は金型などでしか表現することが出来なかったシボやエンボスといった表面加工も、FDM 3Dプリンターで実現することができる。熱溶解積層法(FDM)の造形レベルも微細さや滑らかさが向上すれば、より最終品製造のバリエーションも拡大することが期待できる。

ストラタシス FDM 3Dプリンタ

進化するFDMの造形レベル。表面の表現力も微細な造形が可能に

治具の事例。作業を1時間から10分に短縮し生産性を大幅に向上

ストラタシスの熱溶解積層法(FDM)では、治具の生産も利用が加速している。治具とは、生産工程の中で、組立や塗装、検品など、作業者が作業を行う際に、パーツを固定するためのツールだが、この治具には高いカスタマイズ性が求められる。

ストラタシス 治具

従来の金属からAMによる樹脂化、さらにスパース構造による軽量化を行い、作業の効率化と負担軽減を実現。

作業の対象となるパーツや製品にあった最適な形状が必要だからだ。今回の展示ではさまざまな用途で使用される治具が登場している。例えば、フォークリフトのメーカーとして有名な豊田織機では、機体の塗装作業のための治具をストラタシスのFortus 900 mc で作ることで生産効率を大幅に向上させている。

従来は、罫書きといわれる手法(マグネットや糸などによって塗装ラインを手作業で決める作業)で行っていたが、この治具の開発によって作業時間は1時間から10分まで短縮することが可能となっている。また、この治具の開発にあったっては、トポロジー最適化によって最適な形を解析し、強度を保ったまま中空にすることで、 コストとリードタイム、作業者の負担軽減といった、さまざまなメリットをもたらしている。更に、Fortus 900mcで大型の治具を一括造形できる点も大きなメリットである。こうした造形ができるのもハイエンドなストラタシスの熱溶解積層法(FDM)ならではと言える。

ストラタシス 治具

豊田自動織機が開発した治具。最終的にはトポロジー最適化で超軽量化を実現。

ASA樹脂。自動車のバンパーを3Dプリント

ストラタシスの熱溶解積層法(FDM)の多彩な材料の一つがASA樹脂だ。ASA樹脂は強度と耐久性に優れるABS樹脂の耐候性を強化した樹脂だ。このASA樹脂は耐候性を強化することで、紫外線などの外的環境からも強く、性能や見た目の変化が少ない材料であり、同時にABS樹脂の持つ耐久性を併せ持つ材料である。

長時間、外の環境で使用されることを想定したパーツ製造に最適ともいえる材料で、まさに自動車用パーツなどに最適である。

ストラタシス ASA樹脂

ASA樹脂で作られた自動車のバンパー。耐候性と耐久性を併せ持ち、機能テストもできる。

デジタルモールドが進化。多彩な用途で使用が拡大

今回の展示のもう一つの目玉がPolyJet 3Dプリンターで作られるデジタルモールドの展示だ。デジタルモールドは、たびたびご紹介しているPolyJet 3DプリンターとデジタルABSで作り出される3Dプリント樹脂型だが、その用途は驚くほど拡大してきている。

薄さ0.3mmのプレス加工に対応。進化するデジタルモールドプレス

デジタルモールドは射出成形用の金型として開始されたが、金属加工のプレス加工でもその用途を拡大している。以前、「金属プレス加工が進化。デジタルモールド・プレスの力」という記事で、金属加工の分野にまで進出するデジタルモールドをご紹介したが、その後進化を遂げ、なんと薄さ0.3mmのプレス加工にも対応しつつある。

一般的にプレス加工は、金属の金型で金属をプレスし形を作り成形していくが、そのさいの課題として、金属の塑性によって、キズが付く可能性がある。そのため金属プレス加工では、プレスする金属の種類に合わせて金型を調整しなければならない。

デジタルモールドプレス

しかしデジタルモールドプレスであれば、型そのものがデジタルABSという強靭な樹脂で作られているため、プレスの圧力が加わっても強金属ぞれぞれの塑性に合わせて金型の方が調整しキズをつけずに造形してくれる。

デジタルモールドプレス

右側のデジタルモールドでの曲げではショックラインと呼ばれるキズが発生しない。また、目では確認しづらいが、板厚やサイドの寸法変化など、成形後に差が出ている。

これによって作り出された成形品はわずか0.3mmのアルミでも実現可能となった。

下記は、2019年春運行開始予定の西日本旅客鉄道の観光列車「THE RAIL KITCHEN CHIKUGO」のティンパネルのテストモデルだ 。最終的に搭載されるティンパネルはデザインや材質は異なるが、デジタルモールドによるプレス成形のメリットを伝えるために制作したモデルだ。

デジタルモールドプレス

0.3mmの薄い板厚で、曲線や隣接する直線の絞り形状の再現など、金属金型では再現が難しいような設計も、デジタルモールドであればワンショットで成形することができる。

複雑で薄肉も可能。医療の手術用モデルにも進出

デジタルモ ールドは更に、通常の射出成形の分野でも進化を遂げている。今回も有限会社スワニーの橋爪氏が実演を行ったが、難易度の高い薄肉で複雑なデザインの射出成形にも対応している。

デジタルモールド

デジタルモールドを手掛けるスワニーの橋爪氏。

更に、デジタルモールドは、以外な分野でも革新的な利用方法が開始されている。それが医療用の手術用モデルだ。現在、手術のシミュレーションはVRなどデジタルで行われているが、このデジタルモールドを使った手術用モデルを使用すれば実際のリアルなオペを体験することが出来る。

デジタルモールド

伊那食品工業の独自ノウハウを活かした、新たに開発されたデジタルモールド専用材料。

これはデジタルモールドを手掛ける有限会社スワニーと、「かんてんぱぱ」ブランドを展開する伊那食品工業株式会社が共同で手掛け、ストラタシスも技術支援を行ったもの。

デジタルモールドに伊那食品工業が開発した独自素材を流しこみ、内部にストラタシスのPolyJet 3Dプリンターで造形した血管モデルなどを入れ、臓器モデルを忠実に再現することが出来る。この材料はこのアプリケーションのために開発された専用材料だ。

この手術モデルを使えば、シミュレーションとは違ったリアルな手術の訓練が可能となるものだ。今回は技術展示であり、実際のビジネス化は今後の発表で行われるようだ。

このほか多彩な表現力を持つPolyJet 3Dプリンターの用途として、金型のモールドベースや、ストラタシスJ750の表現を変えるVivid Colorで作られたAudiによるテールランプなども 登場している。

ストラタシス J750

Vivid Color で造形したテールライトカバー。ハウジングはVeroBlackで造形しメッキを施している。

まとめ 金属用3Dプリンターの造形モデルも登場

ストラタシスは現在、熱溶解積層法(FDM)とインクジェットのPolyJet、二つのテクノロジーによる3Dプリンターを提供しているが、その分野のリーディングカンパニーだけあって、その導入事例や用途は、多彩で他社にはないデジタル製造の広がりを見せている。

また、今回は、詳細は公開されなかったが新たに開発を進める金属用3Dプリンターの造形モデルも展示された。金属3Dプリンターは、航空機や自動車などのパーツ製造で注目が集まる分野だ。

ストラタシス 金属3Dプリンター

ついに登場した金属3Dプリンターの造形モデル

またその製法もレーザー燒結法であるSLSやDMLSをはじめ、レーザー溶融法であるSLM、電子ビーム溶解法など、多彩なアプローチの金属造形が登場している。ストラタシスが開発する金属3Dプリンターの概要やテクノローの詳細はいまだ明かされていないが、アルミで作られた造形モデルからは、その高い精度がうかがえる。

ストラタシス 金属3Dプリンター

今後の発表に期待が集まりそうだ。

ワークラボ八ヶ岳がオープン。スワニーの新製品を生み出すエコシステム

価値創造経済を生み出すワークラボ八ヶ岳

人口減少が経済成長に与えるインパクトはさまざまだ。GDPの減少はいう間でもなく、経済のカタチも違ったものが求められる。

特に人が少なくモノが余った現代では、大量生産大量消費を想定したビジネスではなく、小規模でも新たな価値を生みだし、人々の生活を豊かにするモノやサービスが求められている。言うなればイノベーション主導の価値創造経済といってもいいだろう。

そんな価値創造経済の育成には、アイデアを形にし、イノベーションを起こす“場”が必要だ。

また、スタートアップやベンチャー企業を支援し育てるエコシステムが求められる。今回は、そんな新たな成長を生み出す核となるワークラボ八ヶ岳で、有限会社スワニーが仕掛ける新たなモノづくりの動きをご紹介しよう。

八ヶ岳ワークラボ 茅野市

イノベーションが生まれるエコシステム

ワークラボ八ヶ岳は、長野県茅野市がJR茅野駅前ビル・ベルビア2階に3月30日にオープンしたコワーキングスペースだ。

八ヶ岳ワークラボ

茅野市の駅から直結のコワーキングスペース。新たな産業が生まれる拠点として始まった。

コワーキングスペースとは、オフィスや会議室、打ち合わせスペースなどを共有する新たなスペースのこと。ワークラボ八ヶ岳では、ミーティングルーム4室に無料で利用できるフリーラウンジ、デスクスペースなどをそろえ、キッチンまで完備している。

八ヶ岳ワークラボ

オフィスから自由な打ち合わせスペース、会議室などが利用できる。

また、オフィスブースとワークブースは既に全16区間が完売している状況だ。このワークラボ八ヶ岳では、地元企業や都心の企業のサテライトオフィスとして機能するだけではなく、地元の大学や中高生、更には市民や別荘利用者など、さまざまな立場の人々にオープンに開放され、誰でも利用することができるのが特長だ。

八ヶ岳ワークラボ 茅野市

企業のオフィスは満室で、さまざまな利用が期待できる。

特にさまざまな分野のアイデアが集まることで、新たなビジネスが生まれる環境が整いつつある。既にこうした特性を活かして、企業や学生たちによってアイデアソンなどが開催されてきている。

製品開発から試作、小ロット量産まで。スワニーのラボが登場

そして、今回このワークラボ八ヶ岳で注目なのが、有限会社スワニー(以下スワニー)の茅野オフィスである。

スワニーは、製品設計や3Dモデリング事業を中心に、製品開発と小ロット生産など幅広いサービスを提供する企業だ。特に同社が手掛ける3Dプリント樹脂型のデジタルモールド®は、ものづくりを変える革新的なソリューションとしてたびたびご紹介してきた。

八ヶ岳ワークラボ スワニー

スワニーのものづくりラボが登場

今回八ヶ岳ワークラボにオープンしたスワニーのラボでは、3Dプリンターを中心に、さまざまな製品開発サポートが受けられる設備がそろっている。八ヶ岳ワークラボを利用する人は、このスワニーのラボでの3Dプリントによる試作開発、小ロット生産など手頃な価格で利用することが可能となる。

八ヶ岳ワークラボ

手頃な値段で3Dプリントが利用可能

ストラタシスもスタートアップを支援

ここでは、さまざまな方式による3Dプリンター7台に、切削加工機2台、小型射出成型機1台、更には電子回路のプリント基板システムまでそろっている。

八ヶ岳ワークラボ スワニー

電子回路のプリントも可能

特に、このスワニーのものづくりラボでは、スタートアップの支援に賛同するストラタシスから、3Dプリンターをはじめとしたさまざまなツール類が提供されている。

例えば、3Dプリンターでは、手軽なFDMタイプのデスクトップ3Dプリンターが3台に、産業向けのハイエンド3Dプリンターが2台と、ことなるニーズに対応する異なる方式のシステムがそろう。

八ヶ岳ワークラボ スワニー ストラタシス

ストラタシスもスタートアップ支援に乗り出している。デスクトップ3DプリンターのMakerBotが3台配備

中でも注目なのが、PolyJet方式の3DプリンターObjet260 Connex3だ。Objet 260 Connex3は、カラー、マルチマテリアルの造形が可能なハイエンド3Dプリンターで、硬質材料から、ゴムライク、ポリプロピレンライク、高耐熱、生体適合樹脂まで幅広い材料を使えるのが特長の一つ。

八ヶ岳ワークラボ ストラタシス

ストラタシスのハイエンド3DプリンターConnex 3。マルチカラーマルチマテリアルが利用できる

特にABS樹脂の特性を再現したデジタルABSでは、3Dプリント樹脂型であるデジタルモールドを作ることができる。

このストラタシスの3Dプリンターによって、スワニーのものづくりラボでは高品質な造形モデルや機能性プロトタイプ、更にはデジタルモールドを作り、射出成形機で小ロット量産まで一貫して行うことができる。

八ヶ岳ワークラボ スワニー

射出成型機も配備し、デジタルモールドが利用できる。

こうした豊富なツールがオープンに利用できる施設としては他にはない特長である。

進化するデジタルモールド。表面仕上も向上

デジタルモールドも、ここではさまざまなタイプのデジタルモールドを利用することができる。ちなみにデジタルモールドは、ストラタシスのPolyJet 方式の3DプリンターConnexシリーズや、Stratasys J750を使い、デジタルABSという材料で作ることが出来る樹脂型のこと。

八ヶ岳ワークラボ スワニー

デジタルモールドで小ロット量産にも対応

100個や数百個程度の小ロット量産を行うことができ、金型よりもはるかに低コストで、型を作ることができる。

最近では、このデジタルモールドがさまざまな形で進化を遂げており、アルミ型との組み合わせでロット数を増やしたり、カスタマイズ量産を実現するハイブリッドモールドとしての使い方や、プレス成形に対応したデジタルモールド・プレスという手法も登場している。

八ヶ岳ワークラボ

切削加工機も導入され、アルミ型、デジタルモールドの品質UPも実現

更に、ここでは、切削加工機を使うことで、デジタルモールドの表面を研磨し、アルミ型レベルの表面仕上げや精度を実現している。これによって作り出された成形物は、まるでブラストをかけたようなマットな美しい仕上がりになる。

八ヶ岳ワークラボ

デジタルモールドで作られたサンプル展示

スワニーのスタートアップを生み出すものづくりプログラム

スワニーは、この八ヶ岳ワークラボの施設を使い、更に画期的な取組に乗り出そうとしている。それがスタートアップを生み出すものづくりプログラムの開催だ。このプログラムは大きく分けて二つに分けることができる。

第一が、3Dプリンターなどの最新のデジタルツールを使ったモデリングや設計方法、試作などのものづくりセミナーだ。

そして第二が、この八ヶ岳ワークラボのコミュニティ機能を活かした、スタートアッププログラムである。

ものづくりセミナーで、デジタルツールを実践的に学ぶ

第一のワークラボ八ヶ岳ものづくりセミナーとは、スワニーのラボに配備されてある設備を使って、デジタルものづくりの実践的な手法を学ぶことができる。

3Dプリンターは手軽なデスクトップタイプからデジタルモールドまで作れるハイエンドモデルまでそろっているが、ここでは3Dモデリングの習得から、3Dプリンターの知識、更には試作の必要性まで、最新のデジタルツールを実際に使いこなすことで、デジタルものづくりの実践と基本を習得するという内容だ。

3Dモデリングでは、Fusion360を使い、コマや、ハンドスピナー、リンク・カム機構といった設計を行い、製品設計の手法を学んでいく。

また、既に作りたい製品があるユーザーも利用することが可能で、その場で3Dモデリングを行い、試作から小ロット量産まで行うことが可能だ。

スタートアップイベントで商品化、新たな産業創出を目指す

更に、スワニーではこの八ヶ岳ワークラボの施設を使い、新たな新商品を生み出すスタートアップイベントの開催を計画している。

このイベントでは、八ヶ岳ワークラボの特性を活かして、ここに集まる企業や大学、研究機関、学生たちとアイデアソンを開催し、新たな製品開発を行うというものだ。

このスワニーのラボでは、既にご紹介したように、製品開発から試作、小ロット量産まで実現できるシステムが整っており、更に、長野県にあるさまざまな企業とのネットワークも持っている。

このスタートアップイベントの面白い点は、単純にアイデアだけを出すだけではなく、設計、試作、量産まで行い、更には自分たちで価格を決め、市場調査を行い、販売まで行うという点にある。

スワニー スタートアップ支援

まとめ 新製品を生み出すエコシステム

八ヶ岳ワークラボにおけるスワニーのラボは、新たなものづくりを生み出す本格的な場所になりつつある。

従来、3Dプリンターなどを配備するだけで、ご自由に使ってくださいという場所は存在したが、このワークラボのように、デジタルものづくりの基本から実践まで習得できて、更には豊富なネットワークにより新製品開発のプログラムまで参加できる場所は存在しなかった。

特に、この施設の中でもデジタルモールドは、低コストで手軽に小ロット量産が可能なことから、新製品開発の際のテストマーケティングなどにも最適である。

また企画から開発、試作、量産、販売までをプログラムを通して行うことから、より新製品の精度を上げ、第二第三の製品化に結び付けていくことも可能だ。新製品を生み出す本格的なエコシステムとして真価を発揮しそうだ。

Form 2ユーザー事例。デジタルとアナログの融合で高付加価値ジュエリーを作る天然石の店 コオリネコ

ジュエリー製造で真価を発揮するForm 2

デスクトップでありながら高精彩で安定した造形が可能な光造形方式3Dプリンター Form 2。

FDM方式や他の光造形方式など、数多くのデスクトップタイプ3Dプリンターが存在する中で、Form 2は容易に使用でき、高精彩な仕上がりと共に多様な樹脂材料が使えるのが特長の一つだ。

その中でも特異な存在がキャスタブルレジンだ。キャスタブルレジンは、ジュエリー製造用の樹脂材料で、インベストメント鋳造の工程と、ジュエリー製作の幅を大きく広げてくれる画期的なレジンである。

本日はそんなキャスタブルレジンとForm 2を使い、ハンドメイドのジュエリー開発を行う「天然石の店 コオリネコ」の椿氏にお話しを伺った。

ジュエリーの企画開発から、製造工程において、3Dプリンターを最大限有効活用し、ものづくりの幅を広げている。

Fomr2 キャスタブルレジン ジュエリー 鋳造

天然石の加工からロストワックス鋳造まで工房で行う

「天然石の店 コオリネコ」の椿氏は、天然石を使った一点物のジュエリーを、企画からデザイン、石の選定から加工、鋳造まで一貫して行っている。

また、ジュエリー製造の過程において必要な治具を自ら設計し、Form 2を使って造形し使用するなど、幅広い使い方を取り入れている。椿氏の手掛けるジュエリーは、天然石を基調にしている。

指輪からネックレスまで天然石の独得な文様をベースにデザインされた精緻で美しいデザインが特長的だ。

ちなみに天然石とは人工的に作られたものではなく、自然に採取された鉱物で、水晶やアメジストなど、その種類は多岐に渡っている。

銀粘土から発展したジュエリー加工

もともと椿氏は、天然石をベースに周囲のシルバーの部分は銀粘土を使い作っていた。銀粘土とは銀に水と結合剤を配合した粘土状の素材で、粘土細工を作るように銀製のアクセサリを作ることが出来る。

棒状の銀粘土を使って形を作り、手で模様などをつけ成形を行う。成形後は乾燥させ高温で焼結することで結合剤が焼失し純粋な銀になるという仕組みだ。

その後、研磨などの後処理を行い仕上げていく。しかし銀粘土を使ったアクセサリの造形は、手軽だが複雑で精緻なデザインを作ることは難しい。本格的なジュエリーを作るためにはやはり彫金技術が必要になる。

Fomr2 取材 キャスタブルレジン ジュエリー 鋳造

彫金用の地金材料

手によるワックスモデルの限界

その後、製造方法に鋳造を取り入れより精密なデザインを手掛けるようになった。インベストメント鋳造は、別名ロストワックス鋳造といわれ、ロウでベースとなるジュエリーのデザインを作り、それを石膏で固めた後に焼成する。

その際に焼失したロウの部分に溶けた金属を流しこみ冷却させて形にするという手法(ロスワックス鋳造の詳しいプロセスは「3Dプリントで進化する鋳造機メーカー。吉田キャスト」をご参照ください)。

しかし、デザインを形にするのはロウ型を手で削り形にするのが一般的だ。下記はロストワックス鋳造用のロウ型の材料。ブロック状や筒状のロウを削り、それを一つ一つ手作業で仕上げなければならない。

Form 2とキャスタブルレジンの導入。デジタルの真価とは

これが一般的な現在までのロスワックス鋳造だが、「天然石の店 コオリネコ」の椿氏はここにForm 2とキャスタブルレジンを使いこなしている。Form 2のキャスタブルレジンを使うことで、鋳造やジュエリー開発がどのように変わるのだろうか。

Form 2 取材 

天然石の形状に完璧にフィットさせる高精彩

椿氏が手掛けるジュエリーは、シルバー部分に加工された天然石がはめられているのが特長だ。天然石を削り出し、そこに対してシルバー部分をぴったりと当てはめる高精彩さが求められる。

Form 2で作り出したワックスモデルでは下記の写真のように、天然石を完璧にフィットさせることができる。この緻密で高精彩な仕上がりはForm 2ならではだ。

Fomr2 取材 キャスタブルレジン ジュエリー 鋳造 

Form 2とキャスタブルレジンなら、緻密で高精彩な仕上がりが出来る。

キャスタブルレジンでジュエリー鋳造のスピードアップ

「Form 2を使うようになって、ジュエリー開発の幅が一気に効率化できました。これまではデザインなどを形に落とし込む際も、手でワックスモデルを削りださなければいけませんでした。

そのため思うような形を再現するまでかなりの時間がかかっていました。しかし、Form 2とキャスタブルレジンであれば、デザインをCADで起こしてからわずか1日で形にすることが可能です」と椿氏は語っている。

Fomr2 取材  キャスタブルレジン ジュエリー 鋳造

Form2ならよりスピーディにジュエリー製作ができる。このような緻密なデザインも手で作るよりも早く造形できる。

バリエーションデザインも手軽にできる

また、ワックスモデルを手で削り出すのとは違い、Form 2のキャスタブルレジンを使うことでデザインの幅も大きく広がったという。「例えば、Form 2のキャスタブルレジンではデザインバリエーションが容易に作ることが出来ます。これは従来の手で削り出す手法では大変な労力が必要でした」。

下記のジュエリーのように、天然石があるバージョンと無いバージョンなど、デザインや製品開発の幅が広がることになる。

品質をより追求し完成度を手軽に高められる

更に、Form 2のキャスタブルを使うことで、デザインやアウトプットの精度も従来よりもはるかに向上したという。

「以前は、ワックスモデルを加工するのに時間がかかってしまい、鋳造をしてできた完成品を見ても妥協していた部分がありました。しかし、キャスタブルレジンなら、修正や改良したワックスモデルをわずか数時間で作成できるので、品質や仕上がりによりこだわれるようになりました。」

「特にワックスモデルでの細さと、実際の鋳造品で全くイメージが異なることがよくあります。そうした場合の、微妙な調整、繊細さの表現などもForm 2を導入してからできるようになりました」。

ものづくりでは、CADデータ状で見ていたものと、実際にアウトプットしたものでは、雰囲気や質感などが大きく異なるのが一般的だ。特にワックスモデルと金属の重厚感は大きく異なる。

天然石の治具も作り出す

天然石の店 コオリネコ」の工房では、ジュエリー製造のためのさまざまな工具が存在する。鋳造機はもちろんのこと、研摩などの後加工、天然石を削り出す専用の機械や、石に穴をあける機械など、この工房でシルバー部分の加工から天然石の加工まで行うことが出来る。

この工房の治具においてもForm 2が有効的に使われている。天然石はジュエリーに使用する際には、そのままの状態ではなく表面にファセットカットを施す。

椿氏はこのファセットカットの治具をForm 2とスタンダードレジンを使ってオリジナルのものを作りだしている。この治具はもともとベースとなるものがあるが、加工できる面体は限定されていたものだ。

椿氏は更なる面体加工のバリエーションを増やせるようにForm 2とスタンダードレジンで作り出し作品の幅を広げている。

Form2 取材 キャスタブルレジン

Form 2のスタンダードレジンで作られた治具。カットの面を調整できる

Form 2 取材 冶具

数値を合わせると研磨する際に面体を調整できる。

まとめ デジタルとアナログが融合した工房

「天然石の店 コオリネコ」では、ジュエリーのデザインから製造まで、すべてを工房で行っている。シルバーの部分はロストワックス鋳造で、そして天然石の加工では削り出しや穴あけ、ファセットカットまで、天然石の特性を活かして加工する。

ここでは従来からある加工機に加え、Form 2と3DCADソフトを使いこなすことで、効率性と完成度の両方を高めることに成功している。デジタル技術を使いこなすことで、従来のアナログでは表現できなかった精密さや完成度を実現し、更には製作プロセスを大幅に向上させることに成功した。

更に、天然石の加工の場面では治具の製造にもForm 2を活用している。ものづくりの“デジタル化”の最大の効果は、「高付加価値」と「効率化」だが、「天然石の店 コオリネコ」の取組は、ジュエリー製造の分野でそれを体現していると言えるだろう。

Form 2 取材

天然石の加工から研磨、鋳造まで一貫して行う

ストラタシスの新マテリアル材料。50万色を実現する表現力と最終品製造の拡大

次世代製造を担う新たなマテリアルが登場

次世代製造技術として注目が集まる3Dプリント技術。アディティブ・マニュファクチャリングともいわれるこの製造技術は、クラウドをハブとすることで、サプライチェーンを変革し、マスカスタマイゼーションをもたらすと期待されている。

その次世代化の鍵を握るテクノロジーが、造形技術と材料の進化だ。特に材料の進化は、3Dプリンターで造形できるバリエーションを拡大し、その用途を飛躍的に広げてくれる。

今回はそんな材料開発の分野でも業界の最先端を行くストラタシスの新たな材料をご紹介しよう。ストラタシスは、熱溶解積層法(FDM)とインクジェットタイプのPolyJetといわれる二つの製法の3Dプリンターを提供しているが、今回登場した材料は、それぞれの3Dプリンターの表現力と用途を更に拡大することになる。

新材料「Vivid Color」とは。表現を50万色に拡大

最初にご紹介するのが世界初のフルカラー&マルチマテリアルを実現した3DプリンタStratasys J750の機能をさらに拡充する最新マテリアル「Vivid Color」だStratasys J750は、36万色の表現力を誇る3Dプリンタだが、この「Vivid Color」の登場によって、その表現力はなんと50万色まで拡大することになる。

Stratasys J750は、CMYKWの5色を配合することで、造形モデルに多彩なカラー表現を実現できるが、「Vivid Color」は、この5色のうちのMとY、マゼンダとイエローの高い色再現性を実現するために開発された材料だ。

この「Vivid Color」を使うことで、従来のカラー表現では実現することが出来なかった完成度の高いカラー表現と、透明性も実現している。

モデルのサーフェイスや解像度を向上。最終品と遜色ない仕上がり

また「Vivid Color」はカラー表現の質と幅を高めるだけではなく、ソフトウェア制御と連動することで、造形モデルのサーフェイスや解像度なども高めることができる。これにより、最終品に遜色がないアウトプットを実現することが可能となった。

ストラタシス Vivid Color マテリアル

最終品に匹敵する高品質なカラー表現が実現できる。

製品開発のプロセスを変革する表現力

このように、「Vivid Color」がもたらすカラーバリエーションの拡大、色の高品質化、サーフェイスと解像度の向上という機能は、ものづくりの現場にどのような影響を与えるのだろうか。

第一に、製品開発のプロセスを飛躍的に向上させてくれる効果をもたらすだろう。一般的に製品が企画されてから量産工程に入るまでには大まかに、製品企画から、コンセプト策定、ラフデザイン、デザイン、試作、改良、量産といった流れになる。

この流れは製品の種類によって異なるが、ほぼ全てのプロセスにおいて、モックアップや試作品など何らかの形でアウトプットされるのが一般的だ。このアウトプットは、従来は、切削や塗装といった手段で作成されていたが、Stratasys J750と「Vivid Color」はこの工程を激変させる力を持っている。

例えば、「Vivid Color」を使えば、コンセプト策定の段階から、最終品さながらのクオリティのモデルを作ることが出来る。また、デザイン案の検討や試作、改良の段階でも同様だ。しかも、データがあれば3Dプリンタで出力するのにわずか1日でできる。

これは切削と塗装にかかる時間に比べはるかに短い期間で、必然的に製品開発に要する期間を圧倒的に短縮してくれることにつなげられるのだ。これは製品開発の期間が決められているメーカーにとっては、開発そのものの幅を広げ、よりよい製品開発を実現することを意味している。

透過性機能の検証にも力を発揮。自動車業界が注目

更に、「Vivid Color」の色調と透明性のクオリティは、機能検証の面でも新たな価値を提供している。

例えば、下の写真のような自動車のテールランプの開発では、意匠や色の表現性だけではなく、光の透過性など、プロダクトとしての“機能”も検証が必要だ。このように「Vivid Color」では、高い透過性が必要とされる製品開発では大きなメリットを発揮する。

ストラタシス Vivid Color マテリアル テールランプ

精度の高いカラー表現と透明性が求められる自動車のテールランプのmodel。透過性試験などにも最適な透明性を発揮する。

量産段階に移る前のカラー検証もより正確に

最後に、「高品質な色調」という効果は、量産段階に移る際にも大きな効果を発揮する。これまでは、試作段階の見た目と、量産段階での見た目を完全に同じにすることは難しかった。

塗装して忠実に近づけたとしても、質感や微妙な色は、量産で使用するものと完全に一致させることは難しい。しかしStratasys J750と「Vivid Color」であれば、試作段階から、金型量産と極めて近い色や質感を表現することができる。こうした量産工程に移る前の検証なども、より効率化し、奥深い試みができるようになるのである。

FDM 3Dプリンタの最終品製造を広げる新たな新材料が登場

今回ストラタシスが発表した新材料は、熱溶解積層法(FDM)3Dプリンタの材料もリリースしている。熱溶解積層法(FDM)はストラタシスが開発した3Dプリント技術だが、その最大の特長は、金型量産で使用される熱可塑性樹脂を使い、最終品にも使用できる造形ができる点にある。

今回登場した材料は、その幅をさらに広げ、3Dプリンティングが最も注目されるデータからの直接製造、ダイレクト・デジタル・マニュファクチャリングを実現させるものといえよう。

Nylon 12CF。炭素繊維配合で軽量・高強度、金属パーツの代替品にも

今回登場した注目の材料がNylon 12CFだ。その名の通りナイロンをベースにした材料だが、チョップドファイバー、すなわち炭素繊維が35%含有されている点が最大の特長だ。

ナイロンはもともと優れた靭性と耐衝撃性に優れる特性を持つが、炭素繊維が配合されたNylon 12CFは、優れた剛性と強度も備えている。

しかも軽量性も備えており、ストラタシスのFDM熱可塑性プラスチックのなかで最高の剛性対重量比を実現している。主な用途は機能性が求められるパーツ類や、最終製品、更には治具や工具などの製造用ツーリングアプリケーションに最適だ。

更に期待が集まるのが幅広い種類の金属アプリケーションと置き換えることができる点である。

炭素繊維配合 ナイロン FDM用マテリアル

炭素繊維が35パーセント配合されたナイロンの新材料。金属パーツの代替品として期待される。

ABS樹脂に耐候性を付与したASAも登場

更に熱溶解積層法の材料として登場したのがASAだ。ASAは強度や耐久性、耐熱性に優れるABS樹脂に耐候性が強化された樹脂である。特にストラタシスが誇るハイエンドのFDM 3Dプリンタでこの材料を使用すれば、最終品として使用できる高品質なパーツを作ることが出来る。

下記は、ハイエンドFDM 3DプリンタFortus900mcとASAで作られた実寸サイズのバンパーだ。高い強度と耐候性を兼ね備えたASAならではのパーツだ。また、造形後の表面処理や塗装なども施すことが可能で、最終品のパーツ製造が現実のものになり始めている。

ASA マテリアル

展示された実寸モデルの自動車バンパー。最終品として使用できるハイエンド3Dプリンタと耐候性に優れるASAならではの造形。

まとめ 自動化とマスカスタマイゼーションを促進する力

3Dプリンティングは、アドバンスド・マニュファクチャリング、すなわち次世代製造技術の中心として、今世界中の企業が注目を集めている。その理由は、3Dプリンタの進化がもたらす二つの影響力である。

第一が、自動化による効率化だ。「Vivid Color」の部分でもご紹介したが、この技術はクオリティと表現の幅が拡大すればするほど、製品開発のプロセスを効率化する。リードタイムの短縮とコストの低下は企業競争力を強化することにつなげられる。

そして第二の影響力が、最終品やマスカスタマイゼーションへの利用だ。表現力とクオリティが向上すれば、利用できる製品の範囲も広がり、より細かいエンドユーザーのニーズに応えることが出来る。この二つの特性を実現する材料が今回ご紹介した「Vivid Color」や「Nylon 12 CF」だと言えよう。

今回ご紹介した「Vivid Color」と「Nylon 12CF」は、高い強度と耐候性を兼ね備えたASA材料と合わせて、本日から13日金曜日まで、ポートメッセ名古屋 第1展示館で開催されている第3回 名古屋 設計・製造ソリューション展で展示されています。

インクジェット3Dプリンターの原理と仕組み。種類と製法を公開

インクジェット3Dプリンターとは

3Dプリント技術の中には、紙の二次元プリンターのようなインクジェット方式により物体を積層する手法がある。この手法はBinder jettingやMaterial jettingといわれ、さまざまな素材に応用され始めている。

現在、インクジェットの3Dプリンターで、最も代表的な素材が光硬化性樹脂であるが、元来は粉末状の石膏パウダーとバインダー(結合剤)を噴霧し固めて物体にする手法が発祥である。

最近ではここ数年で大きな進化を遂げ、従来では不可能であった、金属や熱可塑性樹脂(インクジェットで一般的な光硬化性樹脂とは別)に対応する機種が登場してきている。ちなみにBinder jettingとはBinder(結合剤)を噴霧する手法。Material jettingとはMaterial(素材そのもの)を噴霧する手法からこのように分類されている。

3Dプリンターを大量生産マシーンに完成させたHPの新Multi Jet Fusion

液体金属のインクジェット3DプリンターXjet。滑らかさと高速生産を実現

 このインクジェット法の3Dプリンターの最大の特長は、インクのような微細な状態から、物体を造形するため、従来の積層造形と比べた場合、滑らかな表面や微細な造形が可能な点にある。

また、二次元印刷がCMYK(シアン、マゼンダ、イエロー、ブラック)の4色掛け合わせによって様々な色を表現できるように、インクジェット法の3Dプリンターも、高機能モデルでは、フルカラーやマルチカラーが再現可能だ。

今回は、3Dプリンターの種類の中においても、表現力と美しさ両方の点から注目が集まるインクジェット法3Dプリンターのすべてをご紹介しよう。

ボクセル

インクジェットの代表格でもあるストラタシスのPolyJet 3Dプリンターによって作られた造形物。

インクジェット3Dプリンターの原理と仕組み

インクジェット法の原理と仕組みは、基本的に2種類に分類される。素材そのものをインクジェットとして噴霧して固形化する手法と、結合剤をインクジェットにして噴霧して固形化する手法だ。

【1】Material Jettingの原理と仕組み

現在主流となっている製法が、光硬化性樹脂を使用したもので、Material Jettingといわれる原理だ。このインクジェット3Dプリンターは、主にストラタシスのPolyJetテクノロジーのように、紫外線を照射すると固まる特性を持つ光硬化性樹脂をインク状にして吹き付け、そこに紫外線を照射して固形化する技術である。

いわば光造形法(SLAやDLP)の応用ともいえる製法だ。

光硬化性樹脂を使ったインクジェットタイプでは、CMYK樹脂(PolyJetの機種によっては、ホワイトも加えたCMYKW)がノズルから噴霧され、ドロップ状のインクが落ちた時点で着色される仕組みである。積層の仕組みは、1層分の積層が終わると、造形ステージが下がり、次の積層を行う。

マテリアルジェッティング

【2】Binder Jettingの原理と仕組み

そしてもう一つが、造形材料にバインダー(結合剤)で噴霧し固めて物体にする造形方法である。もともとインクジェット法といわれる3Dプリンターの始まりは、このバインダー(結合剤)を使う手法で、それゆえBinder Jettingともいわれる。

この手法は、従来は石膏の粉末パウダーだけであったが、近年では熱可塑性樹脂や液体金属などを利用する新たな3Dプリンターも登場している。

また、このバインダー(結合剤)を使う場合には、バインダー(結合剤)に着色されており、二次元プリンターがC(シアン)、M(マゼンダ)、Y(イエロー)、K(ブラック)の四色掛け合わせで自在にカラー表現ができるように、ハイエンドなインクジェット法3Dプリンターでは、さまざまな色を表現することが可能となる。

バインダージェッティング

インクジェット法の特長 長所と短所

インクジェット法3Dプリンターの最大の特長は、一般的な手法である熱溶解積層法(FDM)などに比べて積層ピッチが小さく(16ミクロンや14ミクロンも存在する)、滑らかな表面仕上げや、微細で複雑な造形物も作ることができる。

また、光硬化性樹脂によるインクジェット法では、その原理が液体樹脂をベースにしていることから、材料混合による様々な表現ができるという点にある。近年では材料のバリエーションも増えており、一般的に商業利用が盛んな熱可塑性樹脂に近い物性の素材を混合によって表現することが可能だ。

例えば、ハイエンドモデルのインクジェット法3Dプリンターでは、耐久性や耐熱性に優れるABS樹脂や、柔軟性があるゴムのような特性も、光硬化性樹脂の掛け合わせで表現することができる。この手法は、インクジェット法の原理と仕組みで述べたCMYKのカラー表現と合わせることで、表現の幅が一気に広がることになる。

インクジェット法の長所

  • 極小の積層ピッチで微細で滑らかな表面が表現可能
  • 複合材料によって、さまざまな材料特性を表現できる
  • ABS樹脂やポリプロピレン、ゴムなど熱可塑性樹脂に近い強度、耐久性、耐熱性などの物性が再現できる
  • カラーの配合によって自在に色を表現できる

インクジェット法の短所

  • 光硬化性樹脂の場合、造形後の直射日光に当たると劣化しやすく、長期の使用や保存が難しい
  • 石膏の場合は脆い

インクジェット法の材料

インクジェット法の材料は、一般的に紫外線で硬化する光硬化性樹脂が多いが、他にも石膏や液体金属、最近では一部熱可塑性樹脂も登場してきている。ここではその代表的なものをご紹介しよう。

光硬化性樹脂

インクジェット法3Dプリンターで最も一般的な材料が光硬化性樹脂である。光硬化性樹脂は、熱を加えると固まる熱硬化性樹脂の一種で、主に紫外線(UV光)を照射すると液状から固まる性質を持つ。

光硬化性樹脂はエポキシ樹脂アクリル樹脂ポリウレタンなどの熱硬化性樹脂がベースになっており、それをベースに様々な物性を持ついろいろな樹脂が登場してきている。ちなみに光硬化性樹脂は光造形法(SLAやDLP)で使用される樹脂と同じ性質である。色は無色透明から、さまざまな色に着色可能で、分子の配合と複合により、いろいろな性質を表現できる。

インクジェット法の特長の部分でもご紹介したが、この光硬化性樹脂の複合特性によってさまざまなプラスチックの物性を表現することができる。熱可塑性樹脂で代表的なABS樹脂やポリプロピレン、弾力性のあるゴムなど、最終品に近い物性を再現可能だ。

PolyJetプリンタ

光硬化性樹脂で作られた造形モデル。

液体金属

インクジェット法3Dプリンターでは、インクのようにヘッドから噴霧するため材料は液状がメインである。これまでは液体状の光硬化性樹脂が中心であったが、新たに液体金属のインクジェット法3Dプリンターも登場してきている。

イスラエルのメーカーXjetが開発した金属3Dプリンターは、ステンレス鋼などの金属素材をインク状にし、サブミクロンレベルにして噴霧体積し、高温融合によって物体に造形する仕組みである。

Xjet 3Dプリンターについてはインクジェット法3Dプリンターの種類の部分で詳しくご紹介するが、レーザー焼結法などの従来の金属積層造形よりも滑らかで微細な表現ができると期待が集まっている。

Xjet 金属 3Dプリント

Xjetの金属3Dプリント材料

粉末剤(熱可塑性樹脂、石膏、砂など)

インクジェット法3Dプリンターのもう一つの造形アプローチが、粉末剤を噴霧し、結合剤によって固めるという原理が存在する。この場合の粉末剤では、熱可塑性樹脂や石膏、砂といった材料が存在する。

熱可塑性樹脂では、最近HP(ヒューレッ・パッカード)が開発したMulti Jet Fusionで初めて扱えるようなになった。現在はナイロンポリアミドのみに対応しているが、将来的にそのほかの熱可塑性樹脂も対応可能になるという。

また、石膏や砂などは従来から存在した粉末剤だが、砂などは鋳造の分野では欠かすことができない砂型製造のダイレクト製造に使用されている。

HP 3Dプリンタ 造形サンプル

Multi Jet Fusionの高品質な仕上がり。

インクジェット法の歴史

インクジェット法は、1993年にMIT、マサチューセッツ工科大学で開発された。その後Z Corporationが独占的にライセンスを取得、二次元印刷の業界で培われたインクジェット技術をもとに、CMYKによるフルカラーで6万色の表現を可能にする3Dプリンターを開発した。

このZ Corporationの3Dプリンターは、粉末状のパウダー材料にインク状の着色結合剤を吹き付けフルカラー化する技術で、シアン、マゼンダ、イエロー、クリアの各色を掛け合わせ、グラデーションからフルカラーまで可能にする。

その後Z Corporationは3Dsystemsに買収され、同社の中でリブランドされ扱われた。この手法がもともとのインクジェット法といわれるが、一方で、光造形法(SLAやDLP)の応用ともいうべき、光硬化性樹脂によるインクジェット法も存在する。

この技術はイスラエルの企業Objet Geometries Ltdが開発し、紫外線を照射すると固まる光硬化性樹脂をインクジェットノズルから噴霧し、照射して固めていく手法である。

Objet Geometries Ltdは、2012年にストラタシス合併することで、同社の中のPolyJetブランドとして発展を続けている。この結合剤を噴霧するのではなく素材そのものを噴霧するインクジェット3DプリンターはMaterial jettingという手法に分類される。

現在ではこのMaterial Jettingである光硬化性樹脂によるインクジェット3Dプリンターが主力のように思われるが、冒頭でもご説明した通り、バインダー(結合剤)を使ったBinder Jettingでも熱可塑性樹脂に対応したHPのMulti Jet Fusionや、液体金属によるXjetなどが登場し、更なる発展が期待される分野である。

ボクセルで進化するインクジェット3Dプリント

インクジェット3Dプリンターは、新たな概念であるボクセルで更に進化しつつある。本記事でご紹介しているPolyJetテクノロジーの集大成ともいえるストラタシスのJ750や、HPのMulti Jet Fusionなどの機種が、新たにボクセルで驚くべき進化を遂げている。ここではその革新性と、ボクセルを採用することで、どんな価値が生まれるのかをご紹介しよう。

ボクセルとは

そもそもボクセルという聞きなれない言葉はどのような概念なのだろうか。ボクセルは、端的に言うとピクセルのボックス版である。ピクセルは、コンピューターで画像を扱う際の色に関する情報だ。例えば100pixel×100pixelとは、縦に100個、横に100個のドットが並べられていることを指す。

ボクセルとは、そのボックス状のことで、物体をコンピューター上でボックス状で構成し、カラー要素などを与えることができる概念のことだ。

STLとボクセルの違い

これまでの3Dプリントデータの基本であるSTLは物体をレイヤー層で構成する仕組みであったが、ボクセルの場合は物体を無数のボックス状で構成しており、それぞれ一つ一つのボックスにさまざまな要素を与えることができる。

いわば、レゴブロックを想像してみるとわかりやすい。レゴブロックの場合は色のみであるが、インクジェットタイプの3Dプリンターでは一つ一つのボクセルに、柔軟性や硬さ、導電性など、さまざまな要素を付与できるのが特長だ。

ボクセルで何が変わるか

3DプリントのデータがSTL、これまでの積層ベースのものからボクセルに変わることで何が変化するのだろうか。例えば、上記のストラタシスのJ750の動画のように、一つの物体の中で、部位によって様々な物性を表現することができる。

ある部分は耐熱性を高くしたり、ある部分は強度や耐久性を高くするなど、一つの物体に必要に応じて物性を与えることができる。このテクノロジーによって、これまでアッセンブルによってでしか表現できなかったものが、一体成形でできるようになる。

またカラーの表現も無限大だ。例えばストラタシスJ750では、ボクセルをベースに造形することで、カラーの表現も内部から着色することができ、彼らの表現を借りれば、「深い表面」を表現することができるのだ。

いずれにせよ、ボクセルが本領を発揮するのはインクジェット3Dプリンターならではといえよう。

インクジェット法の用途

インクジェット3Dプリンターの用途は、素材によって様々である。従来からある石膏ではどうしても脆かったため製品開発における単なる形状確認用のモックアップにしか使用することができなかった。

しかし、現在インクジェット3Dプリンターの主流である光硬化性樹脂によるインクジェット3Dプリンターでは、様々な利用の仕方が登場してきている。

ここではインクジェット3Dプリンターで最も代表的なストラタシスのPolyJetシリーズを例に、その用途をご紹介しよう。

機能性プロトタイプ

光硬化性樹脂によるインクジェット3Dプリンターの最大の特長は、さまざまな種類の光硬化性樹脂を混合することで、素材の特性を変えることができる点にある。

耐熱性や耐衝撃性に優れるABS樹脂のような性質や、ポリウレタン(PU)のような靭性、柔軟性に優れる性質、ポリプロピレン(PP)のように耐久性に優れる性質など、現在工業製品で利用されている様々な熱可塑性樹脂の特性を、リアルに再現することができるのだ。

こうしたインクジェット3Dプリンターの特性から、最終品に近いリアルな機能性プロトタイプを作ることができる。また、色調やトーンなどのカラーバリエーションも自在に表現できることから、見た目、性能両方の側面から最終品に近いプロトタイプやの製造が可能だ。

このインクジェット3Dプリンターの用途は、製品開発における開発段階のプロセスを大幅に高め、よりスピーディなモノづくりを可能にしてくれる。

コンセプトモデル

機能性プロトタイプとともにインクジェット3Dプリンターが活躍するのがコンセプトモデルの製作だ。コンセプトモデルとは、いわばその製品が作られている過程において、カタチにされる最も象徴的な存在である。通常の製品開発のプロセスでは、製品企画があり、そこから製品名や機能、デザインなどが決定されるが、その中心に存在するものがコンセプトである。

コンセプトとは、いわばその製品の存在価値そのものであり、アウトプットされるものすべて(名前、デザイン、パッケージ、機能など)の中心になくてはならないものである。そのためまず初めに試作やデザインを詰める前に作られるのがコンセプトモデルである。コンセプトモデルは複数案あってもよく、プロダクトデザインの元になるものであるから、より完成度の高いものであれば認識しやすい。

そうしたコンセプトモデルには、フルカラーな表現や、素材特性を自在に変えられるインクジェット3Dプリンターは最適といえるだろう。従来の切削加工と塗装による製作に比べれば、表現、コスト、時間などの面でインクジェット3Dプリンターの方が適している。また、微妙な違いや細かい修正なども3Dプリンターであれば、デジタルデータから直接作ることができる。

polyJet 3Dプリンタ

プロダクト開発のコンセプトモデルなどの造形に最適

樹脂型。デジタルモールド®

光硬化性樹脂によるインクジェット3Dプリンターの用途として、そのほかの3Dプリンターと比べて特長的な用途が金型の製造である。金型といえば通常、鉄の塊を削り出して作り出されるが、ストラタシスのPolyJetテクノロジーであれば、光硬化性樹脂を使ってデジタルモールドといわれる樹脂製の金型を作り出すことが可能だ。

このデジタルモールドとは、PolyJetテクノロジーで使われる独自の光硬化性樹脂を配合して作り出される金型で、射出成型や、プレス成型といった従来の量産加工の金型として使用することができる。

このデジタルモールドの圧倒的な利点は、小ロット生産やテスト販売などを目的とした量産品に最適であり、1個1個3Dプリンターで作ったり手作りで作る手間はかけられないが、とはいえ多額の投資をして頑健な金型をつくり大量に生産する必要もない場合に重宝する。

この樹脂製金型、デジタルモールドを使えば、金型そのものの製造コストも圧倒的に安く、リードタイムもはるかに短く作ることが可能で、金型そのもののバリエーションや修正も容易である。新製品開発の少量生産やテスト販売、ノベルティの生産などに最適なツールといえる。このデジタルモールドはインクジェット3Dプリンター特にPolyJetテクノロジーならではの活用方法と言えよう。

デジタルモールド

PolyJet3Dプリンターで作られたデジタルモールド。樹脂型として使用できる。

治具・固定具

光硬化性樹脂によるインクジェット3Dプリンターのもう一つの用途が、治具や固定具といった製造現場で日常的に使用する工具類を作り出すことができる点にある。

治具や固定具は、製品を取り付けたり、組み立てたり、あるいは検査したりする工程で必ず使用するツールで、パーツの形状や、組み立て方、検査の仕方で、それぞれならではの治具・固定具が求められる。

また、治具によっては一定以上の強度や耐久性が求められる場合があり、用途に応じて物性を再現することができるPolyJetテクノロジーのインクジェット3Dプリンターであれば最適な性能を発揮することができる。

最終品の可能性

これまではインクジェット3Dプリンターの中でも、ストラタシスの光硬化性樹脂を使ったPolyJetテクノロジーによる用途を中心にご紹介してきたが、新たな最終品を作り出すことができるインクジェット方法も登場してきている。

この分野はまだ今後の発展によって用途は増えてくることになるが、HPが開発した熱可塑性樹脂とバインダー(結合剤)を使ったMulti Jet Fusionや、液体金属とバインダー(結合剤)によるXjetといった新たなインクジェット3Dプリンターでは、最終品をデジタルデータからダイレクトに作り出すことができる可能性が高い。

Polyjet 

最終品のパーツが造形できる。

インクジェット3Dプリンターの種類と代表的な機種

インクジェット3Dプリンターには様々なタイプの種類が存在する。既に、インクジェット3Dプリンターの原理と仕組みの部分で、Material Jettingによる手法と、Binder Jettingによる手法をご紹介したが、ここではその種類と代表的な機種についてより具体的にご紹介しよう。

PolyJetテクノロジー:ストラタシス

第一にご紹介するのが、ストラタシスが誇るMaterial Jettingのインクジェット3DプリンターPolyJetテクノロジーの3Dプリンターだ。既に用途や原理の部分でも詳しくご紹介したが、PolyJetテクノロジーは、紫外線を照射すると固まる光硬化性樹脂を使った3Dプリンターで、液体状の光硬化性樹脂を、インクジェットノズルから微細なドロップ状で噴霧し、そこにUV光を照射しつつ一層一層物体に積層する技術である。

このPolyJetテクノロジーはもともと、ストラタシスと合併したObjet社が開発していた3Dプリントテクノロジーで、インクジェット3Dプリンターの用途でご紹介した通り、機能性プロトタイプからコンセプトモデル、樹脂製金型(®デジタルモールド)まであらゆる用途で使用されている。

このPolyJetテクノロジーの最大の特長は、ストラタシスが開発するデジタルマテリアルといわれる光硬化性樹脂の素材で、6種類のデジタルマテリアルを混合することで、さまざまな物性を再現することが可能だ。

ちなみに6種類のデジタルマテリアルとは、CMYK(シアン、マゼンダ、イエロー、ブラック)の4色の固い硬質材料に、硬質不透明材料、硬質透明材料、ゴムライクの材料の6つ。この6つの素材を自在に配合し、さまざまなカラーや物性が作られる。

PolyJetテクノロジーの3Dプリンターはさまざまだが、とりわけ新型のJ750では、この6種類をすべて搭載でき、最大で36万色の表現が可能となる。

Multi Jet Fusion:HP(ヒューレット・パッカード)

インクジェット3Dプリンターの新型として注目を集める機種がHP(ヒューレット・パッカード)が開発したMulit Jet Fusionだ。このMulti Jet Fusionは、粉末状のプラスチック素材に、CMYK(シアン、マゼンダ、イエロー、ブラック)のインクが配合された結合剤を吹き付けるBinder Jettingタイプのインクジェット3Dプリンターになる。

従来、Binder Jettingは、石膏の粉末パウダーが原料であったが、このHPの新型では、熱可塑性樹脂であるナイロン12を使用して高品質なフルカラーのプラスチック製品を造形することができる。Multi Jet Fusionでは、ナイロン12のパウダーを積み上げた後に、結合剤を配合し、加熱することで一気に固形化する仕組みをとっており、その独自の製法により高品質と高速生産を同時に両立している。

例えば、簡単な歯車などのパーツ類であれば、3分間で1000個も生産することが可能で、3Dプリンターによるダイレクト製造を実現するマシーンとして期待されている。また、Multi Jet Fusionの最大の特長はVoxelという概念を3Dプリントに使用している点にある。このVoxelとは、Pixel(ピクセル)とVox(体積)を合わせた用語で、ピコリットルの立方体単位で物性表現をしていこうという手法である。

例えば、Voxelごとに物体を区切って3Dプリントすれば、場所によって色や、物性を自在に変更することが可能で、弾力性や強度、導電性や柔軟性、半透明やフルカラーといった素材の使い方が可能になる。Multi Jet Fusionの最大の魅力は、このVoxelによる無限の表現の可能性だと言えよう。

ヒューレット・パッカード Multi Jet Fusion 3Dプリンター 高速大量生産 マスカスタマイゼーション

特殊なVoxel技術でマルチカラーを自由に表現できる。

ちなみにHPは2機種リリースしており、4200と3200の2機種を販売する予定。一部のメーカーにはすでに試験的に導入されており、プロトタイプからエンドユース製品をダイレクト製造する新たなインクジェット3Dプリンターとして注目されている。

Nano Particle Jetting(ナノ粒子ジェット):Xjet

インクジェット3Dプリンターの新たな機種として登場しているのが液体金属の3DプリンターXjetだ。Xjetは、素材を直接インクジェットで吹き付けるMterial Jettingのタイプに分類されるが、液体状の金属素材をナノ粒子レベルで吹き付ける新たな技術で3Dプリントを可能にしている。

液体金属 インクジェット 3Dプリンター Xjet

巨大なビルドプレートを備え、中型モデルから小型モデルまで大量生産が可能となる。

ちなみに、製法であるNano Particle Jettingは日本語訳するとナノ粒子ジェットとなる。液体状の金属の粒子が1ミクロンの10分の1であるサブミクロンレベルで噴霧され、造形速度はなんと毎秒2億2100万滴の体積が可能。ナノ粒子の液体金属を吹き付けつつ、同時に300℃の高温で加熱することによって、粒子一つ一つが融合し、金属の滑らかな表現が可能になるというわけだ。

 この新たな金属造形技術は、従来からの粉末状の金属パウダーを使うレーザー焼結法に比べてはるかに滑らかな表現が可能になる。

ちなみにこの液体金属によるNPJナノ粒子ジェッティングの開発には、PolyJetテクノロジーを開発したObjet社の開発メンバーが数多くかかわっており、高いインクジェット技術が活かされている。

液体金属の材料では、ステンレススチールなどが対応しているようだ。こちらのXjetも新たなインクジェット3Dプリンターとして今後注目が集まる機種である。

液体金属 インクジェット 3Dプリンター Xjet

ステンレススチールなどで使用できる。

液体金属 インクジェット 3Dプリンター Xjet

インクジェット技術の特長である高精細が行かされる。

まとめ インクジェットの未来。マスカスタマイズ生産マシーンへの道

もともと石膏パウダーの結合剤噴霧で始まったインクジェット3Dプリンター。しかし、現在、さまざまな素材に対応することによって、新たな生産マシーンとして進化を遂げつつある。光硬化性樹脂を使ったストラタシスのPolyJetテクノロジーでは、6種類のマテリアルを自在に配合することで、さまざまな物性と無限のフルカラーを実現している。

HPが開発したMulti Jet Fusionでは、石膏パウダーしか対応していなかったBinder Jettingを、熱可塑性樹脂に対応させることで、新しい生産の道を開きつつある。さらにはナノ粒子レベルで液体金属を噴霧するXjetは、金属パーツの生産に新たな風を巻き起こし始めている。

このように、インクジェット技術は、二次元から三次元の物体製造の分野においても、主力の技術になりつつあるのである。その用途は、プロトタイプやコンセプトモデルという従来の3Dプリンターの枠組みを超え、小ロット量産用の金型や、エンドユース製品のダイレクト製造まで幅を広げつつある。

この二つの用途、金型とダイレクト・マニュファクチャリングという使い方は、カスタマイズに対応した量産を可能にし、ものづくりの可能性を大きく広げてくれるものに他ならない。今後も更なる開発と発展に期待したい分野である。

ジュエリー製造を3Dプリンターで進化させる展示。吉田キャストの卓上鋳造機とForm 2のCastableレジン

3Dプリンターで変わるジュエリー製造

ジュエリー製造の分野で新たな価値を発揮しつつあるのが3Dプリンターと小型の鋳造機だ。

ジュエリー製造はロストワックスといわれる鋳造方法が一般的だが(ロストワックス鋳造については、「3Dプリントで進化する鋳造機メーカー。吉田キャスト」をご参照ください。)、このロストワックスの原型となるマスターモデルとワックスモデルの作成に3Dプリンターが有効利用されつつある。

本日は、2018年1月24日 (水). ~ 27日 (土)に東京ビッグサイトで開催された国際宝飾展から、Formlabsの3Dプリンター Form 2とCastableレジン、吉田キャストの卓上鋳造機の展示をご紹介しよう。

ジュエリー製造は高精彩なForm 2ならでは

ロストワックス鋳造は、ジュエリーの元となるマスターモデルを作り、それをベースに同様の形をしたワックスモデルを作ることから始まる。

現在でもこのマスターモデルは、切削や手作業などによって作られるのが一般的だが、3Dプリンターを使用することで、これまで実現することが出来なかった形状やデザインが実現可能となった。

また、Form 2のCastableレジンを使用すれば、ワックスモデルまで作ることが可能で、作業工程を大幅に効率化することができる。

左から、ワックスモデル、鋳造品、研磨後の完成品

スタンダードレジンは、マスターモデルの造形に最適

Form 2のスタンダードレジンは、高精彩で滑らかな仕上がりができるのが特長だ。

Form 2は、最小25ミクロンの積層ピッチで造形することが可能で、デスクトップのFDM(熱溶解積層法)などの3Dプリンターとは違い、積層跡が目立たず細かいディテールを表現することが可能だ。

まさに細かいデザインが求められるジュエリーのマスターモデルには最適である。

Form 2のスタンダードレジンで3Dプリントされたジュエリーのマスターモデル

Castableレジンで、ワックスモデルも同じクオリティで

ジュエリー製造の中で核となる部分がワックスモデルの製造だ。ワックスモデルはこれまでのジュエリー製造ではマスターモデルを作った後に、シリコーンを使ってゴム型をとり、このゴム型にロウを流し込んで作る。

Form 2では、このワックスモデルを3DCADデータからダイレクトに作ることができるCastableレジンも提供している。Castableレジンは、インベストメント鋳造に最適化された樹脂で、脱ロウ時にも灰や残留物を残すことなく焼き尽くし、ジュエリーに求められる滑らかな仕上がりを可能にする専用樹脂だ。

こちらはワックスモデルを作るためのCastableレジン。マスターモデルと同じ3Dデータでプリントできる。

またマスターモデルと同じ3Dデータを使って造形するため、全く同じクオリティで複数を生産することが可能。脱ロウを行う際のワックスツリーを作る際にも、Form 2であれば、効率的に作ることができる。

吉田キャストの鋳造機ラインナップ

Form 2ではマスターモデルとワックスモデルの作成までを行うが、そこから先、脱ロウから鋳造、鋳型バラシの工程は、鋳造機が必要になる。

鋳造機と聞くと一般的に大きな設備や機械を連想するが、最近では、デスクトップタイプの卓上鋳造機も登場してきている。

吉田キャストは、ロストワックス鋳造機のリーディングカンパニーで、豊富なラインナップを誇っている。また、ロストワックス鋳造の分野にいち早く3Dプリント技術を取り入れ、新たな価値を提供しようとしているメーカーだ。

今回の展示会でも小型の卓上吸引鋳造機プチキャストVBC-50をはじめさまざまな鋳造機のラインナップが登場している。

卓上吸引鋳造機プチキャストVBC-50

吉田キャストのブースでも、Form 2のCastableレジンでワックスモデルを作った後、実際に鋳造したジュエリーモデルが展示された。下記はCastableレジンで作られたワックスモデルと、ワックスツリーから取り出された鋳造品、3Dプリンターを使えばジュエリー製造もより効率化され、デザインの幅も広がることになる。

大型のモデルも展示。

まとめ

3Dプリンターの革新的な点は、これまでの既存の製造技術と組み合わせることで、その製造プロセスを進化させることができる点にある。

今回ご紹介した吉田キャストとFormlabsの組み合わせのように、ある工程の一部分に3Dプリンターを導入することで、リードタイムは短縮され、効率的なモノづくりができるようになるだろう。

また、同時にジュエリーそのものの設計データをマスターモデルからワックスモデルまで一元管理することができるため、品質管理も容易になる。

特に高精彩で滑らかな仕上がりができるForm 2と小型の卓上吸引鋳造機プチキャストVBC-50との組み合わせは、従来よりはるかに低コストにジュエリー製造を効率化することができるだろう。アウトプットが手軽になることで、より良い製品が登場する可能性を開くことになる。

3DプリンターとVRの製造ハブIndustry 4.0 Testlab

Industry 4.0 を巡る世界の動き

製造プロセスの効率化を高め、企業競争力を強化するIndustry 4.0。ドイツが提唱したこの概念は、今や先進国の間では、次世代製造業の核として導入が加速している。日本ではソサイティー5.0、中国ではManufacturing in Chinaなど、表現は異なれど、基本的にはデジタル化と自動化によって、産業を次世代化する動きである。

そしてデジタル化と自動化の一躍を担う分野の一つが3Dプリント技術なのだ。3Dプリンターは製造プロセスを激変するだけではなく、同時に、多くの多様性に応えるマスカスタマイゼーションを可能にするテクノロジーとして、いわば創造性の開化をもたらすものだ。

だがいきなり、これまでの製造業の中に取り入れることは難しく、それに適応した人材育成が求められる。当然、各国も3Dプリントに関する人材育成を行っており、大学などの高等教育機関で、その動きが著しい。例えばシンガポールでは南洋理工大学にアディティブ・マニュファクチャリングセンターを設けたり、日本の慶応義塾大学湘南藤沢キャンパス(SFC)でもMakerBotのイノベーションセンターが登場している。

本日ご紹介するオーストラリアのスウィンバーン工科大学では、独自に3Dプリントの研究センターIndustry 4.0 Testlabを設立し、新たな研究開発を開始している。

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Industry 4.0 Testlabとは?オーストラリアの製造業を次世代化する取組

スウィンバーン工科大学は、1908年に創立されたオーストラリアの工科大学だ。実は同大学が3Dプリント研究に着手しているのは既に2年前からだ。自国オーストラリアではないが、中国山東省に共同製造研究センターを設立している。

今回オーストラリアで立ち上げられたIndustry 4.0 Testlabでは、その名前の通り、デジタル製造プロセスの研究がメインとして行われ、新たな材料や製造を研究開発することが主眼に行われる。

その中心となる研究が、複合カーボン製造の研究開発だ。炭素繊維配合材料は、3Dプリンターではストラタシスのロボットアームの3Dプリントや、MarkForgedなどで登場し、最終品製造に使用されているが、このIndustry 4.0 Testlabでは、より少ない廃棄物、より少ないコスト、より良い生産能力を持つ材料で最終品のパーツや消費財などを製造する研究が行われるという。

カーボンファイバー複合材料の3Dプリンターで最終品製造を開始

同社は既にオーストラリアのエンジニアリング企業Fillとパートナーシップを結び、独自の製造技術を開発している。

スウィンバーン工科大学のディレクターでもあるフォックス教授は、次のように述べている。「スウィンバーン工科大学はパートナーと協力して、オーストラリアの有益な中間製品市場におけるデジタル製造ソリューションを提供し、世界をリードします。」

また、スービック教授は、「Fill(オーストリア)とのパートナーシップは、私たちの戦略にとって特に重要です。複合製品の3Dプリント技術を独自の形で導入し、プロセスを完全に自動化できるからです。」と述べている。

VRと3Dデザインの“未来の工場”を設立

Industry 4.0 Testlabが行う次世代製造技術の導入は炭素繊維複合の3Dプリント技術だけではない。新たなデジタル設計に対応するために、3Dビジュアライゼーションとデザインスタジオ「ファクトリー・オブ・ザ・フューチャー(未来の工場)」が設けられている。

このファクトリー・オブ・ザ・フューチャーは、デザイン、研究、製造、教育の分野だけでなく、学部生や高校生、卒業生、より幅広いコミュニティに関わるハブで、1億ドル以上閉じて設けられたAdvanced Manufacturing and Design Centerの1階に作られたもの。

これは2017年8月にお行われたシーメンスの産業用デジタル化助成金1憶3500万ドルによって設けられたもので、この補助金は、Industry 4.0 Testlabの開発にも役立っている。

製造プロセスをVRとデジタル設計でシームレスに

この新たなデジタル設計のための施設は、バーチャルリアリティ環境を提供することで、デザイナーやエンジニアが研究スタッフと提携して作業することができる。3Dプリンターを導入することで、大きく変わるのが設計や製品開発のプロセスだ。

従来の製品開発の手法は、製品企画、プロトタイプ、試作、改良、量産、検品という縦の流れで行われるが、3Dプリンターによって、リードタイムが短縮され、3Dデータで共有できれば、こうした製造プロセスはシームレスになる。この施設では、デザインとビジネスイノベーション、ICT、ラピッドプロトタイプという概念が一つになることで、製品開発をより革新的に行おうとするものなのだ。

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まとめ 研究機関をハブにし自国製造業を次世代化

更に、スウィンバーン工科大学が革新的なのは、この次世代製造技術の研究を大学外との連携により、自国の中小企業の競争力を強化しようとしている点にある。

このIndustry 4.0 Testlabは、研究に従事する学生や研究員だけではなく、産業パートナーもアクセスすることが可能で、オーストラリアの製造業者は、3Dプリントなどの最先端技術へのアクセスが可能となる。既に自動車関連の製品やパーツ製造に従事しているといい、今後も製品を広げていくとのことだ。

三菱ケミカルがオランダの3Dプリンタ―用フィラメントメーカーを買収

三菱ケミカルがオランダのフィラメントメーカーを買収

Verbatimブランドの3Dプリンター用フィラメント材料を展開する三菱ケミカルが、新たにオランダのフィラメントメーカーDutch Filaments B.V.を買収したと発表した。Dutch Filaments B.V.は、2014年創業のFDM®(熱溶解積層法)用のフィラメントメーカーで、抱負なラインナップを持つことで知られている。

Dutch Filaments B.V.はここ数年で、ヨーロッパをはじめ、急速に拡大する3Dプリント市場に押し上げられ、グローバルサプライヤーに成長していた。今後は三菱ケミカルのグループに入ることで更なる成長を目指す考えだ。

三菱ケミカルの子会社であるMitsubishi Chemical Performance Polymersの管理下に置かれDutch Filaments B.V.が持つ技術、ノウハウが活かされることになる。

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急速に開発が進むデスクトップ用3Dプリンターフィラメント材料

三菱ケミカルが買収する背景は明らかにされていないが、ここ数年で急速に進むフィラメント材料の開発が大きく影響していると考えられる。FDM(熱溶解積層法)の特許が切れることによって、安価なデスクトップモデルの3Dプリンターが続々と開発されているが、同時に、それに対応したフィラメント材料の開発も進んでいる。

当初は、ABS樹脂PLA樹脂の2種類が中心であったが、ここ数年で、その材料バリエーションは拡大し、金型で使用されていた熱可塑性樹脂のほとんどがフィラメント化されていると言っても過言ではない。

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今回買収されたDutch Filaments B.Vでも、25種類以上の種類を持ち、ABSを強化し耐候性を高めたASA樹脂や、工業製品として多用されるポリプロピレン(PP)、エンジニアリングプラスチックの代表ともいえるポリカーボネート、柔軟性を持ちゴムとしても使われる熱可塑性ポリウレタンポリエステルの一種で、高い耐久性を持つポリエチレンテレフタレート(PETG)、炭素繊維配合やガラス繊維配合の強化フィラメントまで、幅広いラインナップを持つ。

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まとめ 進化するフィラメント材料とデスクトップ3Dプリンター

3Dプリンター用フィラメント材料は、今後も更に開発と拡大が進むだろう。数年前までは、デスクトップタイプのFDM(熱溶解積層法)の3Dプリンターの性能は安定していなかったが、最近では精度や造形安定性など、かなり進化しつつある。

こうしたデスクトップタイプの進化と相まって、フィラメント材料の方も、ノズル詰まりを防止する技術や、安定性を保ちながら機能を強化する取組なども行われつつある。プリンターと材料、両方の進化は着々と行われつつあるようだ。

デジタルモールドがブロー成形で使用開始。サントリーの製品開発

利用が広がるデジタルモールド。今度はブロー成形での利用が開始

3Dプリント樹脂型としてものづくりに新たな革新をもたらすデジタルモールド。従来の製造プロセスを大きく進化させるとともに、アルミ型やプレス加工などと組み合わせることで、ものづくりにおける幅広い分野で展開が広がりつつある。

今回ご紹介するのは、ペットボトルなどの生産で欠かすことが出来ない成形技術ブロー成形での展開だ。ブロー成形とは、ペットボトルやガソリンタンクなどのタンク類、楽器ケースや工具箱など、さまざまな製品の生産で使用される技術だが、特に有名なのがペットボトルである。

今回は新たにストラタシスのPolyJet 3DプリンターであるObjet Eden 260VSを導入し、デジタルモールド®でペットボトルの開発工程を大きく進化させたサントリーの取組をご紹介しよう。

ブロー成形 デジタルモールド

新たにデジタルモールドをブロー成形に取り入れたサントリー

奥が深いペットボトルの開発と試作金型に求められるもの

我々が当たり前のように購入しているペットボトルの飲料水だが、実はペットボトルの成形は極めて奥が深く、飲料水の種類によって形状が細かく異なる。

例えば緑茶やオレンジジュースなどの飲料水は、加熱による殺菌処理を行わなければならず通常のボトルよりも熱に強い耐熱ボトルが使用される。一方、炭酸飲料に使用されるボトルは、炭酸ガスの圧力に耐えられる高強度な耐圧ボトルが必要だ。

また、炭酸飲料の中でも、オレンジの炭酸やカルピスの炭酸のように果汁や乳酸菌を多くふくむ炭酸飲料は、圧力と加熱両方に耐えられる耐熱圧ボトルを使わなければならない。このようにペットボトルは、飲料水の種類によって、形状も細かく異なり、それに対応した金型の種類が求められる。

それに加え、新製品開発とあると、ペットボトルはパッケージと共に製品そのもののデザインを構成する重要な要素となり、金型の試作にもかなりの期間を要する。

ブロー成形 デジタルモールド

ブロー成形の試作に取り入れられたデジタルモールド

「軽量化」というデザインの課題。試作回数が巨大な生産コストに影響を与える

もう一つ試作開発で課題となっているのが「軽量化」だ。とりわけ、近年ではペットボトルの製品開発にはエコやサステナビリティの要素が大きく影響を与えており軽量化は必須の命題といわざるをえない。

例えば、ペットボトルの軽量化を1gでも達成できれば、何百万本と生産されるため、大きなコストセーブにつながるのである。

こうした1gからコンマ数グラムの軽量化が、を達成するためには十分な試作回数の確保と効率化が大きな意味を持ってくる。デジタルモールドはまさにその面でも大きな力を発揮するのだ。

ブロー成形 デジタルモールド

飲料水の種類で異なり、更には軽量化がカギのペットボトル  ※画像提供:ストラタシス

アルミ金型からの切り替えでリードタイムがわずか3日に短縮

サントリーではデジタルモールドを取り入れることで、製品開発をどのように変化させたのだろうか。このペットボトルの試作において、従来サントリーでは、切削加工によるアルミの削り出しで試作金型を製造していた。

このアルミ金型を使ったプロトタイプの検証には1回あたり1.5カ月のリードタイムがかかる。しかしアルミ金型をデジタルモールドによる樹脂型に切り替えることで、なんとこのリードタイムをわずか3日にまで短縮することが可能となった。

新製品は、当然のことながらリリース日が決定しているのが一般的で、試作にかけられる期間も限られている。そのため1ショットの試作を出した後、金型の修正が必要になった場合には、更に期間もかかるため、製品開発における試作の回数も限定されてしまう。

しかし、デジタルモールドでは、テストショット後の修正も迅速にできる。このリードタイムの圧倒的な短縮は、製品開発の幅を大きく広げてくれることになる。

デジタルモールドであれば、アウトプットまでに期間がわずか3日であることから、試したいデザインや形状など、新製品のブラッシュアップにより力を注ぐことが可能なのだ。

デジタルモールド ブロー成形

アルミ金型の代わりにデジタルモールドを利用。

耐圧性、耐熱性、滑らかさを併せ持つデジタルモールド

ブロー成形は、パリソンといわれる試験管のようなプラスチックの容器を金型ではさみこみ、空気圧を注入して膨らませ、金型にあった形にする技術だ。

そのため、試作金型とはいえ、そこには加熱に耐えられる耐熱性と、空気圧に耐えうる耐圧性、更には金型表面の滑らかさも要求される。

こうした点からもObjet Eden 260VSの精度と、デジタルマテリアルはい最適な効果を発揮する。デジタルマテリアルは、PolyJet 3Dプリンター専用の樹脂で、モデル表面の滑らかさや精密な造形ができるのが特長だ。

ちなみに、通常のデジタルモールドでは、デジタルABSが使用されるが、100本程度の成形であるため、通常のVeroWhiteが使用された。

Objet eden

運用面のユーザビリティも向上

試作金型をデジタルモールドに切り替えるうえで、サントリーは運用面に関する検証も行っている。それが3Dプリンターと、コンピューターシミュレーション、切削加工機による比較検証だ。

コンピューターシミュレーションでは、計算時間が長く、実際のボトルの設計データと計算結果に若干の乖離が見られた。また切削加工機では、CAMや加工機の設定が複雑でかなりの工数がかかってしまうことが分かった。

しかし、3Dプリンターでは、3DCADデータからスピーディにアウトプットすることが可能で、修正が発生した場合にも3DCADデータを修正するだけで即座に3Dプリントすることができる。

更に、3DCADデータに統合することで、製品開発に関わる人材コンセプトデザイナー、マーケター、パッケージエンジニア、プロダクトエンジニアで情報を迅速に共有できることになったという。

まとめ 3つの量産加工に対応しものづくりを柔軟に

デジタルモールドは、これで3つの量産加工に対応しつつある。プラスチック加工の分野では射出成形とブロー成形、そして金属加工の分野ではプレス成形だ。

この3つの加工に利用されることで、利用できる製品開発の分野も飛躍的に広がることだろう。リードタイムの向上と、デジタルモールドの手軽さは試作開発の回数を増やし、製品そのもののアウトプットを向上させる力を秘めている。

また今回は触れなかったが、デジタルモールドでは最終品と同じ材料が試作段階から使用できるため、多品種少量生産やテストマーケティングなどにも有効だ。デジタルモールドは、従来の量産加工を進化させるだけではなく、よりニーズに合った柔軟なものづくりを可能にしてくれる。