活発化するデザインコンテスト
これまでデザインチャレンジやデザインアワードはさまざまな国で、数多くのコンテストが実施されてきた。
学生を対象にしたプロダクトデザインアワードや、優れた商品に送られるデザインアワード、または広告やグラフィックを対象としたものなどさまざまだ。
日本でもGマークで象徴されるグッドデザイン賞など、多くのデザインアワードが存在する。こうした動きは基本的には国家や、デザイン協会などが中心となって構成され運営されているが、最近では、1企業がデザインコンテストを実施する動きが活発になってきている。
企業のデザインコンテストも、もちろん昔から行われてきたが、最近の3Dプリント技術の浸透によって、3Dプリントサービスや、3Dプリンターメーカーがデザイナー育成のためにさまざまなデザインコンテストを展開中だ。
本日は世界的に有名な3DプリントサービスiMaterialiseのデザインチャレンジをご紹介。
iMaterialiseのそのほかの取組はこちらをどうぞ
iMaterialiseのドローンデザインチャレンジ
iMaterialiseは、本サイトでもたびたびご紹介させていただいたが、ベルギーに本拠を持つ世界的な3Dプリントサービス、マテリアライズの3Dプリントサービス。
もともとは工業用、医療用に特化した専門的な3Dプリント技術やサービスを提供しているが、今後のエンドユーザーへの3Dプリントサービスの広がりを見越してデザイナーを集めた3Dプリントサービスを開始している。
その3Dプリントサービスが、iMaterialiseになる。同様のエンドユーザー向けのサービスは「Shapeways」が有名だが、iMaterialiseは、工業、医療分野での経験からくる高い造形精度のクオリティと、仕上げや加工のパターンが豊富なところが最大の特長。
既に多くのデザイナーがサイト上で集まっているが、同時にデザイナー振興のためにさまざまな取り組みを行っている。
本日ご紹介するデザインコンテストもその中の一つで、3Dプリントできる無人ドローンのデザインコンテストだ。
多くのデザイナーが集うiMaterialise
これは3Dソフトウェアの専門企業Autodeskとドローンのカスタマイズデザイン製造を行うFlexbotと提携して行っている。
Flexbotのドローンはスマートフォンで操作ができ、カスタマイズして自由に組み立て可能。 既にコンテストでは合計30種類の無人ドローンのデザインが応募されたが、3つのドローンが勝者として選出された。
3Dプリンターで自由にドローンがカスタマイズできるFlexbot
バイオハザード追跡型ドローン
受賞した3つのドローンのうち、最も実用性が高く、デザイン性にも優れた機体として選ばれたのがバイオハザードトラッキングドローン。
バイオハザード、すなわち有害な生物による危険性のことで、細菌感染の緊急事態なども含む状況に活躍できるドローンだ。 無人偵察機は、こうした人が立ち入りすることができない緊急事態で活躍することができる。
受賞したドローンは、捜索救助や、支援物資の落下、被災地の映像録画など、多くのアプリケーションを備えている。 ちなみにデザインは国際的なバイオハザードシンボルを模して造られており、設計にはAutodeskのMayaソフトウェアが使用されている。
バイオハザード追跡型ドローン
アブラムシタイプとタコタイプ
その他の受賞した無人ドローンは、デザイン性が評価されたもので、一つがアブラムシを模したデザインの無人ドローンだ。独特の六角形のフレームが印象的。また、もう1機は6本脚のタコを模したデザイン。それぞれの職種には回転用のソケットが取り付けられている。
アブラムシタイプ
タコタイプ
ちなみに上記3名の受賞者には賞品として以下の3つの特典が与えられる。
- Flexbot Hexacopter
- Autodeskのプレミアムメンバーシップ
- 自分がデザインした無人機の3Dプリントモデル
デザインコンテストのメリット
もともと1企業がデザインコンテストを行う事例は昔から存在する。 最も有名なものの一つは文房具のコクヨなどが行っているコクヨデザインアワードなどがあげられる。世界中から募る商品のデザインを募るもので、昨年の応募は20ヵ国1217件のプロダクトデザインが集まった。
また、無印良品のMUJIアワードというデザインアワードも有名。こうしたデザインアワードを実施することのメリットは、一つは、企業やメーカーにとって商品開発の幅が拡大することが言えるだろう。
不特定多数からの多くのアイデアを集めることができるというメリットだ。一方で選出されたデザイナーにとってもそのメリットは大きい。 賞金や受賞特典などの直接的な恩恵を受けるだけではなく、有名企業の商品に選ばれたという計り知れない評判を得ることができるからだ。
3Dプリント技術の拡大でデザイナーの影響力がアップ
しかしこうした動きは3Dプリンターと3Dデータの浸透によって、更なる加速を見せてきている。 その理由の第一は、3Dプリント技術によって表現することができるデザインの幅が拡大していることがあげられる。
従来の製法では不可能であった表現が可能になり、またそれを3Dプリンターを使用することで、実際の製品としてアウトプットすることが可能だ。
また、第二の理由としてあげられるのが、インターネットと3Dデータというデジタル性があげられる。今回ご紹介したiMaterialiseなどの3Dプリントサービスには数多くのデザイナーが集まっている。
こうした集まっているデザイナーの作品はwebサイト上で、全てが購入可能であり、3Dプリントサービスを利用することで、極端な話、世界中どこでも製品として手にすることができる状況だ。
こうした「表現の幅の拡大」と「デジタル性」という二つのメリットがデザイナーの力を増大させ、デザインアワードやデザインコンテストの役割が重要になってきている。
まとめ –新たな商品開発のスタイルが浸透‐
こうしたデザインコンテストは、デザイナー自身のレベルアップにつながるだけではなく、商品を開発したいメーカーにとって、大きなメリットをもたらすことになるだろう。 今回iMaterialiseが行ったデザインチャレンジも、ドローンのカスタムメイドを進めるFlexbotにとって、大きなメリットをもたらすだろう。
また、他社でいうと、GEなどは自社製品の開発に、こうしたデザイナーが集まるクラウドサイトを利用している。ジェットエンジンのパーツのデザインも3Dデザイナーが集まるクラウドサイト「GrabCAD」と提携することで、世界中から新製品のデザインとアイデアを集めることに成功した。
今後、こうした動きはますます加速するのではないだろうか。
インターネットの普及と3Dプリント技術の発展は、さらに加速していく。こうした動きに合わせて、モノづくりのスタイル、商品開発のスタイルも徐々に変化を見せていくに違いない。
そうすると、未来の世界では、世界中のデザイナーを集めたクワウドサービスと、世界中どこにいても製品を提供できる3Dプリントサービスが、モノづくりの世界で大きな役割を果たすようになるかもしれない。
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