HPが新たに金属3Dプリンターを開発。その実力とは
高速生産と高強度、高品質の造形がでくるMJF(Multi Jet Fusion)3Dプリンターの登場によって一躍、3Dプリント業界の注目を集めたHP。multi jet fusionの登場が2016年だったが、今回、新たに金属3Dプリンターの分野で注目を集める発表が行われた。それがメタルジェット3Dプリンターだ。
新技術Metal Jet 3Dプリントとは?
HP Metal Jetとはどのような製法なのだろうか?HPによるとこの技術は、金属射出成形(MIM)の3Dプリンター版だという。金属射出成形(MIM)とは、プラスチック加工の射出成形に金属粉末を加えた製法のこと。ダイキャストなどとことなり、金属そのものを使うのではなく、金属粉末にバインダーと言われる添着実材をまぜて射出成形し、焼結して最終製品にする。

MIM(金属射出成形)のバインダージェッティング3Dプリンター
今回発表されたHPのメタルジェットとは、このMIMと同じように金属粉末とバインダーを使用したバインダージェッティングの一形態である。 HPによるとその凄さは作業領域の1インチあたり1秒間に3,000万滴が噴出されるという。
プラスチックのmulti jet fusionが溶融結合剤であるバインダーインクをプラスチック粉末に噴射し加熱るのに対して、メタルジェットは金属粉末上にバインダーを堆積させる。その後、MIMと同様に炉で焼結する必要がある。
この手法は現在市場に出ているバインダージェット方式の3Dプリンターや造形後に焼結する手法、例えばExOneやMarkForgedの機種とにているが、メタルジェットプロセスは、市場に出ている他のバインダージェッティングやレーザーベースの3Dプリントシステムに比べ50倍の生産性があると言う。
MIMとの違い。50000ロットでコストと生産性を超える
Metal Jetシステムのビルド範囲は、430mm x 320mm x 200mmの広範囲に渡る。HPは、この広さによって、50000ロット以下の稼働率でMIMとコスト競争力があると推定している。実際に金metal jetを使った検証では、車両に使用されているゴルフボールサイズのローラーフィンガーツールで55,000パーツプリントが可能だ。
この metal jetの生産性は従来のMIMに比べて驚異的なスピードだといえよう。例えば、従来のMIMであれば必要なツールを作成し、テストし、修正し、その後生産工程に入るとすれば、およそ3〜6ヶ月かかることがある。しかし、metal jetであれば、設計からプロトタイプ、生産まで、シームレスに飛躍的に早めることが可能だ。
また、metal jetは材料コストの面からも生産数によってはMIMを超えるという。MIMの場合は、部品の約40%の部分をポリエチレンのようなバインダーに依存しるが、Metal Jetは少量のバインダーしか使用しない。
従来のMIMでは射出成形後の大部分が炉で焼結すると、バインダーのすべてが焼失し、部品の最終的なサイズは限られる。しかし、Metal Jetを使用すれば、HPは肉厚の部品を実現することが可能だ。


metal jet 3Dプリンターの価格
metal jetシステムの価格は399,000ドル以下になる可能性がある。また、部品は水平解像度4〜7ミクロン、層厚25〜40ミクロンでプリントできる。
また、Metal Jetで製作された部品がASTM規格に適合し、等方性を持ったコンポーネント製造ができ、更には業界標準を超える機械的特性を示すコンポーネントも製造できるという。

HP Metal Jetの狙い。巨大な製造業市場の用途
Metal Jetの開発の先には、巨大な製造業市場を席巻しようというHPの狙いがある。既に、さまざまな分野の製造業でmetal jet 3Dプリンターの利用が始まっている。また、metal jetを導入する前にHPのウェブサイトにアクセスし、3Dプリント用の部品をアップロードすれば、metal jetのプリントを利用可能だ。
医療分野での利用
また、具体的な企業では、Johnson&Johnson、Okay Industries、およびPrimoMedicalなど医療関連の分野が含まれ、患者固有の外科手術ツールを3Dプリントするカスタムインプラントでの利用が始まっている。
自動車用の最終品製造
更に、metal jetは、自動車業界や工業用でも利用が既に開始している。例えば、大型ポンプメーカーのWiloは、Metal Jetを使用して、可変の流体力学のポンプとモーターの製造で細かな微調整を行い、カスタマイズ製品を作っている。

また、フォルクスワーゲンはMetal Jetを使用して、衝突テストを必要としない非クリティカルな金属パーツをカスタマイズ製造している。更に来年以降、同社は大量生産のギアシフトやミラーマウントなど、機能的なパーツの生産に取り組む予定とのことだ。将来、2021年までに、VWは同社の新たな電気自動車製造のためのプラットフォームにMetal Jetの使用を検討するかもしれない。
まとめ
HPは、2016年に発表したmulti jet husionに引き続き、今回のmetal jetの導入によって、製造業における生産に革命を起こそうとしている。プラスチックと金属、両方の材料で、プロトタイプからカスタマイズ生産まで行うことが可能になれば、大量生産を行ってきた業界は更に競争力を増し、時代にあった生産体制を構築することだろう。
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