光造形やFDMにとって代わる新たな3Dプリント技術
いま市場に多く流通している低価格3Dプリンターはほぼ2種類の製法から成り立ってると言っていい。
第一がFDM製法と言われるもので、樹脂を溶かして積み上げていく方法。第二が液体状の熱硬化性樹脂であるエポキシ樹脂やアクリル樹脂、ポリウレタンなどをベースにした紫外線硬化性樹脂に、光を当てて層ごとに固めていくSLA製法、光造形と言われる方法だ。
ここ最近、急速に光造形法の低価格モデルが普及してきているが、いまだ市場に登場している多くがFDM方式になる。
低価格なFDM方式の3Dプリンターには課題も多く、積層ピッチが粗いため、高精度な造形物を作ることができない。
また、樹脂が詰まってプリントが中断するなどのミスプリントも多く、製品としての信頼性が低いと言わざる負えない状況だ。 こうしたFDM方式の3Dプリンターに課題がある中、はるかに仕上がりが綺麗な光造形方式の低価格モデルが最近注目を集めている。
わずか1年ほどの間で光造形方法を採用する低価格モデルは続々と登場し、今や珍しくないという状況だが、新たに、光造形方法を超える、超高解像度で高速プリント可能な技術が発表された。
本日は新たに登場した3Dプリント技術Heliolithographyとそれを搭載した3DプリンターHelios Oneをご紹介。
新技術Heliolithography(HL)を搭載した3Dプリンター Helios One
画像出所:オレンジメーカー
回転式で光造形よりも早く、滑らかな表面仕上げを実現
今回新たに発表されたのは2011年度設立の3Dプリンターメーカー、オレンジメーカー社が発表した新技術Heliolithographyというものを搭載した3Dプリンターだ。
今、既存の光造形(SLA)技術とFDM技術に置き換わる新たな製法として注目を集めている。現在特許出願中とのことで、あるが、光造形を超える超高解像度を実現し、なおかつミスプリントが無くスピーディにプリントすることができるという。
下記はオレンジメーカーが発表しているHelios Oneのイメージ動画だ。
Helios Oneのイメージ動画
イメージ動画を見る限りだと、DLP製法やプロッター製法などの、従来からあるつり上げ方式の製法に似ているが、Heliolithographyとは一体どのような製法なのだろうか。オレンジメーカーは、このHeliolithography技術について下記のように述べている。
「Heliolithography技術は、紫外線を使用して液体樹脂を固体に固める新技術ですが、SLAとは対照的に、1層ごとにプリントを停止する必要がないため、連続してプリントすることが可能な技術です」
紫外線を照射する点は光造形方式と同様だが、階層ごとにプリントし段を上げるという光造形方式のプリント中断部分を改善したものなのだろうか。
確かに層ごとに中断することが無ければプリント速度はアップするし、FDMほどではないにしろ、光造形にも残る層ごとの積み上げた線が全くなくなるだろう。
回転することで積層の線をなくし、スピーディにプリントする技術
光造形と比べた場合のHeliolithographyの利点
- 層ごとに中断することなく継続的なプリント
- 従来の光造形よりも大きい物体がプリント可能
- 超高解像度
- ミスプリントしない信頼性の高い印刷プロセス
プロのデザイナー、エンジニア、アーティスト向け
残念ながらこのHeliolithography で作られた実際の造形物や、プリント中の動画は公開されていない。その完成度は不明だが、これまでの低価格帯の3Dプリンターよりも早く、はるかに滑らかな仕上がりが可能になれば、新たなモデルとして一気にヒットするかもしれない。
ちなみにメーカーであるオレンジメーカーによるとこのHelios Oneは主にプロのデザイナー、エンジニア、アーティストをターゲットにしているとのことで来年2015年の発売を目指している。
3Dプリンターが低価格化し、一般的なFDM方式の3Dプリンターは1台30万円程度で購入できるため、プロダクトデザインの事務所や中小企業でも導入が進んでいる。
しかし、そうした多くのデザイナーや中小企業から聞くのは、ミスプリントの多さや、故障といった製品自体の性能の悪さだ。
よく言われるのが、プリント時間が長いため、帰宅前にプリントセットし、次の日の朝出社すると、作りかけの状態で停止していたり、プリント中に、造形物がゆがんで失敗するという話が多い。
Helios Oneはこうした既存の低価格3Dプリンターが持つ課題や、使う人たちの不満を解消してくれる可能性があることから、今後の発表が期待できそうだ。
高性能な試作品を再現したいデザイン事務所やアーティストに最適
まとめ 驚異的なスピードで開発が進む3Dプリント技術
Helios Oneは、プロのデザイナーやエンジニアをターゲットにしているため、細かいスペックや価格は未発表だが、1台数十万円はするのではないだろうか。
あくまでもモノづくりの現場やデザインの現場で、高性能な試作品を製造することを目的としている。
しかし、その一方で、技術革新と性能向上はすさまじいスピードで進んでおり、一般家庭向けへの浸透も専門家が予測するよりも早く到来するかもしれない。
1年前に流通している低価格モデルは、MakerbotのモデルかReprap、Cubeシリーズしか見られない状況であったが、次から次に性能が上がり、新たな新機能を搭載した機種が登場している。
今後さらにさまざまな機種が登場するだろうが、どのモデルが生き残るのか、市場を制するのかはいまだ見えない状況だ。
光造形の原理と仕組み、種類についてはこちらをどうぞ
i-MKAERでは光造形3DプリンターForm3+やレーザー焼結3DプリンターFuse 1、Raise3Dシリーズなど多彩な3Dプリンターのノウハウ、販売をご提供しています。ご質問や無料サンプルや無料テストプリントなどお気軽にご相談ください。