Graphene 3D Labとは
次世代素材として幅広い用途への使用が期待されているグラフェン。グラフェン材料はいまだ研究開発段階で実用化には至っていないが、素材研究と同時に3Dプリンターでの使用方法も研究されている。
オンデマンド生産やプロトタイプ生産に欠かすことができない3Dプリンターだが、グラファイト・テクノロジー社が新たにグラフェン素材の3Dプリント材料の研究開発・製造販売を計画している。
以前当サイトでもご紹介させていただいたが、グラファイト・テクノロジー社は3Dプリント材料として新会社Graphene 3D Labを立ち上げている。
Graphen3D labは設立にあたり、グラフェン材料の供給元であるLomiko金属から5万ドルの出資と、グラフェン用材料の独占供給を受けることになっている。
本日はGraphen3D labが発表している自社製品の製品概要やマーケット計画をもとに次世代素材と言われるグラフェン素材の将来の用途やターゲットをご紹介。
グラフェン3Dプリント材料の特長
まずGraphen3D labが研究開発を進める3Dプリンター用のグラフェン材料だが、グラフェンとポリマーを独自技術によって生成する材料。
素材の性能としては、3Dプリント材料として低コストで利用することが可能で、ナノレベルの材料として使用が可能だという。
また、同時にグラフェン本来がもつ4つの特長を持っている。
主な特長は①電気をよく通す、②熱をよく通す、③力学的に強い、④環境にやさしい、という4つで、グラフェンが次世代素材として期待される一番のメリットだ。
グラフェンの特長についてより詳しく知りたい方は下記の記事
をご参照ください。
グラフェンとポリマー素材の複合材料
グラフェン3Dプリント材料の4つの特長
グラフェン3D材料の対応プリンターとは
この素材の画期的な点はグラフェンの特徴的な性質を生かしたまま3Dプリント材料として使用できる点にあるが、対応する3Dプリントタイプとしてはどのような方法を想定しているのだろうか。
Graphen3D labは以下の使用用途を想定している。第一がFDM方法で使用できる名の複合材料としての役割だ。
ちなみにFDM方法とは3Dプリント製法の一般的な造形法の一つで、熱溶解積層法システムとも言われている。
主にABSやPLA、ポリカーボネートなどの熱可塑性樹脂を熱で溶融し、細いノズルから射出して積層していくという製法。
グラフェン3Dプリント材料はこのFDM方式により、熱伝導性や導電性、強力な物性を備えた物体が製造可能になる。第二が複合3D印刷での使用だ。
近年3Dプリント技術の発展とともに、単一素材だけではなく、多種の異なる材料を同時に組み合わせてプリントする技術が確立され始めている。
Graphen3D labはグラフェン材料をほかの素材と組み合わせてプリントできるようにすることで、使用範囲を広めることを狙っている。
グラフェン3Dプリント材料の使用用途とターゲット
グラフェンの特性だけみても実際に実用化されていない限り、なかなかその使用用途を想像することは難しいのではないだろうか。Graphen3D labが想定しているグラフェン3D材料の使用用途は主に以下の用途で考えているようだ。
高性能電化製品の製造
第一が高性能電化製品の製造。グラフェンの特性の第一は優れた導電性と熱伝導性にあり、また同時に折り曲げすることができる材料だ。
最近ではウェアラブルデバイスやスマートフォンでも折り曲げ可能な電化製品が期待されており、3Dプリント用のグラフェン材料はこうした電化製品の製造や試作に力を発揮すると想定できる。
下記はGraphen3D labが打ち出しているイメージ。
科学技術装置、実験での使用
第二の使用用途が科学技術研究所などでの使用だ。実は既にグラフェン材料の一番の消費は研究開発目的で使用されている。
これは実用化されていない現在では当然のことと言えるが、実用化されてからもしばらくは研究開発目的で使用されたり、科学技術装置の製造に使用されることを想定している。
展示会の照明器具・装飾器具の製造
第三の使用用途がデザイナーの使用だ。主な使用目的としては展示会や展覧会などのための照明器具の製造や装飾材料の製造だ。
この分野は以外な感じがすると思われるが、展示会のブース造作に必用な照明器具や、試作用のデモ機の製造には以外にコストがかかり、なおかつオンデマンドで製造する必要がある。
特にデモ機は電化製品の試作器だけではなく、技術やサービスを説明する展示パネルなどにも使われることが多いためだ。
光機能要素機器のオンデマンド生産
第四の使用用途は自動車産業と航空宇宙機産業、軍用などにおける使用だ。この分野では主に光機能要素を持った機器のオンデマンド製造などとのことだ。
グラフェン3Dプリント材料の市場予測
下記は将来的なグラフェンの3Dプリント材料の市場規模だ。
- 第1位:電子機器 2億2000万ドル (約220億円)
- 第2位:自動車 1億9000万ドル (約190億円)
- 第3位:展示会 1億8000万ドル (約180億円)
- 第4位:医療 1億6000万ドル (約160億円)
- 第5位:航空宇宙 1億ドル (約100億円)
- 第6位:科学技術 7000万ドル (約70億円)
- 第7位:軍用 3400万ドル (約34億円)
Graphen3D labの事業展開としても、まずは現在登場しているFDM製法の3Dプリンターに対応できるグラフェン材料を開発販売し販売するというものだ。
次に第二段階として複合材料プリンターに対応する材料の開発とナノ複合レベルに対応できる材料の開発を行うとのこと。
そして将来的には第三段階に電気回路プリントとそれに対応するソフトウェア開発を手掛けることを計画している。
まとめ -グラフェンに力を入れる各国-
グラフェンは2004年に発見されて以来研究開発が行われているが、最近になってようやく少しずつ実用化のめどが立ちつつありそうだ。
最近では中国が特にグラフェンに対する製造ラインに力を入れており、12月26日に新華社によって発表された内容によると、重慶市において単層のグラフェンフィルムの量産化が可能になったという。
発表されたのは重慶市においてグラフェンの技術開発や製品販売を一手に行う産業群「慶グラフェン工業団地」の開設を伝える情報だ。
今後5年間で、グラフェン開発企業20社超、グラフェン消費企業100社、グラフェン開発者100人超を育成し、生産額100億元の国立グラフェン産業モデル拠点を完成させるとのことだ。
また、グラフェンの研究開発を行う企業はGraphen3D lab以外にも、アメリカングラファイト社がウクライナの国立研究機関と取り組み始めている。
アメリカングラファイト社とウクライナの研究機関も素材の実用化だけではなく3Dプリント技術での応用も実用化させる動きに出ている。グラフェンのような画期的な素材は、ある意味ではすべての産業の源流を抑える根本となるもので、一つの素材が与える影響は計り知れないものがある。
日本でも炭素繊維や蜘蛛の糸という画期的な素材があらゆる工業製品の製造に影響を与えている。そうした点からも今後も次世代素材としてグラフェンの動きには注視する必要があるだろう。
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