Googleトレンドに見る低価格3Dプリンターの動向と消費者市場の見通し

加速する3Dプリンターの開発競争と低価格化

今や低価格モデルの3Dプリンターがリリースされない日はないと言っていいほど、毎日さまざま機種が登場している。製法も樹脂を溶かして積層するFDMタイプや、液状の紫外線硬化性樹脂(エポキシ樹脂アクリル樹脂ポリウレタンなど)に紫外線を照射し硬化する光造形のタイプにはじまり、解像度がいいものや、造形スピードが早いもの、巨大なサイズを作れるものなど、その種類は多岐にわたっている。

こうした状況を見てみると、つい1年前に比べて別世界を見ているような印象を受ける。因みに私が初めて3Dプリンターと言われる物を見たのは今から6、7年前だが、その頃はまだ石膏を削り出し大まかなモックアップを作れる程度で、大きさも巨大で工作機械としての捉え方であった。

このような技術的な進歩を見てみると、一般家庭に普及するのも遠い未来ではないのではないかとの錯覚を覚えるが、実際はどのように時代は進んでいくのだろうか。

既に多くのリサーチ会社や、コンサルタント会社、各業界で市場調査や未来の市場規模を予測するレポートが登場している。どの企業のレポートも共通して言えることは10年後の2025年くらいから2040年ぐらいにかけて3Dプリント市場は世界規模で拡大し、消費者向けの3Dプリント市場が占める割合が高まるとの予測だ。

しかし、ここ数ヶ月の各社のリリース状況を見てみるとこのスピードは、各社が分析するよりも早いのではないかとの疑問出てくる。本日は上記のような専門の調査会社やコンサルタント企業ではなく、Googleが提供するサービス、Googleトレンドから、実際の消費者の関心状況と、低価格3Dプリンターの課題、そしてモノづくり全体に与える影響を考察してみたい。

1台5万円からの光造形タイプのオープンソースモデルも登場

集まる低価格3Dプリンターへの注目

まず初めにGoogleトレンドだが、Googleが提供しているサービスの一つで、検索キーワードの推移をグラフ化して見ることができる。言うまでもなくGoogleは世界最大の検索サービスだが、月間の利用者数は10億人を超えている。下記は全世界における検索エンジンのシェアだが、Googleが圧倒的なのがわかる。

そのため、世界最多の利用者数を誇るGoogleの検索キーワードの推移を見ることは、最も人びとが興味関心を持つことにつながるのではないだろうか。下記は3Dプリンターの主要メーカー3社の2005年度以降の推移だ。ストラタシスと3Dsystemsは産業用のハイエンドモデルにおけるトップシェアをほこる企業だ。

一方Makerbotは低価格モデルで世界一のシェアを持つストラタシス傘下の企業になる。2005年から2011年あたりまでは、3社の検索数はほぼ横並びだが、2013年度以降Makerbotが2社を引き離し飛躍的に伸びているのがわかる。

これは3Dプリンター自体が広く認知されるとともに、低価格モデルにこれまで3Dプリンターを持つことができなかった人びとが関心を寄せていることがわかる。

Makerbotは昨年以降、教育機関やデザイン事務所、一部のモノづくり愛好家に普及しており、さまざまな取り組みを行っている。同社が運営する3Dデータの共有サイトthingiverseなども広く普及させることに一役買っているのだろう。

Googleトレンドによる検索数の推移

消費者向けに浸透するまでの道のり

しかし、この傾向だけでは、いまだ消費者向けに浸透しているとは言い難い。むしろ上記で述べたとおり、教育機関や中小企業、デザイン事務所といった、モノづくりになんらかのかたちで携わる人びと向けに浸透が始まっていると考えられる。

そもそもMakerbotの代表的な3Dプリンターレプリケーターの価格はだいたい30万円前後。とうてい一般消費者が手軽に利用できる値段ではない。また、3Dデータに関する取り扱いに関しても今はまだ馴染みがあるわけではない。

こうした価格帯と3Dデータの取り扱い意外に一般ユーザーへの普及までに至らない部分はどのようなポイントがあるのだろうか。普及を促進させる最大のポイント、それは素材の多角化とマルチ素材対応だ。

既にハイエンドモデルでは、マルチ素材対応の機種が登場しているが、消費者向けにこそ、その普及を後押しするキーになるだろう。既に毎日リリースされる各社の開発状況をみても価格競争と基本性能の競争は激しさを増しており、低価格と、解像度、造形スピードは、もはや差別化を見出せないところまできている。

また、一般家庭でさまざまな物を作る目的で使用するためには、複数の素材を使えることが求められるに違いない。これは単なる試作品を作るか、それとも実用品を作れるかという課題にもなっていくだろう。少なくとも今の現状では樹脂ベースのモノしか作れないし、量産品のほうがはるかにクオリティや機能性は高い。

高度な技術を持つ3Dプリントサービスなら別だが、個人の普及には時間がかかる

まとめ -本格的な普及開始は2020年以降か-

このように本格的に消費者向け市場に浸透するまでには、どんなに早くても後数年ほどかかるのではないだろうか。

全く根拠のない感覚的な予測で恐縮だが、今リリースされている光造形タイプの低価格帯が実用化されるのがおそらく来年度中のところからすると、さらに開発が進み、光造形タイプのフルカラーモデルが実用化されるのが、2016年頃だろう。また、現在ハイエンドモデルで登場したマルチ素材対応の低価格帯が実用化されるのがさらにその先と想像してみると、どんなに早くても一般家庭で購入できる数万円程度のマルチ素材や高性能のモデルが登場するのは2020年頃になりそうな感じがする。

それまではしばらく小企業やデザイナーといったある程度専門知識を要する人々での導入が顕著であり、一般家庭向けにありふれた存在になるのは、今少し先だ。

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