エンジニアリングレベルのガラス強化PLAフィラメント登場

3Dプリンターの真価を発揮する鍵、エンジニアリングレベルの材料

3Dプリンターの可能性を広げる一番の核となるものは、製法と材料のクオリティである。従来、ものづくりの現場でプロトタイプを作るための道具に過ぎなかった3Dプリンターが、これほど注目される要因も、精度と材料のクオリティが向上することでもたらされる可能性を見ているからである。

デジタルデータからダイレクトに金型で作られた量産品と遜色がない最終品を作り出すことができれば、製造現場だけではなく、流通に至るまでさまざまな分野に影響を与える。しかし、このダイレクト・デジタル・マニュファクチャリングの完遂は、3Dプリント技術の発展と材料の拡大を待たなければならない。

とりわけ材料では、実際に工業用途で使用することができるレベルの樹脂素材は未だ乏しいのが現状といえる。3Dプリンターが最終品の製造になかなか広がらないのも、完成品の耐久性や強度、耐候性といった機械的特性が高い強化プラスチック、いわゆるエンジニアリングプラスチックと言われる素材が圧倒的に少ないことが要因だといえよう。

エンジニアリングプラスチック通称エンプラと言われるプラスチックは強度や耐熱性に優れ、厳密な基準はないが一般的には100℃以上の環境下においても、高い強度(49MPa以上、2.5GPa以上の曲げ弾性率)を持つものとされている。具体的にはポリアミドポリカーボネートが挙げられるが、こうした素材を高レベルで使用できる3Dプリンターと材料は、極めて限定される(ストラタシス社のFDM 3Dプリンターの記事参照)。

しかし、こうした現状を打開すべく、材料メーカーも新たなフィラメント開発に続々と乗り出している状況だ。本日は新たに途上したエンジニアリンググレードのPLAフィラメント、ガラス配合PLAフィラメントをご紹介。

標準的PLAフィラメントをガラス配合でエンジニアリンググレードに大幅強化

PLAフィラメントABSフィラメントとともに3Dプリンターのフィラメントとして最もオーソドックスな素材といえる。そもそもPLA樹脂自体は、石油由来のABS樹脂素材の代替となるべく開発された比較的新しい素材だ。

ちなみにPLA樹脂とABS樹脂に関しては、「PLA樹脂(ポリ乳酸)の特性と用途 加工と新素材の開発」と「ABS樹脂の特性と用途 加工と代表的プラスチック製品」で詳しくご紹介しているのでそちらを参照していただければと思うが、ここでは3Dプリンター用フィラメントであるPLAフィラメントの性能について簡単にご紹介しよう。

もともとPLA樹脂は植物由来のデンプンなどをベースに開発されたプラスチック素材だが、フィラメントとして使用する場合、さまざまな困難を伴うのが現状だ。PLAの3Dプリントフィラメントは一般的に耐熱性が低く、粘りいわゆる引張り強度などの耐久性が低いのが現状。

その完成品は硬く折り曲げできない。射出成形など金型で使用できるPLA樹脂とは違い、フィラメント状として3Dプリンターで使用するには加工しにくく、造形できる形状も限定される。しかし今回ご紹介するガラス配合のPLAフィラメントは、こうした従来のPLAフィラメントの加工のしにくさ、強度と耐久性の低さという課題を見事に克服している。

今回このガラス充填のPLAフィラメントを開発したのは、40年以上プラスチック分野で経験を持ち、尚且つ3Dプリント技術に10年近い経験を持つフィラメントメーカー3DOM社だ。

通常のPLAフィラメントにガラスを配合することにより、従来のPLAフィラメントの弱点であった引張り強度や衝撃靭性を大幅に強化することに成功している。例えば、一般的なPLAフィラメントの1.3倍の34 J/mの衝撃靱性、1.4倍にあたる57MPaの最大引張強度、1.9倍柔軟性をもつ3.4%の伸び率といった機械的特性を実現することに成功した。

また、PLAフィラメントの造形物の不良とも言える反りなどを解消、PLAフィラメント独特の臭も抑えることに成功した。いわばこれまであるPLAフィラメントとしては最高品質とも言えるクオリティを実現し、同社はエンジニアリンググレードで使用可能だとしている。

3DOM動画

ガラス配合PLAフィラメントスペック

  • フィラメント径:1.75mm、2.85mm
  • 最大引張強度:57MPa、標準的なPLAフィラメントの1.4倍
  • 衝撃靱性:34J/m、標準的なPLAフィラメントの1.3倍
  • 引張伸び率:3.4%、標準的なPLAフィラメントの1.9倍
  • 価格:49USD/1ユニット

強化PLAフィラメントについては「3DプリンターのPLA(ポリ乳酸)フィラメント完全ガイド」で特長やおススメのPLAフィラメントを御紹介していますので、是非ご参照ください。

まとめ デジタル化が進んでも素材と製法が鍵

いくらものづくりの分野にデジタル化が浸透したところで、最終的にはオブジェクト、物体として再現される限り、仕上がりのクオリティがその製品の価値を左右することになる。そのため、極めて当たり前の話だが、ものづくりにおいて、素材とそれを最大限表現する製法技術が最も重要だ。

むしろその二つが伴わない限り、真のデジタルものづくりの革新は起きないだろう。現在の3Dプリンターと、ものづくりのデジタル化を取り巻く環境は、クラウドやデジタルを使用したプラットフォームの開発や普及が先行して進んでいるようだが、材料や製法のクオリティが追いつかない限り、真の価値は発揮されない。

こうした点から言うと、材料とその素材を最大限活かしたクオリティの高い製法が、ますます大きな役割を担うことになるだろう。今後の開発状況や素材の発展に注目したいところだ。

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