GEはレーザー焼結を超える10倍強力な電子ビーム製法を開発

ジェットエンジンの製造に3Dプリント技術を本格利用

3Dプリント技術の利用と研究で最も最先端の企業はGEだ。20年来この技術の利用に取り組んでおり、ジェットエンジンなどのパーツ製造に本格的に使用を開始している。実際に使用されている3Dプリンターは金属粉末をレーザーで焼結するタイプのものだが、新たにこのレーザー焼結法を超える製法を開発した。

その方法では従来のレーザー焼結法では作ることができなかった素材を扱うことが可能で、尚且つレーザー焼結法で作るものより10倍強いパーツを作ることが可能という。

それではGEはどのようなパーツ製造にこの技術を使用するのだろうか。GEが主に3Dプリント技術を使用するパーツはジェットエンジンのパーツだ。

とりわけGEが3Dプリント技術の使用を期待している部分はジェットエンジンのタービン部分。タービンとはジェットエンジンの羽根車の部分で、1枚1枚の羽(タービンブレード)で構成されている。この1枚1枚のタービンブレードを3Dプリンターで作ろうという取り組みだ。

既存のニッケル合金に変わる新素材チタンアルミを実用化する技術

GEがタービンブレードの製造に新技術である電子ビーム銃を使用することを検討しているのは、ボーイングドリームライナーやボーイング747-8に搭載しているジェットエンジンGEnxや、新型のボーイング777Xに搭載されるGE9Xエンジンのタービンブレードだ。

このタービンブレードに使用される材料は通常ニッケル合金が使用されているが、ニッケル合金などの耐熱合金は、高温での強度に優れているという反面、加工が極めて難しい素材になる。

加工が難しい上に、高い寸法精度で量産をする必要があることから、通常は精密鋳造という製法を取られる。精密鋳造については低価格3Dプリンターと鋳造でシルバーアクセサリーが素早く作れる樹脂FireCastという記事でご紹介したが、基本的な原理はシルバーアクセサリーを作る方法と同じだ。このタービンブレードもロストワックス製法という鋳造をとる。

このニッケル合金に変わる素材として注目されているのがチタンアルミという素材だ。チタンアルミはニッケル合金に比べると50%軽く、尚且つ高温での耐熱性が高い。

次世代のタービンブレード素材として注目を集めているが、ニッケル合金のように精密鋳造で作ることが難しく、また製造コストも高いため、実用化に向けての課題が残っている状況だ。しかしGEはこのチタンアルミ素材を使う新たな製法として電子ビーム銃を開発したとのことだ。

GE9Xエンジン

レーザー焼結を超える電子ビーム溶融技術とは

それではこのレーザー焼結を超えるという電子ビーム溶融技術とはどのような製法なのだろうか。この電子ビーム溶融技術はレーザー焼結法と比較した場合、生成できる物体の大きさと強度が圧倒的に異なる。

また、製造するスピードも格段に早くなるという。実際にこのチタンアルミ粉末を溶融して成形した場合、電子ビーム銃では従来のレーザー焼結の4倍厚く、10倍強度が強いパーツを作ることが可能だ。またこの電子ビーム銃では生産性も高く、72時間で8個のタービンブレードをつくることができる。

電子ビームによるデジタル試作

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電子ビーム銃でつくられたタービンブレード(左から順にLEAP、GEnx、GE90、GE9Xのブレード)

電子ビーム銃を使用した実際のEBMプロセス

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この電子ビーム溶融製法はこれまでのレーザー焼結法を遥かに超える製法であり、材料コストが高いチタンアルミの材料消費を抑えてくれて、尚且つそのほかの金属材での使用も可能だ。

また、GEはジェットエンジンのタービンブレード以外での利用も検討している。現在は次世代エンジンと言われるGE9Xの量産に利用する前にGEnxエンジン用に使用する製造テスト行う計画だ。

まとめ

GEはある意味世界で最も革新的な企業だといえる。製造方法の改良と研究に余念がなく、常に新しい製法の開発と実用化に取り組んでいる。

3Dプリンターに始まりレーザー焼結法、以前もご紹介したコールドスプレー技術、そして今回ご紹介した電子ビーム溶融と、全てが自社製品の開発・性能向上と、製造体制の効率化に直結するものだ。

また、GEは製造技術の開発だけではなく、クラウドを通した多くの製品開発でも世界の最先端を行く企業だ。こうしたGEの次々と行う新しい取り組みは、明らかに他の企業とは一線を画していると言える。

常に最先端技術を追い続ける点や、クラウドやインターネットという時代の流れに合わせた取り組みを行う点は、小学校さえ中退になった型にとらわれない創業者エジソンの精神が脈々と受け継がれているのだろう。

1878年にエジソンが小さな実験室を開いて以来成長を続け、今ではあらゆる産業に進出する世界最大のコングロマリットになっているのも、常に最先端技術を追い求め、時代に柔軟に対応していくという二つの行為があるためにほかならない

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