Form2(SLA:光造形) 3Dプリンターならではの特長
Form2の仕組みで、二種類のSLA方式について、そのメリット・デメリットをご紹介しましたが、ここでは、Formlabsが誇る反転SLA方式を採用するForm2 3Dプリンターの特長と強みについてご紹介します。
反転で光造形法を実現するメリットは、低コストで高品質な3Dプリントが実現できるという点がありますが、Form2では、それ以外に独自に開発されたことで、さまざまな特長があります。
Form2の材料と重合プロセス
Form2で使用される材料は紫外線を照射すると固まる光硬化性樹脂です。
樹脂は、炭素と炭素の集まりです。光硬化性樹脂は、UV光にさらされると炭素と炭素が連結して長い“鎖”になります。
これが重合といわれる現象で、連結された長さが長いほど硬くなっていきます。
この鎖と鎖がレーザービームが照射されることで崩壊と重合を繰り返し、どんどん固体化していきます。この硬化は毎秒数ミリ単位で行われるのです。
多彩な材料。3つの要素を組み合わせる
Form2では、次の3つの要素を組み合わせることでさまざまな種類の材料を開発しています。
3つの要素とは、第一が、樹脂を構成する核となる要素、さまざまな長さの鎖(モノマー・オリゴマーと呼ばれる)です。
第二が、光開始剤です。この光開始剤は、紫外線にさらされたときに、化学反応を起こさせる分子です。
第三が添加剤です。添加剤は顔料や染料など、視覚的な要素を付与する添加剤です。
この3種類の成分を組み合わせることで、透明、不透明、カラーバリエーション、柔軟性、耐熱性、剛性などさまざまな特性を表現することに成功しています。
等方性を持つ
3Dプリンターの造形精度を図る基準としてあげられるのが等方性と異方性です。
等方性とは、物理的な性質が方向によって変わらないことを指します。一方、異方性とは、物理的な性質が方向によって変わることを指します。
なぜ3Dプリンターの造形物でこの基準が言われるかというと、3Dプリントが基本的には積み重ねて物体にする技術だからです。
一番わかりやすいのがFDM(熱溶解積層法)で、フィラメント状の熱可塑性樹脂を加熱して柔らかくし、積み重ねて物体にします。
同じように光造形法も、紫外線を照射して一層ずつ硬化させて積み重ねていきます。
この積み重ねていくという事から、3Dプリントされた造形物は、縦の方向、すなわちZ軸の剛性や破断点が異なるというように言われます。
しかしForm2のようなSLA方式では、積層プロセスの過程において、前の層と、次の層の間に共有結合する層、いわゆる「グリーン状態」という状態が生まれる。
この共有結合によって、次の層の重合では、前の層の分子を含むことになり分子レベルでは、化学結合の点でZ軸とXY平面との間に、ほとんど全く相違がないことになる。
この等方性をもつことで、Form2で作られた物体は、機械的にも光学的にも優れた特性を持ち、機能性テストや透明なクリアレジンにおける内部の可視化などが実現できます。
二次硬化で更に強化できる
Form2では、材料の種類によって二次硬化することで本来の物性を表現し更に強化することができます。
上記の等方性の部分でご紹介しましたが、Form2では、硬化が終了した状態だと、層と層の間が「グリーン状態」といわれる共有結合状態になっています。
この共有結合状態とは、重合反応が完了していない状態のことを指し、二次硬化することで、更に強化され、機械的特性が発揮されます。
主に、エンジニアリング用レジンである、タフ(ABSライク)や、デュラブル(PPライク)、ハイテンプ(高耐熱)、フレキシブル(ゴムライク)、ジュエリー鋳造用のキャスタブル、歯科用のデンタルなどのレジンは、専用のFormCureなどを使用し二次硬化することで、強度や物性が大きく高まります。
例えばフレキシブルなどは二次硬化前と硬化後では強度が2倍になります。
Form2 デスクトップSLA 3Dプリンターの強み
Form2のような反転SLA方式の3Dプリンターにはさまざまなメリットがあります。その機能を知り、さまざまな材料を使いこなすことで、1台で高品質、多様な用途に使用することができます。
Form2の強み① 高精彩・滑らかな表面仕上げ
先の等方性の部分でもご紹介したように、SLA方式の3Dプリンターでは、層と層の間の密着が、分子レベルで共有する層が設けられていることから、その表面は驚くほど滑らかです。
また積層ピッチからも、他の製法の3Dプリンターに比べて精密に表現できます。
一般的にFDM(熱溶解積層法)やSLS(レーザー燒結法)では100ミクロンが主流ですが、Form2では、25ミクロンから100ミクロンで設定可能です。
また、同じ100ミクロンでも、元の材料の形状が異なるため、その仕上がりは異なります。
例えば、FDM(熱溶解積層法)では、フィラメントと呼ばれる糸状の熱可塑性樹脂を使用するため、層と層の間の積層跡が少なからず残ります。
またSLS(レーザー燒結法)では、金属やナイロンなど材料がパウダー状であることから、その表面は粉末のざらざらした粗さが少なからず残ります。
一方、Form2では、液体状の光硬化性樹脂がベースであること、更には光硬化という層間共有ができることから、驚くほど高精彩で滑らかな表面仕上げができます。
Form2の強み② 驚きの寸法精度。95%で240μm以内の正確さ
Form2がSLA方式を採用していることのもう一つのメリットが驚きの寸法精度です。
Form2では、光硬化性樹脂に紫外線レーザービームを照射して物体にしていきますが、その特性上、樹脂の温度が高温にならないため、プラスチック造形で課題となる熱収縮の影響をうけません。
例えばFDM(熱溶解積層法)の3Dプリンターでは、熱可塑性樹脂を使用するため、熱収縮の影響を受け、造形モデルの形状や大きさ、扱う材料によって“反り”などの変形が起きる可能性があります。
FDM(熱溶解積層法)高温で樹脂を溶かし、自然に冷却してくっつけ固めていく技術ですが、その場合、冷却されることで収縮してしまう熱収縮がおきます。
熱収縮によって造形モデルが小さくなり、引っ張られ反ってしまう不具合が“反り”です。Form2のようなSLA 3Dプリンターはこの“反り”がありません。
これは、データ通りの寸法精度が求められるエンジニアリング用途や、鋳造用ワックスモデルとして使用するキャスタブルレジンでは最適な効果を発揮します。
最近のForm2のテストでは、プリントの95%が設計寸法の240μm以内で測定されました。
Form2の強み③ デザインの高い自由度、複雑な形状や中空構造も
Form2のメリットの一つが、デザインの圧倒的な自由度です。
先の二つの特長、高精彩、高い寸法精度によって、どのような複雑で微細な形状もForm2ならば3Dデータから正確に表現することが可能です。
例えば、ジュエリーなどには、非常に細かい造形が求められますが、Form2ではキャスタブルレジンを使って50ミクロンレベルで緻密に表現することができます。
これは手作業などで表現することが困難なデザインも実現することができます。
また、切削加工などでは加工ができない細かい中空構造も、3Dデータから直接プリントすることができます。
こうしたデザインの高い自由度によって、Form2では、さまざまな作り手のアイデアや創造を形にすることができます。
Form2の強み④ 製品開発の効果。プロトタイプの幅を拡大
Form2の高い精度と滑らかな表面仕上げは、製品開発の分野でも大きなメリットをもたらします。
特にプロトタイプ開発の分野でその真価は発揮されます。製品開発では、コンセプト立案ののち、ラフデザイン、モックアップなどのプロトタイプで検証を行い、修正し、最終的な形状に落とし込みます。
このプロトタイプの作製は、単なる形状のみの外観から、カラーや質感の検討、更には機能性まで、つくる製品の種類に応じて、幅広い検証項目があります。
多くの製品が、金型量産に入る前に、この検証に多くの時間とコストをつかっており、品質からマーケティングまで関わる重要な要素です。
Form2の強み⑤ リードタイムを圧倒的に短縮
Form2では、高い寸法精度や精密な仕上がりに加え、幅広いエンジニアリング用のマテリアルをそろえていることから、設計データから最短で数時間、アッセンブルパーツなども数日でプロトタイプを作ることが可能です。
また、Form2のマテリアルはプリント後の後加工も優れており、研摩や塗装を施すことで、外観まで忠実に再現することができます。
こうしたForm2の性能は、切削加工や他のデスクトップ3Dプリンターなどでは得られないメリットとして、製品開発のリードタイムやコスト削減に役立ちます。
例えば、切削加工などを外注する場合には、内容によって異なりますが、大体短くても1週間から2週間、場合によってはそれ以上の期間がかかります。
しかし、Form2であれば、細かい修正では数時間から1日程度で、またバリエーションデザインの同時プリントなど、柔軟な対応ができるのです。これは開発速度を高め、コスト削減にもつながります。
Form2の強み⑥ コスト削減効果。最大90%までコスト削減
Form2を使用することで、プロトタイプ開発にかかるコスト削減効果は、最大90%以上も達成することができます。
例えば、切削加工で外注をする場合には、形状や大きさなどによって異なりますが、数万円~数十万円の費用がかかります。
この場合、加工費に加えて材料費もブロック状の材料を削り出すため、無駄な費用も掛かります。
また、プロトタイプだけを考えた場合、工業用のSLAプリンターは、約1千万円近いコストがかかり、訓練を受けた技術者とサービス契約が必要です。
しかし、Form2など、デスクトップタイプのSLAは、省スペースで場所もとらず、工業用システムと同等レベルの品質と機能を提供し、より安価で尚且つ簡単な操作で実現できます。
こうした外注費、メンテナンスや、機械の減価償却、教育費、人件費などを考慮すると50-90%のコスト削減が可能です。
Form2 デスクトップSLA 3Dプリンターの注意点
Form2の造形では、SLA 3Dプリンターならではの注意点があります。
光造形3Dプリンターは、液体樹脂を使用し、ビルド・プラットフォームに硬化させて1層ずつくっつけることから、ビルド・プラットフォームにくっつきやすいプリント方向でソフトウェアの設定を行う必要があります。
また、造形後は、ビルド・プラットフォームから余分な液体樹脂が垂れてくるため、光路用窓の管理など注意が必要です。
最適なプリント方向やソフトウェア設定については
⇒Form2の使い方 ソフトウェア編をご参照ください。
ビルド・プラットフォームの管理や液体樹脂の管理など注意点については
⇒Form2の使い方 クリーニング編をご参照ください。
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