ミスプリント・造形精度の低下の原因とは?
Form2では、ミスプリントや、造形精度の低下が起きた場合の原因のひとつとして、レジンタンクの状態の悪化があげられます。
レジンタンクが汚れていたり、長期間の使用によって消耗していると、レーザービームが正確に照射されず、ミスプリントや、造形精度が低下します。
つねに高品質で安定した造形を実現するためには、レジンタンクの定期的なチェックが必要です。
まずはレジンタンクの状態を知る
ミスプリントや造形精度の低下が見られたらまずは、レジンタンクの状態をチェックしましょう。
レジンタンクの状態をチェックするには、仕上げキットに含まれているスクレイパーを使用してレジンタンク内の樹脂をこすり状態を確認します。
更に、正確に状態を確認するためには、レジンタンクを取り外して透明アクリル窓に指紋、埃、汚れ、傷、曇りなどがないかチェックします。
クリーニングか交換か
レジンタンクの状態によって、クリーニングか交換か対応を決めます。
汚れている場合は、アクリルクリーナーで透明アクリル窓を綺麗にクリーニングします。
一方、摩耗や傷がついている場合は、その消耗状態を確認し、交換が必要かの判断をします。
レジンタンクの取り外し・交換方法
レジンタンクを確認したい場合や、新しいレジンタンクへ交換を行う場合の取り外し方法についてご紹介します。
※レジンタンクの取り外し、交換を行う前に、必ず綺麗な手袋を装着してから作業してください。レジンタンクに指紋が付着するのを防ぎます。
1.ビルド・プラットフォームを取り外す
まず初めに、ビルド・プラットフォームを取り外します。レジンタンクを先に取りはずしてしまうと、レーザービームが照射される光学窓がむき出しの状態になります。
その状態でビルド・プラットフォームがついていると、ビルド・プラットフォームに付着した余分な樹脂が落ちる可能性があります。
光学窓に余分な樹脂が付着すると、レーザービームが正しく照射されず、正確なプリントが出来なくなります。必ず、ビルド・プラットフォームを取り外してからレジンタンクの交換を行いましょう。
2. ワイパー(リコーター)を取り外す
まず初めにワイパー(リコーター)を取り外します。ワイパー(リコーター)は正面に向かって引き出し、ワイパーマウントから取り外します。そのままレジンタンクの上においてください。
3.レジンタンクをとりはずす
次に、レジンタンクに専用のプラスチック製の蓋をかぶせ、レジンタンクを多います。そしてレジンタンクの前面タブを持ち、静かに引っ張ってForm2のタンクキャリアから取り外します。
4.残った樹脂を移してろ過する
レジンタンク内に余った余分な樹脂を、別の容器に移します。余った樹脂を再度使用する場合にはろ過して余分なゴミを取り除いたのちに新しいレジンタンクに入れて使用します。
5.古いレジンタンクを捨てる方法
レジンタンクに余った樹脂はペーパータオルを使用して、ふき取ります。更にレジンタンクを交換する場合には、日光やUV光などがあたる場所に置き、硬化させて乾燥しレジンタンクを処分します。
※液体樹脂の状態で排水管に流さないでください。
レジンタンクをクリーニングする
汚れをクリーニングする部分はレジンタンクの裏側のアクリルタンク窓の部分です。
レジンタンクの下(つまり裏側)からレーザービームがあたるため、この部分が埃や指紋などで汚れていると正確な造形が出来ません。
清掃するには別売りのアクリルクリーナーNOVUS No.1 Plastic Clean and Shineやマイクロファイバー布などで綺麗に汚れをぬぐいます。
1.レジンタンクを置く
まずは樹脂などを取り除いたら、レジンタンクを反対にしておきます。その際、下に汚れてもいいようにペーパータオルなどを敷きましょう。
2.アクリルタンク窓を清掃する
つぎに、アクリルクリーナーを2~3回吹き付け、マイクロファイバーの布で綺麗に汚れをふき取ります。
※注意点
造形モデルを洗浄するIPA(イソプロピルアルコール)を使用しないでください。IPAはアクリルタンクの窓に亀裂を発生させ、樹脂がこぼれたり、タンクやプリンタに損傷を与える可能性があります。
汚れが十分に除去できるまで丁寧にクリーニングします。
レジンタンクが消耗していた場合
まず初めに、Form2のレジンタンクは消耗品です。レジンタンクの下部からレーザービームが照射され紫外線硬化性樹脂が固まります。
そのため、長期間使用することでレーザービームが何度もタンクの底にあたり、摩耗し消耗します。
ここでは、レジンタンクの消耗するパターンをご紹介するとともに、交換の目安や手入れの方法をご紹介します。
レジンタンクの消耗とは
Form2の造形を高品質に保つ方法の一つが、レジンタンクの交換です。
Form2では、レジンタンクの下にある基幹部分から、紫外線レーザービームがガルバノミラーで反射されレジンタンクの液体樹脂に照射され、硬化していきます。
そのため、繰り返し紫外線レーザービームがあたることでレジンタンクの内面を覆っているシリコンコーティングが溶けて白濁してきます。
この白濁は汚れと同じで、その部分だけレーザービームがしっかりと当たらず、ミスプリントが起きる可能性があります。
このレジンタンクの消耗は白濁なためわかりにくく、透明なスタンダードのクリアレジンでは見つけやすいですが、色付きの樹脂ではわかりにくく定期的にチェックしましょう。
レジンタンクの消耗によって、ビルド・プラットフォームへのくっつきが悪くなったり、ミスプリントが起きる場合には、レジンタンクを交換することで、Form2本来の高品質を保つことができます。
2種類のレジンタンク。消耗レベルが異なる
Formlabsでは、Form2専用に2種類のレジンタンクがあります。通常のレジンタンクと、耐久性が強化されたレジンタンクLT(別売り)です。それぞれに応じて、消耗のパターンなどが異なります。
レジンタンク(通常版)
通常のレジンタンクは、紫外線レーザービームが照射される部分はアクリル製と弾性層の二重の層で構成されています。
また、周りの部分は琥珀色のポリカーボネート製です。
通常のレジンタンクは約1000~3000層のレーザービームがあたると摩耗し、交換が必要になります。
※GrayPro、Rigidレジンとは互換性がありません。
レジンタンクLT(強化版)
一方レジンタンクLTは、通常のレジンタンクとは違い、レーザービームが照射されるアクリル製の窓に加え、フィルムコーティングされた弾性層で構成されています。
このフィルムコーティングによって、通常のレジンタンクよりも耐久性、耐薬品性が強化10倍近く長持ちします。約10000~30000層分のレーザービームがあたると摩耗し、交換が必要になります。
※この層の数は積層ピッチの数などによっても異なります。
このタンクは大量生産環境での印刷用に設計されており、一部のFormlabs樹脂ではタンク寿命が長くなります。
樹脂タンクLTは、以下の材料と互換性があります:
必須: Grey Pro、Rigid
互換性:スタンダードレジン、歯科用樹脂、タフレジン、デュラブルレジン、フレキシブルレジン、ハイテンプレジン、キャスタブルレジン
レジンタンクの消耗パターン
レジンタンクの消耗パターンは通常のレジンタンク、強化されたレジンタンクLTでそれぞれ異なります。ここでは交換の目安となる消耗具合についてご紹介します。
レジンタンク(通常版)の消耗パターン
レジンタンク(通常版)の消耗パターンは、使用頻度に応じて見え方が異なります。ここでは代表的な摩耗パターンをご紹介します。
消耗無しの状態
消耗が無い状態では、キズや曇り、穴、くぼみなどはなく、透明で綺麗な状態です。まれに微細なキズなどがあることがあります。
曇り
Form2のレジンタンクは長期間使用していると、紫外線レーザービームによってシリコンコーティングが剥げて、白濁して曇ります。この曇りはレベルに応じて、3段階に分けられます。
① 低レベルの曇り
低レベルの曇りは、弾性層に若干の半透明の曇りです。この低レベルの曇りは、肉眼で見極めるのは難しいです。
また、低レベルの曇りでは積層ピッチの大きいプリントにはあまり影響しませんが、より細かい積層ピッチでのプリントには精度とプリント品質に影響を与えます。
② 中レベルの曇り
中レベルの曇りは、肉眼で容易に確認することが可能です。このレベルで曇りが出現した場合には、プリント精度に影響するためレジンタンクの交換が必要です。
もしくは、摩耗していないエリアでプリントする必要があります。
③ 高レベルの曇り
高レベルの曇りも、容易に肉眼で見ることができます。このレベルの曇りは、プリント精度を著しく低下させ、ミスプリントを引き起こす可能性があります。
この場合は、レジンタンクを交換するか、摩耗していないエリアでプリントする必要があります。
消耗の原因:レーザービームの照射によるシリコンコーティングの剥げ
キズ、凹凸、穴、切れ目
レジンタンクに傷がついたり、くぼみや穴などの凹凸、キズなどがある場合にはレジンタンクの交換が必要です。
紫外線レーザービームが適切に照射されず、弾性層部分に照射されて更に摩耗を早めます。
またビルド・プラットフォームに当たらずに樹脂を硬化させるため、白いカスが樹脂の中にできる可能性があります。
これによりミスプリントや樹脂の劣化、レジンタンクの更なる落下を早める為、レジンタンクの交換が必要です。
消耗の原因:こすり落とすなど弾性層に過度の力が加わる。ミスプリントによる造形モデルの落下
レジンタンクLTの消耗パターン
レジンタンクLTの消耗パターンは、通常のレジンタンクよりも強化されているため、コーティングの消耗による曇りは現れません。
消耗無しの状態
消耗が無い状態では、キズや曇り、穴、くぼみなどはなく、透明で綺麗な状態です。まれに微細なキズなどがあることがあります。
凹凸・穴・くぼみ
レジンタンクLTに傷がついたり、くぼみや穴などの凹凸、キズなどがある場合にはレジンタンクLTの交換が必要です。
紫外線レーザービームが適切に照射されず、弾性層部分に照射されて更に摩耗を早めます。またビルド・プラットフォームに当たらずに樹脂を硬化させるため、白いカスが樹脂の中にできる可能性があります。
これによりミスプリントや樹脂の劣化、レジンタンクLTの更なる落下を早める為、レジンタンクLTの交換が必要です。
消耗の原因:こすり落とすなど弾性層に過度の力が加わる。ミスプリントによる造形モデルの落下
キズ
レジンタンクLTに傷がついた場合には、キズの程度に応じて交換を決めます。わずかなキズであれば、プリント品質や精度に影響を与えないため問題ありません。
しかし、大きな傷などの場合にはレジンタンクを交換する必要があります。
レジンタンクを長く使用するには
このレジンタンクの摩耗はレーザービームが繰り返しあたることで起きる消耗で、レーザーがあたる回数によって消耗レベルは異なります。
また積層ピッチによってもレーザーを照射する回数が変わるため、レジンタンクの消耗具合が変わります。
例えば、0.1mmの積層ピッチから0.05mmの積層ピッチに変更した場合、レーザーがあたる回数は単純計算で倍になるため、レジンタンクの消耗も早まります。
更に、Fom2は、樹脂の種類によってもレーザーの照射の仕方を変えるため、樹脂の種類によってはレジンタンクの消耗が早まります。このレジンタンクの消耗は作るモデルの形状によっても消耗具合も異なります。
レジンタンクをなるべく長期間使用するためには、プリントする位置をこまめに変更するという方法もあります。
プリントする場所をビルド・プラットフォームの真ん中や左端、右端など、プリントの効率性とレジンタンクの消耗具合を見ながら、バランスよく使用することをおススメします。
まとめ
Form2本体の中において、レジンタンクは直接レーザービームが照射され、樹脂を最適な状態に保ってくれる核ともなる部分です。
そのためこのレジンタンクをいかに最適な状態に保つかによって、造形精度や安定性は大きく異なってきます。
そして定期的にレジンタンクの状態をチェックし、よりクリーンな状態にすることで安定して長く高品質な造形を保つことができます。
ちょっとでも精度がおかしいと感じた場合や、ミスプリントが起きた場合などは、レジンタンクの状態を確認してみましょう。
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