フォードとCarbon3Dプリンターの使用実績。自動車の最終パーツ製造の可能性

フォードとCarbon3Dプリンターをつなぐアラン・ムーリー氏

先日Carbon3Dプリンターの使用実績という記事で、ハリウッド映画の特殊加工会社で使用された事例をご紹介したが、今回新たにフォードで使用された実績が公開された。フォードは過去にも何度がご紹介したが、プロトタイプの試作に3Dプリンターを盛んに使用している企業の一つになる。

また3Dプリンターをさまざまな用途で使用し、単なるプロトタイプ製造にとどまらずキャンペーンなど多角的に使用する企業としても有名だ。そのフォードだが、今回Carbon3Dプリンターを使って驚くべき取り組みを開始し始めている。Carbon3Dプリンターは、度々ご紹介してきたが、従来の光造形は、Formlabs社のForm2など熱硬化性樹脂の代表でもある液体のエポキシ樹脂アクリル樹脂、更にはポリウレタンなどをベースにした紫外線硬化性樹脂に紫外線を照射し硬化させるが、新たな光造形方法CLIP製法によって3Dプリンターのクオリティに革命を与える企業として注目されている。

オートデスクが買収し、本格的な量産体制を整えつつあるが、フォードで使用されたCarbon3Dプリンターは量産前のプレスリリースモデルだという。ちなみに、Carbon3Dプリンターとフォードの縁は実は深く、フォードの元CEOで経営立て直しの功労者とされるアラン・ムーリー氏がCarbon3Dプリンターのディレクターとして参加しているのだ。

アラン・ムーリー氏は2014年からGoogleの取締役に就任しているが、同時にCarbon3Dプリンターの取締役でもあるわけだ。このかつてのフォードの「英雄」とも言える伝説的人物がCarbon3Dプリンターの現役員にもなっているつながりから現在のフォードがCarbon3Dプリンターを使用していてもなんの不思議もない。

そこではプロトタイプでCarbon3Dプリンターを使用するといった使用方法だけではなく、将来の自動車製造を変える開発を行っている。

実際の車両で使用されるものに非常に近い特性を有す

それではフォードはCarbon3Dプリンターをどのように使用しているのだろうか。Carbon3Dプリンターの性能はこれまでのどの3Dプリンターよりも高速で物体にもよるが25倍から100倍のスピードで製造することができる。また液体樹脂の内部でそのまま造形するCLIP製法により、そのなめらかさは金型の仕上がりに匹敵すると言われるほどだ。

そんなCarbon3Dプリンターだが、フォードは実際の車両に搭載するパーツの製造にCarbon3Dプリンターを使用したという。実はその使用は昨年の12月にさかのぼっており、将来のかれらの製品のプロトタイプだけではなく、現在の車両に搭載するパーツにも使用されてきたとのことだ。

実際に使用されたのは彼らが開発する電気自動車FOCUS用のパーツで、配線を保護するグロメットをCarbon3Dプリンターで製造している。ちなみにグロメットとは、電気の配線を通す際に、筐体に開けた穴で電源ケーブルが傷つかないための電源ケーブル保護の樹脂製の管のこと。

グロメットを装着しないで配線を通すと、自動車の振動などによってケーブルが傷つき、最悪の場合ショートしたり火災になる可能性がある。そのためグロメットは通常ゴムなどの素材が使用されるが、Carbon3Dプリンターで造形したグロメットはエラストマー素材の最終品に極めて近い特性を示しているという。また従来使用していた3Dプリンターと比べ3倍の速度で製造することができたという。

まとめ 最終品として使用できる独自素材を共同開発

このフォードとCarbon3Dプリンターの取り組みは、単なる試作品の製造を示すものではない。それは自動車の製造自体に大きな影響を与える可能性を示している。現在自動車のパーツには、高度な耐久性が要求されるエンジニアリングプラスチックが使用され、強度や耐久性、耐熱性などその機械的特性は十分なものでなければならない。

そのような機械的特性を有す3Dプリンターはハイエンドモデルの一部のラインナップのみ。しかし、Carbon3Dプリンターでそれと同等の、あるいは金型で高密度で作られるエンプラと同等のレベルが発揮することができれば、自動車製造は大幅に効率化され、製品開発のスピードも飛躍的に進む。

現在フォードはCarbon3Dプリンターで使用することができる多数の新素材を独自開発している状況だという。その中には、ナノレベルで強化され、最終的には実際の車両でそのまま使用することができる電気的・熱的特性や伝導性のある樹脂も含まれる。

今後Carbon3Dプリンターがフォードと開発するように、最終パーツで使用することができる機械的特性を持つ新材料を開発すれば、もはや3Dプリンターはプロトタイプのための機械ではなく、カスタマイズ性とクオリティ、生産スピードを備えた新たなる製造マシーンとして絶大な影響を与えるようになるだろう。Carbon3Dプリンターの開発からはますます目が離せなさそうだ。

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