25年の歴史を持つフォードの3Dプリント技術
フォード・モーターはアメリカのビッグスリーの一つとして、かつては世界の自動車業界を牽引したトップ企業だ。
かつてその大量生産体制で一躍有名になり、20世紀の産業史には欠かすことができない企業でもある。
今からちょうど100年前の1913年に自動車の組み立て工程にベルトコンベアを初めて導入し、流れ作業に切り替えた生産体制が話題となった。
その大量生産の代名詞ともいえるT型フォードはあまりにも有名だ。
そんなかつての大量生産体制を体現するフォードだが、3Dプリント技術との関わりは古い。
1980年代の3Dプリント技術の発明にも関わって以来、1988年に生産体制に導入してから約25年間、パーツ製造に取り入れている。
今では従来の試作品製造だけではなく、様々な部品製造にも使用されている。
フォードが3Dプリンターで製造するパーツ類や試作品は車種によって異なるが、エンジンカバー、ローターサポート、トランスミッションケース、ダンバーハウジング、エンドカバー、ブレーキローターなどのパーツ類だ。
Fordマスタングのエンジン
パーツの新開発で数百万ドルのコストカット
自動車の組み立てに使用されるパーツは様々なものがある。
自動車自体の燃費向上や耐久性向上などトータルとしての性能は、個々のパーツの性能が大きく影響するのだ。
そのため新製品開発には多くのパーツ類の改良も伴う非常に膨大な取り組みで、コストやそれにかかる時間も膨大なものになる。
フォードはこのパーツの改良や新規開発に3Dプリンターを導入することで大幅なコスト削減とリードタイムの短縮を実現している。
フォードは上記に挙げたように様々なパーツ類の試作品や製造に3Dプリンターを使用しているが、最も複雑なエンジン部品と言われるインテークマニホールドの試作品製造でその効果を発揮している。
インテークマニホールドとは簡単に言うとエンジンを燃焼させる部分に空気を導入する管のことを言う。
自動車などのガソリンエンジンでは最も重要なパーツの一つである。例えばインテークマニホールドを通じてブレーキブースターや排出ガス対策装置が起動するため、自動車の様々な機能を担う動力源のような位置づけにある。
フォードはこのインテークマニホールドの試作品製造に3Dプリンターを取り入れることによって、リードタイムを4ヶ月からわずか4日間に短縮することが可能になったという。
また試作品製造にかかるコストも従来は一つのプロトタイプ製造に50万ドル(約5,000万円)のコストが発生していたが、3Dプリンターで製造する場合には3000ドル(約30万円)に抑えることが可能になった。
インテークマニホールドの例は3Dプリントを導入した場合のもっとも効果が発揮された実例だが、トータルで数百万ドルのコスト削減につながっている。
こうしたパーツ類の試作製造により、従来に比べてはるかに短い時間と安いコストで製品開発に取り組むことが可能になっているのだ。結果として燃費向上や重量の最適化をもたらし、自動車としての性能向上につながるだけではなく、製品開発にかける人員の増加でより優れた新製品の開発が可能になる。
まさに3DCADから製造することのメリットを生かし切った導入と言える。簡単に言うと製品開発の場において、いちいち異なる金型を製造するためのコストや時間をかけることなく、データを変更することで迅速に設計を修正することができるためだ。
まとめ -3Dプリンターを導入する本当のメリット-
なぜ3Dプリンターは次の産業革命と言われているのだろうか。
「3Dデータがあれば誰でもモノを作ることができる」そんな単純な理由から次の産業革命と言われているのではないことは間違いない。
確かに、3Dプリンターの性能向上はものづくりに参加する人の門戸を大きく開き、パーソナル・ファブリケーションを可能にし始めている。
しかし次の産業革命といわれる本当の所以は、そのような限定的な部分を言っているのではない。
3Dプリント技術の本当の価値は、製造プロセスを構造的に変化させてしまう機能にある。また製造プロセスだけではなく、原料調達から消費者の手に届く一連の流れ、すなわちサプライチェーンの構造を変化させてしまう機能にあるだろう。
3Dデータ、インターネット、3Dプリンターという三つのデジタルテクノロジーは従来の製造プロセスを変えてしまうことで、大量生産体制を行ってきたメーカーにはコスト削減とスピード向上という多大な恩恵を与えることが可能になる。
また小規模メーカーにとっても従来よりも比較にならないほど安いコストと時間で新製品開発に取り組むことが可能になる。
両社に共通することは、3Dプリント技術は単なるツールにすぎず、肝心な点はもっとよりよい製品が作れるという点だ。
そのため、簡単に作れるから誰でも参加できるという考えは間違っているし、常に消費者目線、よりよいクオリティを目指す心が最も重要だ。
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