GEのFirstbuildが巨大な家電製品のハッカソンを開催
製品開発の新たな拠点として登場しつつあるマイクロファクトリ。このマイクロファクトリは単なる工場ではなく、インターネットが普及したアフターインターネット時代の新たな製品開発の手法だ。この手法は国境に関係なく優れた製品開発のアイデアを集約することができる上、それを現実の世界でカタチにしようという画期的な手法。
クラウド上で製品のデザインである3Dデータと、機能に関するアプリケーションのプログラムデータを共有し、リアルタイムで改良が進められる。そしてマイクロファクトリはこうして改良された製品データを、実際にリアルな物体にして検証しようという役割を果たす。これこそバーチャルとリアルの融合であり、これまでの製品開発とは全く異なるアプローチだといえる。
そんなマイクロファクトリとクラウドコミュニティの製品開発を行う代表的な取り組みがGEのFirstbuildだ。家電製品に焦点を絞って行われるマイクロファクトリで、自動車のクラウドコミュニティ、ローカルモーターズのエンジニア、デザイナーが参加して始まった。
そしてFirstbuildの設備を担うのは世界最大の3Dプリンターメーカーストラタシス。昨年9月に参加パートナーシップを締結して以来、カラーマルチ素材の高性能3Dプリンター、Objet500 Connex3を導入、コミュニティが作り出す製品の具現化を支えている。そんな新たな時代の製品開発の拠点とも言えるFirstbuildが新たにIOT時代の家電製品に関する巨大なハッカソンを開催した。
そこではメーカー、デザイナー、エンジニアからなる200以上ものチームが参加。新たな製品開発の取り組みをご紹介。
GEの家電製品をハッキングしインターネット化
今回開催されたGEの家電製品ハッカソンのテーマは、未来の家というコンセプトの元、アプリケーションやハンズフリーでコントロールできる家電製品を作り出すものだ。ちなみにハッカソンとは、ソフトウェア開発の分野においてプログラマーやデザイナー、ユーザインタフェース設計者、プロジェクトマネージャらが集中的に共同作業をする開発プロジェクトのイベントのこと。
これまではソフトウェアアプリケーションの分野で使用されていた用語だが、電子機器の機能をアプリケーションソフトウェアが担う時代では、もはや家電製品の開発でも主体的な役割を発揮しつつある。すでに述べたとおり今回のGEの家電ハッカソンでは、メーカー、エンジニア、デザイナーなど200以上ものチームが参加。
33時間の中で画期的な製品を開発したチームには賞金6万ドル(約720万円)が授与される。また、受賞を決定する審査員メンバーはアメリカのそうそうたるテクノロジー企業が揃う。GEのFirstbuilメンバーはもちろんのこと、アメリカの半導体メーカーの雄Atmel、テキサス・インスツルメンツ、ルネサスが参加。さらには電話会社から始まったコングロマリットAT&T、世界第3位の大手航空会社デルタなどだ。
参加した200以上ものチームはFirstbuildに配備された最新の3Dプリンター、レーザーカッター、ウォータージェット、CNC加工マシーンなどを使用してGEの家電製品をハッキングした発明品を作り出すことができる。
わずか33時間で30ものIOT製品が登場
この家電製品のハッカソンでは、GEのすでにある家電製品を自由に改良し、ArduinoやセンサーなどアプリケーションでコントロールできるIOT製品が続々と登場した。合計で30以上もの製品が33時間で開発されたが、上位3位をご紹介しよう。
第一位はGEのオーブンをベースにコーヒー豆の専門焙煎機能が備えられた製品が選出された。Arduinoとアプリケーションを使用しコーヒー豆を専門焙煎するための機能と温度を正確にコントロール。オーブンで高級なコーヒーマシンで作られるのと同等の豆を自家焙煎することができる。
第二位に選ばれたのは、スマートフォンやタブレット端末の音声コントロールをつかった水のろ過システムだ。こちらの開発ではGEの冷蔵庫のディスペンサーをハッキング。未来の家電製品は音声でさまざまな機能がコントロールできるかもしれない。
そして第三位はアメリカではお馴染みの調理器具、クロックポッドを改良した家電製品だ。クロックポットはスロークッカーとも言われる食材をいれておくだけで料理ができるという便利家電。このクロックポットを無線LANでリモートコントロールし、調理過程を監視する機能が取り付けられた。
まとめ 巨大なコミュニティが生み出す製品開発の可能性
今回GEが実施したこの取り組みは、わずか33時間という短い時間ながら30ものプロダクトが登場した。短時間であることからその機能や仕上がりは限定的であるが、コミュニティが作り出す新たなカタチのものづくりとして注目に値する。GEはかねてから、コミュニティによる製品開発に盛んに取り組んでいるが、今回のこの家電製品ハッカソンでは、従来のクラウドオンリーでの製品開発から一歩進んだ形態だといえよう。
以前のGEの取り組みでは、巨大なCADのコミュニティであるGrabCADに自社の設計データを公開、その後クラウド上で投稿されたCADデザインを元に選出、3Dプリンターで試作後、選考するという方法であり、コミュニティに参加する人々は実際に顔を合わすことがなかった。しかし、今回はマイクロファクトリというリアルな場で、さまざまなアイデアを持つエンジニアやデザイナーが集まることで、よりその真価が発揮されていると言えるだろう。
こうした無数の多様性が集まる新たな製品開発は、今後どのように機能していくか、果たして革新的な製品を生み出す土壌になるのか、注目に値する。
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