オートデスクが開発する新たなFDM3Dプリント技術とは
3Dプリンターの代表的な製造技術であるFDM製法。熱溶解積層法と言われ、フィラメント状の樹脂素材を溶かして積層する製法だ。3Dプリンターメーカーのストラタシス社が開発した製造技術で、特許切れによって低価格モデルの普及のきっかけにもなった製法である。
このFDM製法だが、ストラタシス社が製造販売する高価格なハイエンドモデルでは、本物のエンジニアリングプラスチックが使用できることから、試作の域を超え最終品の製造までも可能にしつつある。その一方でデスクトップモデルのバージョンは続々と新興勢力が登場し、低価格化と差別化に拍車が掛かっている状況だ。
このFDM 3Dプリンターだが、特許切れによって爆発的に普及をし始めているが、その一方で、この技術をベースにした新たな特許技術が開発され始めている。本日ご紹介するのは3Dソフトウェアメーカーで代表的な企業オートデスクのFDMをベースにした新たな製法特許だ。
オートデスクは今では単なるソフトウェアメーカーではない。3Dソフトウェアをベースに多角的にこの分野に取り組みを行っている。既にかれらのフラッグシップモデルとなる光造形モデルの3DプリンターEmberを開発。また、次なる高速光造形3Dプリンターとして注目が集まるCarbon3Dプリンターを買収した。ちなみに光造形は液体状の熱硬化性樹脂エポキシ樹脂やアクリル樹脂、更にはポリウレタンなどをベースにした紫外線硬化性樹脂に紫外線を照射して硬化させる技術。Carbon3Dプリンターの登場で注目が高まっている。
そして新たに、かれらの技術を持ってマルチマテリアル、マルチカラーを可能にするFDM3Dプリンターの特許が申請されている。
マルチ素材、マルチカラー、混合、積層ピッチの複合が可能
オートデスクは昨年2014年9月に3Dプリンターに関する一連の包括的な特許出願を行っている。それはフィラメントを混合物を使用して3Dプリントする方法である。この特許内容によると、FDMのノズルを複数設置、単一のサイズだけではなくノズル径のサイズをプリント中に変更することが可能なだけではなく、異なるフィラメント素材を混合して新たな配色を可能にするものだ。
通常FDM3Dプリンターは一つのフィラメントしか使用することはできないのが一般的。プリント中にノズルを変更して異なるカラーに変更することは出来るが、グラデーションのような形でしかプリントすることはできない。
しかし、このオートデスクの新たなFDM特許によれば、1台のプリンターに約4種類のノズルが装着されており、プリント中にそれを切り替えながらより立体的な構造を作り出すことが出来るのだ。
下記の図はオートデスクが出願したFDM製法のノズル部分だが、2006番のノズルが異なるフィラメントを混合させ、新たな色にしたフィラメント素材を押し出すことができる。そして、2016番、2018番、2020番と単一だがサイズ違いのフィラメントを押し出すことが可能だ。
例えば、一定の造形を行ったあとに、最も微細な2020番のノズルで、表面をコーティングすることも可能になる。またこの新たなFDMでは、異なる素材を配合することも可能になり、造形する物体の場所、パーツごとに違う素材を配合することが可能になるわけだ。
プラスチック素材の使用したプロダクトでは、デザイン性を再現するために、場所によって素材を変更することは当たり前だ。通常はパーツごとに金型で造形し、最終的にアッセンブルするという方法が取られるが、このオートデスクの新たなFDMをベースにしたものであれば、異なる素材、異なるカラーのプロダクトが1発で作り出すことが可能かもしれない。
まとめ FDM、光造形ともにオートデスクが中心になる可能性
現在は特許出願段階であり、プロトタイプも公開されていない状況だが、明らかにFDM3Dプリンターの性能は進化しつつある。マルチカラーではかつてイギリスのベンチャーBotObjectがグラデーションのFDM3Dプリンターで注目を浴びたが、3Dsystemsに買収され、その後新たなバージョンの発表はない状況にある。
また、公開されたFDM特許を利用し、マルチカラーをうたった機種も登場したが、ノズルを切り替えるという直接的な方法であり、革新的なものではなかった。しかし今回発表されたオートデスクの特許では、これまでにはないFDMの未来を表していると言えるだろう。
マルチカラーやマルチ素材ももちろんだが、ノズル径の大きさを調整することで、造形精度を圧倒的に高めることもできる。樹脂の3DプリンターではこのFDMと光造形の2種類が存在するが、光造形では既にオートデスクに買収され圧倒的な速度と積層の層がない美しさで注目が集まるCarbon3Dプリンターに期待が集まるが、FDMの分野でもオートデスクが次の世代を担う機種を完成させるかも知れない。
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