FDM3Dプリンターの層の継ぎ目
3Dプリント技術の代表的な製法はFDM、熱溶解積層法だ。ストラタシス社が開発した特許で、フィラメント状の樹脂を熱で溶かして積層して物体をつくる技術。多くの低価格3Dプリンターが登場しているが、その多くは、このストラタシスのFDMの特許を利用したものだ。
特徴として熱可塑性樹脂を使用することができることから素材のバリエーションが豊富だ。ABSフィラメントやPLAフィラメント、ナイロン(ポリアミド)ふィラメント、ポリカーボネートフィラメント、PETGフィラメント、ゴム(エラストマー)フィラメントなどなど、実際にプロダクトで使用されている多くのプラスチック素材を使うことができる。その一方で、使用する樹脂素材の温度特性や熱収縮率を考慮して使用しなければならない。
また積層するという製法から、樹脂と樹脂の階層の継ぎ目ができてしまうのが特徴と言える。プロトタイプをつくるのには最適だが、積層の継ぎ目の粗は覆うべくもないのが現状だ。一方で、低価格3Dプリンターで注目を集めるのが、光造形モデル。光造形3Dプリンターはエポキシ樹脂やアクリル樹脂、ポリウレタンをベースにした紫外線硬化性樹脂に紫外線を照射し層ごとに固める方法だが、FDMに比べはるかに表面がなめらかだ。
その一方で、使用できる材料の幅はFDM3Dプリンターに比べて限定的。このように見てみると一長一短とも言えるが、近年のFDM3Dプリンター用の材料、フィラメントと言われるプラスチック素材の開発は目覚しいものがある。もし、継ぎ目や表面の粗が解消され、滑らかな仕上がりが実現できるようになれば、さまざまな材料を使用できるFDMタイプは実用性がますだろう。そのような中FDMの継ぎ目をなめらかにする特許をストラタシスが取得した。
ストラタシスの層と継ぎ目をなくす新たな特許
今回ストラタシス社が取得したFDMプリントの新たな特許は、特許番特許番号8974715 B2号積層時の縫い目を隠す方法だという。題名は直訳すると「押出ベースのデジタル製造システムで3Dモデルを構築するための方法」とある。文章だけだとかなり難しいが、「3Dモデルの層の内部に始点と停止点を含む輪郭ツールパスを生成し、少なくとも内部に始点と停止点を配置する方法」とのこと。
下記はこの方法の概念図だが、物体が二つの層で構成されており、異なる二つの層、内層と外層が重なることで継ぎ目をはるかになめらかにするとのことだ。また、印刷のスタート地点と終了地点を自由に調整し、物体の内側の境界内に収まるように調整できるプロセスを持つとのこと。


まとめ FDMの強みをさらに強化する特許
FDM3Dプリンターの一番の強みは、材料の豊富なバリエーションだといえる。おそらく市場に流通しているあらゆる製品に使用されているプラスチック素材がそのまま使用することができる。たとえば、ABS樹脂は多くの家電製品や日用品に使用されている代表的なプラスチック素材だし、ASA樹脂はABSに耐候性を加えた外部環境での使用が求められるプロダクトに使用できる。また、ポリカの通称で呼ばれるポリカーボネートはデザイン性が求められるプロダクトでは多様する素材。
さらいは折り曲げ強度や引っ張り強度が強いナイロンなど、金型で使用される樹脂素材がそのまま使えることが最大の強みだ。プラスチック素材は、材料の配合や、組み合わせでさまざまな機能性を発揮することができるが、FDM技術は、プラスチックの機能をそのまま表現することができる製法といえよう。
ただその分、樹脂素材の特性に応じた使用方法や、仕上がりの難しさが求められるが。この特許を実用化した発表はまだ不明だが、これにより、FDMの仕上がりのなめらかさがはるかに向上すれば、さらに多くの分野で普及するに違いない。今後の開発状況に注目したい。
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