国民保健サービスにも3Dプリントを導入
イギリスはアメリカとともに3Dプリント技術で一歩先を行っている国だ。
小学校から中学校の教育カリキュラムに3Dプリント技術の習得が組み込まれたり、政府レベルでの取組が盛んにおこなわれている。最近では国民保健サービスにも3Dプリントが取り入れられている。
今回ご紹介するのは国民保健サービスの一環として足の痛みに苦しむ人向けに提供される靴用インソールの製造だ。
フットインソールは靴の中に入れ込むもので、圧力を分散させ、足をサポートすることで痛みを和らげてくれる。
患者が病院に行って診察を受けてから、その患者の足のサイズや形状に適合したインソールが臨床医のもとに届けられるのは最低でも2週間、最長で4週間かかる。
従来インソールは手作りによって製造されていたが、最近では3Dプリントによって製造され始めている。
実際に3Dプリントサービスを提供するのはFDM Digital Solutionsで臨床医が患者の足をスキャンしてからメールでFDMに送信すると約48時間(ほぼ2日間)でインソールが提供されるという仕組みだ。
インソールの形状は患者の足の裏を正確に表現したものになり、伝統的な手作りの作業から3Dプリントでの製造に切り替わりつつある。
インソールの3Dプリント
FDMは様々な3Dプリントサービスを提供している。
FDMは86万ポンド(約1億4000万円)の資金調達
このインソールの3Dプリントサービスを手掛けるFDM Digital Solutionsは86万ポンド(約1億4千万円)の資金をベンチャーキャピタルから提供されている。
ランカシャー州議会のローズバッド基金は17万2000ポンド、ノース・ウェスト基金から68万8000ポンド、合計86万ポンドの資金だ。
また、FDMは両ベンチャーキャピタルから資金提供を受ける前に、イギリス技術戦略委員会とEPSRCから100万ポンド(約1億7000万円)の助成金を得ている。
ちなみにイギリス技術戦略委員会もEPSRCも政府機関で、特にEPSRCは工学物理科学や材料科学、情報技術等の研究開発に資金提供を行う専門の政府機関で、科学技術の発展により新たなビジネスを展開する企業に資金援助を行っている。
FDMはこの100万ポンドの助成金は1社単体ではなく、東ランカシャー病院健康保健サービストラストとサルフォード大学と連盟で受領している。
FDMは自動車、航空宇宙開発、建築、フィギュア、アートなど幅広く3Dプリントサービスを展開している企業だが、100万ポンドの助成金はインソールの3Dプリントのオーダーメイド技術の開発に使用された。
まとめ -企業支援制度が充実するイギリス-
FDMはインソールの3Dプリントサービスを提供するに当たり、累計で186万ポンド、約3億円近い金額を政府から調達している。
提供されるサービスが健康保健サービスの一環として行われるということもあるだろうが、FDMはこれ以外の3Dプリントサービスも行っている。
資金提供を行う機関も86万ポンドはベンチャーキャピタルだが、始めの100万ポンドは政府の機関が行っている。
以前本サイトでも紹介したがイギリスは小中学校に3Dプリンターを設置することを計画し実施しているがその際の導入費用も政府が予算を投下して行われた。
3Dプリント技術が国の製造業を強化し国際競争力を高めることは明らかであり、それを牽引していくのは民間企業の力だ。その力の源である資金をイギリス政府は必要とあれば余すところなく投入しているように見える。
新規で成長性が見込まれるビジネスにはベンチャーキャピタルが即座に投資を行うのも欧米の特長だ。
こうした政府が行う投資環境と、ベンチャーキャピタルのような民間が行う投資環境の良さは明らかに新技術で製品開発やサービスを提供しようとしているベンチャーを育て経済力を高める原動力を押し上げていることは言うまでもない。
今後、日本が国際社会の中で一定の競争力を保持し、グローバル市場で戦っていくためには、景気を重視したマクロの経済政策を行うことも重要だろうが、イギリスやアメリカに見られるような柔軟な資金提供がなされる社会基盤が必要であろう。
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