レーザー焼結とは異なる新たな金属の3Dプリント製法
金属の加工方法は奥が深く、人類の歴史で最も古い加工技術の一つだ。しかし最も古いと同時に最も最先端な分野だとも言える。精密鋳造や鍛造、削り出し、ミリング加工など他の素材にはない多くの加工技術があり、現代でも最先端プロダクトの開発には欠かすことができない分野だ。
たとえば自動車は金属加工の塊だし、あまり知られていないが、ゴルフクラブは超最先端の金属加工の結集とも言える。このように現代の製品開発において大きな役割を持つ金属加工だが、金属の3Dプリントの登場で一躍注目が集まっている。ちなみに金属の3Dプリンターというと一般的なのがレーザー焼結法だ。
特許切れによって低価格なレーザー焼結法のプリンターが登場し商用利用が期待されている。そんな金属のオンデマンド製造の分野において、新たな製法による金属加工マシーンが登場している。それは異なる金属素材を複合できるあらたなアプローチをとる3Dプリンターだといえよう。本日は、異なる技術のハイブリッド3Dプリンターを開発する企業Fabrisonicをご紹介。
毎秒2万ヘルツの超音波振動で極薄の金属箔を接合
通常金属の3Dプリンターとも言えるレーザー焼結法は、パウダー状の金属粉末にレーザー光線を照射して焼き固める方法だ。しかし、今回ご紹介するFabrisonic社が開発するマシーンは全く異なるアプローチをとっている。それは極薄の金属箔を層ごとに結合し形作る方法だ。
極薄の金属箔を重ねて毎秒2ヘルツにも及ぶ超高速の振動、超音波振動を加えることで、金属箔同士を結合させることができる。この方法は圧延超音波溶接システムと言われ、極薄の金属箔を何層にも何層にも溶接することで個体金属を作り上げるというわけだ。そして最終的な仕上がりはCNCマシニングセンサによって削り出し、余分な部分を削り取るという方法になる。
異なる金属同士や樹脂との複合を可能に
この新たな方法とも言える3Dプリント技術の最大の特徴は、異なる金属素材を結合する複合金属の物体を作れる点だ。たとえばアルミニウムと鋼などをくっつける場合には溶接するしか方法がない。溶接は金属の表面を壊し接着させる方法だが、複雑なオンデマンドの物体で作ることは現状不可能だ。
しかし、この圧延超音波溶接システムを使用すれば極薄の金属層を何層にも結合することができるため、用意に複合金属のパーツが作れるという。またさらに驚くべきことに、この新技術では高強度繊維のように樹脂素材と金属素材の結合が可能な点だ。ホウ素や炭化ケイ素繊維などの補強材やステンレス鋼の埋め込みが可能で、高性能な複合構造を持つ材料を作ることが出来る。
金属パーツに電子回路を組み込める
この圧延超音波溶接システムでは、もう一つ画期的な機能を持つ。それは固体化した金属の中央部分に複雑な電子回路を埋め込むことが出来るという点だ。当たり前の話だが、電子回路は一般的に別々の工程で作られる。電子回路が描かれたプリント基板にはんだがペーストされ電子部品を設置、熱して結合するという方法だ。
外側になる筐体は別々に作られて後にアッセブルされるというわけだ。しかし、このマシーンでは金属パーツの内部に直接回路基板を配置出来る機能を持つ。一般的な金属加工であれば高温で金属を溶かして加工するため電子回路の埋め込みは工程上入れることは不可能だが、この圧延超音波溶接システムの場合だと超音波による低音加工なため回路基板を損傷することもないという。
もしこの製法によって金属パーツに直接電子回路を組み込むことができれば、製品のスマート化にとって大きな進歩だといえよう。
まとめ 製品開発の幅をさらに拡大
現在Fabrisonic社が開発するこの圧延超音波溶接システムSonicLayerはCNCマシニングセンタが搭載され40機から50機を生産、稼働させることを目標としている。この新たな金属3Dプリントのハイブリッドマシーンが稼働すれば、製品開発は大きく進歩する事になるだろう。たとえば異なる金属素材や樹脂との複合強化材料のパーツが作ることができれば、従来よりも軽くて耐久性の高いパーツが作れるようになる。
また電子回路を直接金属パーツにうめこむことができれば、多くの製品のスマート化に役立つ事になるだろう。このように加工技術の進歩は製品開発のバリエーションを拡大し、よりものづくりを進化させることが出来る。そんな可能性を感じさせてくれる開発だ。
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