購買動機に製造工程は関係ない
3Dプリント技術が向上するにしたがって、最終製品の製造に使用されるケースが徐々に浸透しつつある。
しかしその一方で、3Dプリントなんかでいいモノづくりはできないといった、反感まではいかなくても懐疑的なものとしてとらえる意見もある。
「人の手が介在しない3Dプリント技術ではいいものを作ることはできない」といった考えや「もともと試作品を作るための機械で、デザインを確認する単なる作業だ」という意見も多く存在する。
従来からものづくりに深くかかわっている方々は当然こういった感想をもつのだと考えられる。
私も半分は同意見である。それは現在の3Dプリントで生成されたものを見ればわかる。
質感も雰囲気もあったものではなく、それに素材が高いため値段が高い。全く欲しいとは思わない。
一時の3Dプリントブームによって、いろいろなプロダクトが3Dプリントで製造できるという流行のようなものがあったが、正直に言って、お金を出してまで全くほしいとは思えないものばかりであった。
いうなれば私たち消費者はその製品が人の手によって作られていようが、3Dプリント技術によって作られていようが全く関係が無い。
我々消費者は様々な価値観で製品を購入しているが、購買意欲は、人によってまちまちだ。
ある人は、デザイン性が優れており、適性な価格で一定のクオリティと機能性があるかどうか判断する人もいるだろうし、ある人は、雰囲気や質感があり、その製品を使用することによって得られる体感が自分にとって価値があるかどうかといった感覚で判断しているのではないだろうか。
すなわち、人がそのプロダクトを購入するにとって、製造工程は全く判断基準に入っていないに違いない。
例えば自分が職場で日々使っている水筒を「この水筒、、、、3Dプリントでつくられているんだ!!」なんて考えながら使っている人はよほどの水筒マニアか、水筒のものづくりに関わっている人たちだけである。
そのため、仮に最終製品の製造に3Dプリント技術が利用されていたとしても、それは作り手側の単なる事情にすぎず、消費者には何の関係もないことだ。
例えば3Dプリント技術を使用することでコストが半分になるとか、製造時間が圧倒的に短縮できるとか、余計な在庫を持たなくて済むとかそういう事情で、あくまでも経営と企業競争力の範疇である。
しかし一方で、3Dプリント技術の進歩は目を見張るものがあり、明らかに最終製品を製造する機器として使用がされ始めている。
この最終製品の製造も、単純にデータからそのまま出力したものが販売されるということはあってはならず、必ず人の手によって加工されて初めて、消費者の人々に提供することができるプロダクトになると言えるのではないだろうか。
本日は、3Dプリンターを最終品の製造の一部に取り入れ、伝統的な職人加工と合わせてものづくりをしている企業をご紹介。
ハンドメイドと3Dプリント技術の融合
「exnovo」は伝統的な職人加工を生かしつつ、複雑な模様を表現できる3Dプリント技術を取り入れ、独特の照明器具を製造販売する企業だ。
イタリアのデザイナーたちが手掛けるブランドラインを持っており、インテリアにも最適な照明器具をそろえている。
「exnovo」の面白い部分は、第三の産業革命と言われる3Dプリント技術、少量生産、カスタマイズという特長と、しっかりとした質感を仕上げる職人加工を融合させ、製品を提供している。
下記の動画は製造工程の一連を撮影しているものだが、3Dプリント製造後、念入りな後加工を行っている。
やすりがけ1
やすりがけ2
研磨加工
着色加工
3Dデータ
製造工程を見てみるとやすり掛けや、研磨加工、着色に至るまで、あくまでも最終品への仕上げは精密な手作業によって行っており、丁寧に仕上げていることがわかる。
また、金属部分は従来通りの金属加工によって製造され、ソケットなどに使用される木材はスイス木材の伝統的なハンドメイドにこだわるなど、3Dプリンターをあくまでも工作機械の一つとして扱っていることがわかる。
まとめ
「exnovo」はあくまでも製造工程の一部、機械加工の一部として3Dプリンターを使用しているに過ぎない。
これは3Dプリンターを使用した方が少量生産にも対応できるし、カスタマイズも簡単に行うことができ、従来では表現できなかった表現ができるからだ。
そこには「exnovo」の製品を使用するエンドユーザーが中心にあり、製造工程の一部に3Dプリント技術が使用されているかどうかは全くユーザーにとっては関係がない。
こういう顧客目線に立った「exnovo」の取組を見てみると、3Dプリンターブームによって3Dデータから消費者製品を製造する動きが日本でも一時的に巻き起こったが、実に勘違いした発想だと思えてならない。
顧客はそもそも、3Dプリントで作られたかどうかという点に関心は払っていないし、繰り返し言うようだがどちらでもいいことなのだ。
消費者目線、顧客目線を無視した事業展開はビジネスとして成り立つはずかなく、「exnovo」のような消費者中心のものづくりが最も必要なのだと考えられる。
3Dプリント技術と人の手の後加工を施したスマホ用スピーカーの記事はこちら
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