EOSの射出成形レベルの生産用3Dプリント「LaserProFusion」

EOSは金型いらずの射出成形となる新たな3Dプリント技術を発表

3Dプリンターの発展は、徐々に大量生産の領域まで踏み込みつつある。HPのMulti Jet FusionMetal JetCarbonのCLIP製法など、大量生産を実現する製法が開発され、マスカスタマイゼーションが実現し、開発から量産という製造プロセスの領域を大きく変えようとしている。

そして新たにまた一つ、3Dプリンターによる生産を実現させようとするテクノロジーが登場した。それはプラスチック加工の王様といわれている射出成形に置き換えることが出来ると言われている新たなテクノロジーだ。今回はドイツのレーザー焼結(SLS)3DプリンターメーカーEOSが開発したLaserProFusionをご紹介しよう。

EOSによるDigital Factoryのコンセプト。EOS経由の画像

レーザー焼結のリーディングカンパニーEOSが新たな発表を行う

EOS 2018年11月13日から16日にかけて開催されるドイツのフランクフルトで開催される3Dプリント展示会、Formnextによって発表される。この展示会はおよそ550社のアディティブマニュファクチャリング関連の企業が出展し、昨年2017年には2万2000人以上が来場した一大展示会だ。そこで発表される予定のLaserProFusionとはどのような技術なのだろうか。

LaserProFusionとは?レーザー燒結法の10倍

開発元であるEOSは、金属3Dプリンターメーカーの代表的存在で、レーザー燒結法であるSLSとDMLSの主要なメーカーで、この分野では世界一の市場シェアを誇っている。

ちなみにレーザー焼結法とは、炭酸ガスレーザーや高出力のイッテルビウムファイバーレーザーを使用し、金属粉末やナイロンパウダーを“焼結”させ形にする技術だ(詳しくは、「金属3Dプリンターの原理と仕組み」をご参照ください)。

この技術は昨年以来、ドイツで最も関心を集めた業界全体の主要テーマとして、注目が集まっていた。このLaserProFusionとはEOSの開発した新たな3Dプリント技術で、従来のレーザー燒結法のように単一のレーザービームで焼結させるのではなく、100万個のダイオードレーザーによって層ごとに一気に溶融して物体を造形する技術とのことだ。

無数のレーザービームが照射される

従来の1本のレーザービームとは違い10倍のスピードがある。

これにより、従来のレーザー焼結法の10倍のスピードで造形が可能だという。LaserProFusionについてEOSのCTOであるTobias Abeln博士は次のように述べている。「LaserProFusionは、さまざまなアプリケーションに対応でき、射出成形の代替となりうる技術です。いわば、金型フリーの射出成形が可能になります。これは、将来のまったく新しい工業用3Dプリンターです」。

造形モデルのレベルの検証も可能(検証から~シリアル製造まで)

このLaserProFusionは、現在のEOSの3Dプリンターで、4つのレーザーを持つクワッドレーザーシステムを採用しているEOS M 300-4メタル・システムで利用することが出来るという。また、EOSでは、3Dプリンターによる生産を実現させるために、NASAによって開発された生産レベルをチェックするシステムを導入する。

このシステムはレディネスレベル(TRL)といわれるもので、工業用3Dプリントと従来の製造技術や他の3Dプリント技術と比較できるように、情報の可用性と透明性を提供するものだ。材料の状態をレベルによって識別することが可能となる。具体的には二つのカテゴリに分類されており、レベル3~6は、コア製品に分類され、レベル7~9では、シリアル製造に最適なプレミアム製品として使用することが可能となる。

一例をあげるとレベル5では、技術的ソリューションの検証を意味しており、レベル9では最高レベルで完全な生産レベルを意味するという。EOSは従来から3Dプリンターで作られた造形物の“基準”を設けるなど品質を確保する取組にいち早く取り組んできた。このチェックシステムによって本当の3Dプリント生産が可能となる。

材料の検証もできる。 EOS経由の写真

3Dプリンターの品質基準を作るEOS、信頼性の構築と他社の参入防止

工場と統合し、エンドツーエンドの生産管理に適用

さらに、EOS M 300-4では、EOSPRINT 2、EOSTATE Monitoring Suite、EOSCONNECTなどのソフトウェアソリューションを使い、工場に統合することが可能となる。これにより3Dプリントプロセスのエンドツーエンドな管理が可能となる。

まとめ。インダストリー4.0に組み込まれ真価を発揮

今回のEOSの発表は、長年レーザー燒結法の分野でトップを走り続けてきたメーカーからの発表とのこともあり、大きな期待が集まるテクノロジーだ。HPによるMulti Jet Fusionや、Carbonなどとは異なるアプローチだが、レーザー焼結(溶融というべき)による大量生産を実現することで3Dプリンターによる生産体制の実現が更に広がる。

また、3Dプリンターによる生産は、単体でのみ力を発揮するわけではなく、インダストリー4.0の中に組み込まれてこそ進化を発揮する。3Dプリンター、即ちアディティブマニュファクチャリングは次世代製造技術の中の1分野だ。

これ以外に工場全体の生産体制がセンサー技術とIoTによって完全にモニタリングされ、生産データがモニタリングされることで、データが収集されAIによって解析され更に“未来の工場”へと進化していく。

例えば、造形モデルごとに、なぜこのモデルだとスピードが遅いのか、なぜ失敗したのか、などがビッグデータとして蓄積され、それがAIによって改善され3Dプリンターそのものの機能も進化してくだろう。こうしたIoT、AI、3Dプリンティング、ロボティクスの融合によって、大手企業の生産体制はデジタル化し、更なる競争力を増していく。

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