電子デバイスを作れる3Dプリンターの開発計画

グラフェンによる電子機器の3Dプリント計画

3Dプリンターは物体を生成する技術で、電子機器を作ることはできない。しかし今、徐々に電子機器を試作しようという動きが登場しつつある。そのアプローチの方法は大きく分けて2種類存在する。第一は、最もオーソドックスな方法。電子回路基板を1個単位で作れるプリンターを開発するという取り組みだ。

こちらのプリンターは、3Dプリンターではなく、プリント基板などの電子回路基板をプリントするもの。電子回路基板も現在の製造現場ではリフロー炉などによる量産が一般的であることから、電子回路の試作ができる開発に期待が集まる。この場合は、電子回路は、基板用プリンターで、製品のボディ、すなわち筐体は3Dプリンターで作るという方法になる。第二の取組は、電子回路すらも3Dプリンターで作ってしまおうという異色の試みだ。

電子回路は言うまでもなく、電気を通すことでさまざまな機能を発揮する技術。通常は導電性が高い金属(一般的には銅が主流)が使用される。しかし、未来の新素材として期待されるグラフェンであれば、優れた導電性を持つことから可能性があると言われている。

導電性の高いグラフェンフィラメントとマルチプリントが鍵

このグラフェン、素材自体の開発もさることながら、同時に3Dプリンターで使用できる材料開発も盛んにおこなわれている。この分野で最も先端を行く企業はグラフェン3Dラボだ。以前もたびたびご紹介させていただいたが、既にグラフェン配合の3Dプリント用フィラメントの開発に成功し、簡易的なバッテリーの3Dプリントを見せつけた。

そのグラフェン3Dラボが、さらに電子機器の3Dプリントを可能にするため、新たな3Dプリンターの開発に乗り出している。グラフェン3Dラボは、新たにグラフェン素材を使った電子機器の3Dプリントに特化した3Dプリンターの開発を行なうため、カナダの3Dプリンタメーカーブーツインダストリーズを買収すると発表した。

グラフェン3Dラボは、グラフェンの3Dプリント研究を行なう最先端企業で、ある意味この分野では世界で一歩先駆けている。今回の買収ではブーツインタストリーズの全株式を取得する計画だ。その目的はグラフェン素材も含むマルチマテリアル3Dプリンターの開発で、電子機器の試作を可能にする計画だという。今回買収の対象となったカナダのブーツインダストリーズはエンドユーザ向けのデルタ3Dプリンターを販売しており、トリプルヘッドの押出機を持っている。

正式な調印は2015年の第一四半期で、これによりブーツインダストリーズの開発部は、グラフェン3Dラボの研究チームに参加することになる。

3つの押出ノズルを持つデルタヘッド3Dプリンター

まとめ

性能やクオリティを抜きにして言えば、電子機器の3Dプリントは着々と具現化されつつある。先日ご紹介した導電性フィラメントも、マルチプリントによって懐中電灯の試作品を作っている。こうした従来の電子基板とは異なるアプローチから電子機器を作ろうという動きはこれから盛んになってくるだろう。その中でもとりわけ注目されているのがグラフェンだ。高い導電性を持ちながら、様々な形状への変化が期待できる機能は、これからの製品開発にとって重要な役割を果たしていくだろう。

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