デジタルモールドの新たな使い方
3Dプリント樹脂型として知られるデジタルモールド®。ものづくりにおける開発プロセスの効率を高め、小ロット量産を可能にする画期的な3Dプリントソリューションだ。
これまでの主な用途は射出成形やプレス成形、ブロー成形用の樹脂型として利用されてきたが、あらたな使い方として医療シミュレーション臓器モデルの製造で注目を集めている。
今回は2019年のグッドデザイン賞を受賞したデジタルモールド メディカルをご紹介しよう。

さまざまな分野に展開するデジタルモールド
デジタルモールドは有限会社スワニーとストラタシス・ジャパンが取り組む3Dプリント樹脂型で、ストラタシスのPolyJet 3DプリンターJ750とデジタルABS材料を使って作り出される。
デジタルABSは強度と衝撃性、耐熱性に優れるABS樹脂の物性を再現したUV硬化性樹脂で、前述したさまざまな金型成形に使用することができる。
ちなみにデジタルモールドのメリットとしては、デジタルモールドを使うことで、試作段階から最終品と同じ素材で確認ができたり、カスタマイズ量産(マスカスタマイゼーション)などが可能となる。

デジタルモールド メディカルとは
今回開発されたデジタルモールド メディカルは、これまでの製造プロセスを高度化するものとは一線を画す取組である。
デジタルモールド メディカルはデジタルモールドで臓器モデルを作り出すのだが、成形材料として専用の天然由来成分からなるゲル材料を開発。それを使用して実際の医療モデルとして活用することができる。
またゲル材料の内部には、同じくJ750でプリントした血管モデルが組み込まれ、本物さながらの臓器モデルとして、手術などの練習モデルやシミュレーションモデルとして使用可能だ。
ゲル材料の開発はかんてんぱぱで有名な伊那食品工業が担い、ストラタシスとの連携のもと開発が行われた。

従来の手術モデルを変える革新性
このデジタルモールド メディカルの画期的な点は3Dプリント樹脂型と特殊な専用ゲルを使用することで水分を含んだ実物に極めて近い医療シミュレーション用の臓器モデルが作れる点にある。
これにより、これまで動物の臓器や樹脂やフィルムで作られた簡易模型が用いられていた臓器モデルが、より手軽に低コストで利用できるようになった。


また、コストや環境面だけではなく、臓器としての再現性もより向上している。
例えば、動物の臓器を使用する場合には調達に時間がかかるだけではなく管理にも手間がかかる。
更に、使用後の廃棄問題や動物愛護の観点からも課題があった。一方また簡易模型では精度や技術習得には不十分であるなど様々な課題が存在する。デジタルモールド メディカルはこうした課題を克服するものとして革新的な価値を発揮するものとして期待される。
設計を担当した有限会社スワニー代表取締役橋爪氏のコメント
有限会社スワニー の代表取締役社長 橋爪 良博氏は今回のグッドデザイン賞の受賞について以下のように述べている。
「医療現場では、コストや精度だけでなく、その安全性や環境といった多様な制限があるなかで人材育成や治療の品質向上といった課題に取り組まれています。今回のグッドデザイン賞の受賞は、未来の医療従事者の育成やより多くの命を救うための機会をより多くの方々に提供するための安全なソリューションが必要とされおり、その価値が認められたのだと感じています。
今後もより多くの医師や研修医、医療機器メーカーなど 様々な医療従事者が、デジタルモールド メディカルを活用したリアルな体験を通じより高い医療技術の習得や医療機器開発のために貢献できればと思います」。

グッドデザイン賞審査委員による評価コメント
またグッドデザイン賞審査員は受賞のポイントについて以下のように述べている。「これまでのシミュレーション用臓器モデルと全く異なり、本商品は極めて精巧に美しくつくられているだけでなく、環境や倫理面への配慮があるだけでなく、植物由来ゲルを用いることで低価格を実現しており、まさに市場構造を大きく変えるものである点が高く評価された」。
まとめ
デジタルモールド メディカルは、10 月 31 日(木)から 5 日間にわたり、東京ミッドタウンで開催される展「GOOD DESIGN EXHIBITION 2019」において展示される。また、販売は丸紅情報システムズを通じて行われる予定だ。