デジタルモールドがブロー成形で使用開始。サントリーの製品開発

利用が広がるデジタルモールド。今度はブロー成形での利用が開始

3Dプリント樹脂型としてものづくりに新たな革新をもたらすデジタルモールド。従来の製造プロセスを大きく進化させるとともに、アルミ型やプレス加工などと組み合わせることで、ものづくりにおける幅広い分野で展開が広がりつつある。

今回ご紹介するのは、ペットボトルなどの生産で欠かすことが出来ない成形技術ブロー成形での展開だ。ブロー成形とは、ペットボトルやガソリンタンクなどのタンク類、楽器ケースや工具箱など、さまざまな製品の生産で使用される技術だが、特に有名なのがペットボトルである。

今回は新たにストラタシスのPolyJet 3DプリンターであるObjet Eden 260VSを導入し、デジタルモールド®でペットボトルの開発工程を大きく進化させたサントリーの取組をご紹介しよう。

新たにデジタルモールドをブロー成形に取り入れたサントリー

奥が深いペットボトルの開発と試作金型に求められるもの

我々が当たり前のように購入しているペットボトルの飲料水だが、実はペットボトルの成形は極めて奥が深く、飲料水の種類によって形状が細かく異なる。

例えば緑茶やオレンジジュースなどの飲料水は、加熱による殺菌処理を行わなければならず通常のボトルよりも熱に強い耐熱ボトルが使用される。一方、炭酸飲料に使用されるボトルは、炭酸ガスの圧力に耐えられる高強度な耐圧ボトルが必要だ。

また、炭酸飲料の中でも、オレンジの炭酸やカルピスの炭酸のように果汁や乳酸菌を多くふくむ炭酸飲料は、圧力と加熱両方に耐えられる耐熱圧ボトルを使わなければならない。このようにペットボトルは、飲料水の種類によって、形状も細かく異なり、それに対応した金型の種類が求められる。

それに加え、新製品開発とあると、ペットボトルはパッケージと共に製品そのもののデザインを構成する重要な要素となり、金型の試作にもかなりの期間を要する。

ブロー成形の試作に取り入れられたデジタルモールド

「軽量化」というデザインの課題。試作回数が巨大な生産コストに影響を与える

もう一つ試作開発で課題となっているのが「軽量化」だ。とりわけ、近年ではペットボトルの製品開発にはエコやサステナビリティの要素が大きく影響を与えており軽量化は必須の命題といわざるをえない。

例えば、ペットボトルの軽量化を1gでも達成できれば、何百万本と生産されるため、大きなコストセーブにつながるのである。

こうした1gからコンマ数グラムの軽量化が、を達成するためには十分な試作回数の確保と効率化が大きな意味を持ってくる。デジタルモールドはまさにその面でも大きな力を発揮するのだ。

飲料水の種類で異なり、更には軽量化がカギのペットボトル  ※画像提供:ストラタシス

アルミ金型からの切り替えでリードタイムがわずか3日に短縮

サントリーではデジタルモールドを取り入れることで、製品開発をどのように変化させたのだろうか。このペットボトルの試作において、従来サントリーでは、切削加工によるアルミの削り出しで試作金型を製造していた。

このアルミ金型を使ったプロトタイプの検証には1回あたり1.5カ月のリードタイムがかかる。しかしアルミ金型をデジタルモールドによる樹脂型に切り替えることで、なんとこのリードタイムをわずか3日にまで短縮することが可能となった。

新製品は、当然のことながらリリース日が決定しているのが一般的で、試作にかけられる期間も限られている。そのため1ショットの試作を出した後、金型の修正が必要になった場合には、更に期間もかかるため、製品開発における試作の回数も限定されてしまう。

しかし、デジタルモールドでは、テストショット後の修正も迅速にできる。このリードタイムの圧倒的な短縮は、製品開発の幅を大きく広げてくれることになる。

デジタルモールドであれば、アウトプットまでに期間がわずか3日であることから、試したいデザインや形状など、新製品のブラッシュアップにより力を注ぐことが可能なのだ。

アルミ金型の代わりにデジタルモールドを利用。

耐圧性、耐熱性、滑らかさを併せ持つデジタルモールド

ブロー成形は、パリソンといわれる試験管のようなプラスチックの容器を金型ではさみこみ、空気圧を注入して膨らませ、金型にあった形にする技術だ。

そのため、試作金型とはいえ、そこには加熱に耐えられる耐熱性と、空気圧に耐えうる耐圧性、更には金型表面の滑らかさも要求される。

こうした点からもObjet Eden 260VSの精度と、デジタルマテリアルはい最適な効果を発揮する。デジタルマテリアルは、PolyJet 3Dプリンター専用の樹脂で、モデル表面の滑らかさや精密な造形ができるのが特長だ。

ちなみに、通常のデジタルモールドでは、デジタルABSが使用されるが、100本程度の成形であるため、通常のVeroWhiteが使用された。

運用面のユーザビリティも向上

試作金型をデジタルモールドに切り替えるうえで、サントリーは運用面に関する検証も行っている。それが3Dプリンターと、コンピューターシミュレーション、切削加工機による比較検証だ。

コンピューターシミュレーションでは、計算時間が長く、実際のボトルの設計データと計算結果に若干の乖離が見られた。また切削加工機では、CAMや加工機の設定が複雑でかなりの工数がかかってしまうことが分かった。

しかし、3Dプリンターでは、3DCADデータからスピーディにアウトプットすることが可能で、修正が発生した場合にも3DCADデータを修正するだけで即座に3Dプリントすることができる。

更に、3DCADデータに統合することで、製品開発に関わる人材コンセプトデザイナー、マーケター、パッケージエンジニア、プロダクトエンジニアで情報を迅速に共有できることになったという。

まとめ 3つの量産加工に対応しものづくりを柔軟に

デジタルモールドは、これで3つの量産加工に対応しつつある。プラスチック加工の分野では射出成形とブロー成形、そして金属加工の分野ではプレス成形だ。

この3つの加工に利用されることで、利用できる製品開発の分野も飛躍的に広がることだろう。リードタイムの向上と、デジタルモールドの手軽さは試作開発の回数を増やし、製品そのもののアウトプットを向上させる力を秘めている。

また今回は触れなかったが、デジタルモールドでは最終品と同じ材料が試作段階から使用できるため、多品種少量生産やテストマーケティングなどにも有効だ。デジタルモールドは、従来の量産加工を進化させるだけではなく、よりニーズに合った柔軟なものづくりを可能にしてくれる。

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