光造形3DプリンターForm3レビューの機能編です。
Form3で機能性のある造形を3Dプリントするとどのような仕上がりになるのか?
造形の機能性はどこまで表現されるのか?
を検証していきます。
今回の機能編は、「フック」です。
ものを引っ掛けて固定するために使用する道具です。フックといっても様々な形状と機能を持つフックがあります。用途によって機能や素材も大きく変わってきます。
今回はフックのから、フック自体を設置面に固定して物を引っ掛けるタイプのフックを3Dプリントしていきます。更に、フック部分に折りたためる機能がついた形状を検証していきます。
表面の仕上がりのディティール以外にもの機能性についても見ていきたいと思います。
プリントする形状とサイズ
3Dプリントするクリップの3Dデータになります。
3Dデータは、Blenderという3Dソフトを使用して作製しています。
このサイズで3Dプリントしていきます。
サイズ : 46.6mm(縦)×47.3mm(横)×15mm(高さ)
支えのパーツ部分に設置面に固定する為の穴が開いています。フックと支えのパーツを繋げる部分を動かして折りたたむことができます。
使用する光造形3Dプリンターと材料
今回使用する光造形3Dプリンターは、Form3です。
Form3は、高精細、滑らかな仕上がりが特徴の反転方式の光造形3Dプリンターです。
ソフトは、Form3の専用ソフトウェア PreFormを使用します。
PreFormでは、プリントするデータ、プリント方向、サポートの付け方を設定することができます。
光造形3Dプリンター用の材料は、Form3専用スタンダードレジンのグレイレジンを使用します。
3Dプリントで検証したい内容とプリント設定
3Dプリントで検証したい内容はこちらになります。
【検証1】クリアランスの影響とフックの機能性
今回3Dプリントするフックには、折りたためる機能がついています。パーツを折りたたむ為に、フック部分と支えとなるパーツの繋ぎ目を動かすことで折りたためる構造になっています。3Dデータ上では一体型の造形になっています。事前に3Dデータ上で、動かせるように十分なクリアランスを取ってデータを作成しています。クリアランスに関しては以前、機能編「クリップ」のレビューで検証しています。詳しくは、そちらのレビューをご覧下さい。
今回も同様に、3Dプリント後のクリアランスの影響に関しても検証していきたいと思います。
クリアランス部分を見てみましょう。こちらが、3Dソフトで作成した3DデータとPreFormでの3Dデータになります。
パーツの繋ぎ目部分にクリアランスを取っています。
今回プリントする3Dデータでは、0.5mmクリアランスを取っています。
この内容で正常に動かせるのかどうかを検証していきます。
【検証2】表面ディティールの仕上がり
検証二つ目の内容は、機能性のある造形を3Dプリントした場合の表面ディティールの仕上がりです。
3Dデータの造形がどこまで滑らかに表現できているのかを検証していきます。
PreFormでのプリント設定
サポート設定と積層ピッチ
サポート設定は、直付プリント(サポート設定なし)
積層ピッチは、50ミクロン
でプリントしていきます。
こちらがPreFormでのプリント画面になります。
この内容で3Dプリントをしていきます。
プリント時間 | レイヤー数 | ボリューム | Total材料コスト | 1個あたりのl材料コスト |
8h30m | 1257層 | 31.28ml | 3個=588円 | 1個=196円 |
3Dプリント結果
それでは、3Dプリントの結果を見ていきましょう。
【検証1】クリアランスの影響とフックの機能性 結果
[クリアランスの影響 結果]
まずは、パーツの繋ぎ目のクリアランスがどのように3Dプリントできているのかを見ていきます。
●クリアランス部分は3Dデータ通りにプリントできている。
●パーツの隙間は埋まることなくプリントできた。パーツも動すことができる。
●支える方のパーツ先端の一部が歪んでプリントされてしまった。
次に、フックを折りたたむ機能を試してみました。
●問題無く折りたたむことができる。
●フックの開閉も隙間がありスムーズに動かせる。
●機能として問題はない。
[フックの機能性 結果]
フックの本来の機能である物を掛けるという機能を検証してみました。
結果は、問題無く物を掛けることができました。フックとして機能しました。
※今回使用したグレイレジンは、プロトタイプ用としての使用に向いている材料になります。繰り返し使用したり、重い物をと掛けると欠けたり折れる可能性があります。
フックとしての強度性は、また別のレビューで高強度な材料との比較として、改めて検証をしていきたいと思います。
【検証2】表面ディティールの仕上がり 結果
それでは、クリップの全体の仕上がりを見ていきましょう。
●3Dデータ通りに滑らかにプリントできている。
●角も高精度にプリントできている。
●カーブ部分もとても滑らか。
●直付表面部分も滑らかな仕上がり。
●固定用の穴の内側部分もきれいに造形できている。
[寸法結果]
サイズ : 47.3mm(縦)×46.6mm(横)×15mm(高さ)
3Dプリント後のサイズ
縦 : −0.1mm
横 : +0.2mm
高さ : −0.2mm
縦と横にほんの少し歪みましたが、ほとんど寸法通りにプリントできた。
機能編クリップ 3Dプリントまとめ
今回は、機能編ということでフックをテーマに光造形3Dプリンターで3Dプリントしてみました。
検証結果をまとめると、
●機能性に関して
動かせる機能のあるフックを3Dプリントしました。クリアランス部分の動きを考慮して3Dデータを作成しましたが、機能に問題なく3Dプリントができました。一部、クリアランス部分に造形の歪みがありました。
3Dデータ上で2個のパーツが一体型になっている造形を3Dプリントしてみましたが、今回の検証ではパーツの動作も問題無く3Dプリントをすることができました。
●表面のディティールの仕上がり
全体的に3Dデータ通りにとても高精細で滑らかな造形に仕上がりました。
固定用の2個の穴もきれいにプリントができました。
今回の3Dプリントの結果は、グレイレジンの持つ滑らかで美しい表面と、高精細なディティール表現が良く出ている結果になりました。機能性に関しては、クリアランスも問題無くプリントできた良い検証結果になりました。フックの強度に関しては、グレイレジン以外の材料にtough 2000 ResinというABSの強度を再現したものや、ポリプロピレンの靭性を再現したTough 1500、その中間で適度な曲げ強度があるデュラブルなど、曲がりにくく硬くて頑丈な材料があるので、またそちらでも3Dプリントの比較検証をしていきたいと思います。
今回のプリント結果のような、表面のディティール表現が重要になる造形の場合、Form3の中ではスタンダードレジンが最適な材料となります。光造形3Dプリンターでは、造形の用途や表現に合う材料選びも大切になってきます。