230校30万人の小中高生が対象。中国広州市が3Dプリント教育を開始

小中学生から本格的な3Dプリント教育を開始する中国

次なる製造技術として注目される3Dプリンター。この3Dプリント技術を習得させるための教育体制が世界で続々と整いつつあるようだ。アメリカやイギリス、シンガポールなどでは既に学校単位で3Dプリンターを導入しているが、こうした諸国が取り組む3Dプリント教育は小学校や中学校レベルから子供たちに3Dプリント技術に慣れ親しんでもらおうという動きになりつつある。

日本でも美大や専門学校では普及が進んでいるが、小中高レベルではまだ未整備の段階。そのような中、お隣中国で、またも小中学校レベルで3Dプリント教育を普及させようという計画が動きだしている。以前、中国は台湾の3DプリンターメーカーXYZprintingと提携し2年間で40万校の小学校に導入する計画を打ち出したが、その尖兵としていち早く広州市で本格的な3Dプリントコースの設置が行われるようだ。

本日は30万人の生徒たちに3Dプリントコースを提供する中国の動きをご紹介。人々のアイデアを形にし、生産体制を大幅に効率化するツールとして、もはや次なる時代には必須の3Dプリンター。この分野の教育は、この新たなデジタル技術をいかにして使いこなすかという最も重要性の高いテーマ。国の競争力に影響してくる分野であることから日本も負けてはいられない。

中国第三の都市、広州市は230校、30万人の生徒に3Dプリント教育を開始

広州市は中国の中でも第3位にランクインするほどの経済都市だ。その経済規模は人口1270万人、市内総生産1兆0604億元(約13兆円)で、北京、上海に次ぐほど。経済、文化、教育の中心的存在といってもよく、お隣香港と密接な貿易関係にあることから中国一最先端な都市とも言えるだろう。

そんな広州市だが、中国政府の3Dプリンター配備の動きに伴って、最先端都市らしくいち早く導入に動き出している。その中心となっているのが広州市局、広州市科学技術局、広州大学、さらには広州市内の小中学校からの110人以上の教師たちだ。そして企業側からは中国の大手家電メーカー、珠海西エレクトロニクス株式会社が参加している。

ちなみに珠海西エレクトロニクス株式会社は液晶テレビなどのテレビ関連を中心に全世界に展開するメーカーとのことだ。この産学民連携の3Dプリントプロジェクトは、既に10時間にも及ぶ教員用の3Dプリントコースを広州市の110人の教員に受講させ、各校の生徒たちに学習させる体制を整えつつある。

その数なんと230校にも及び、来年から累計30万人近い小中学生たちが本格的な3Dプリントコースを学ぶことになるという。このプロジェクトの導入にあたり、珠海西エレクトロニクス株式会社のヤン社長は「3Dプリント技術は、最先端の技術であり、先進的な製造方法について学生に教えるために不可欠。この基礎教育の目的は、子供の将来のキャリアの可能性を開発すること」と述べている。

必要なことをすぐさま行うスピード

今回の広州市の取組にも見られるとおり、中国の3Dプリント教育を整えるスピードも他国と同様圧倒的に早い。過去の事例が示すとおり、アメリカ、イギリス、シンガポールも同様だが、国や行政機関が旗を振り、そこに対して教育機関や企業が連動して行動を起こす、ものすごいスピーディな対応が垣間見える。

そこには日本の一般的な行政機関で見られる「公平性」に足を取られた遅さはない。公平性に気を配り、慎重に物事を吟味して進めるスタイルが悪いというわけではない。しかし、誤った公平性の解釈が行動原理にすえてしまうと何も進まないだろう。ここでいう誤った公平性とは、何でもかんでも、何を行うのも、誰からの批判も出ないように公平にしなければならないという解釈だ。

こうした点は海外の国は違う。必要なものはすぐさま迅速に行うという行動原理が見られる。この立場の人たちがこの教育を受けられないかもしれないというような空想の批判、いわば妄想にとらわれることはない。

まとめ 創造力がある若いうちからきっかけをあたえる

現在、日本の3Dプリンター教育は、おそらく大学や専門学校が中心だろう。たとえば、3Dプリンターメーカーのストラタシスは、3Dプリント技術を習得することができるカリキュラムを制作し、教育機関への導入を図っているが(日本語版も登場)、我が国では現状は大学レベルでの導入にとどまっている。

しかし、一方でストラタシスが提供する3Dプリントカリキュラムは、アメリカでは中学レベルを対象にしたものだ。もちろん、大学レベルでも通用する汎用性の高い高度なものだが、導入する側の意識が国によって全く異なるという部分があるだろう。今後、製品開発にとって、デジタルとクラウドを介したものづくりが主流になる中、より年齢が早い時期からこの技術に親しみ、より多くの人材がこの分野に進む体制づくりが必要である。

こうしたことから、方法論ややり方はあるだろうが、我が国における低学年の導入も整える必要が出てくるだろう。

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