知られざる中国の3Dプリント事情
我が国、日本がGDP(国内総生産)で中国に抜かれて以来、既に4年が経過している。昨年の2013年度には、既に中国のGDPは我が国の約2倍の規模に達し、その経済成長はとどまるところを知らない。
つい数年前までは製造業においても、中国は「安かろう悪かろう」の代名詞であったが、現在は違う。あまりにも多くの人口を抱えるため、中には「安かろう悪かろう」の企業も存在するが、レノボやハイアールといった巨大メーカーは確実に品質が向上している。
もはや日本の電化製品や、韓国のサムスン、LGにも匹敵する製品力を備えていると言っていいだろう。
最近アジアでサムスンの勢いが衰えているという話もあるが、一つには中国メーカーに押されているという状況が存在する。いまや21世紀における「世界の工場」としての地位をますます確実なものにしていく中国だが、これからの製造業にとって最も影響を与える3Dプリント技術に関しても無関心ではない。
無関心どころか、中国はこの分野においても将来のリーダーになるべく目下活動している状況にある。本日はアメリカやヨーロッパの影に隠れたお隣中国の3Dプリント事情について、その現状と今後の見通しをご紹介。

自動車産業と教育分野への3Dプリンター配備が加速
アメリカやイギリス、シンガポールといった先進国が、3Dプリンターを自国製造業の回帰と更なる発展のツールとしてとらえているが、中国もこの技術を使って、「世界の工場」としての地位をますます強固なものにしようとしている。
アメリカのリサーチ会社Lux researchによると、中国におけるハイエンドタイプの3Dプリンターの導入は急速に拡大傾向にあり、2018年度には現在の4倍、約37,800ユニットに達するとみられている。これは金額にして現在の3倍の収益、1.09億ドル(約109億円)に達する。
とりわけ導入が進んでいるのが製造業と教育分野で、なかでも教育機関への導入は毎年39%で成長し続けると予測されている。アメリカやイギリス、シンガポールなどが、3Dプリンターを大量に配備し、製造業や教育機関での利用を高め、国全体の競争力を高める中、中国も3Dプリンターの配備を急速に拡大させているとみられる。
教育業界に次いで、3Dプリンターの導入が盛んなのが、自動車業界だ。中国は世界最大の自動車市場であり、同時に世界最大の自動車生産量を誇っている。
中国の自動車メーカーは海外企業との合弁が多いが、その数100社以上に上るとされ、恐るべきことに2020年には中国の自動車生産台数は2億台に達するとみられている状況だ。この自動車業界での3Dプリンターの導入は毎年31%の成長率を見せると言われ、プロトタイプに有効利用されることが期待されている。
このように主力産業である自動車業の強化と、将来の製造業を担う人材育成を目的とした教育業界への3Dプリンター配備は、自国製造業への回帰を図る欧米勢に対抗し、「世界の工場」としての地位をますます強める政策だと言える。その一方で、中国は、自国における独自の3Dプリント技術の開発にも余念がない。次項では中国が独自に進める3Dプリンターについてご紹介しよう。
中国独自3Dプリント技術が続々と登場
中国は製造業や教育機関に3Dプリンターを配備することだけに注力しているわけではない。独自の3Dプリンター開発も盛んになりつつある状況だ。実は2013年度に中国で生産された3Dプリンターの数は21550ユニットに上ったが、そのうちのなんと約60%、12810ユニットが海外諸国に輸出されている。
3Dプリンターメーカーは、ストラタシスや3Dsystems、MakerbotやEOSと、アメリカとドイツのメーカーが中心で、グローバルに展開しているが、中国も負けずに自国メーカーを育てることに力を注いでいる。
例えば、前項で中国が自動車産業への3Dプリンターの配備を加速させていると述べたが、同時に中国は独自の自動車フレーム用の巨大3Dプリンターの開発に着手している。この巨大3Dプリンターは以前もご紹介したが、直径6メートルもの巨大なフレームを構築できるもので、プリンター自体のサイズは28メートルにも達するもの。
素材は炭素鋼やステンレスなどに対応しており、もともとは航空機のフレーム製造に利用されていたものだ。また、つい先日9月末に発表されたが、中国科学院と精華大学の科学者が新たな3Dプリント技術を開発したと発表した。
この技術は液体金属を使った全く新しい3Dプリント技術で、ガリウム、ビスマス、銅、銀などの合金の物体を生成することができる。この技術は従来の金属3Dプリンターよりも高速で、形状の自由度が高いという。また、プラスチックなどのその他の材料と混合した物体も作ることが可能になる。
上記の巨大3Dプリンターも大学研究機関が開発したものだが、中国は政府主導で企業と研究機関の連携が盛んだ。そのため3Dプリンターの開発では後発組だが、その技術革新と製品化のスピードは目覚ましいものがある。
中国の最先端技術を研究する中国科学院

中国が独自開発する新たな液体金属の3Dプリント技術

まとめ ナショナルイノベーションセンター開設
中国政府は今後3年間の間に、革新的な3Dプリント技術の開発に注力することを発表している。
政府が旗をふり、主に5社から10社の民間企業を中心に、中国の最先端技術の最高研究所、中国科学院や、各大学研究機関が参画するというものだ。
それは3Dプリントのナショナルイノベーションセンターという形で具現化される。そこで生み出される収益は年間8130万ドル(約81億円)に上るとみられ、アジア最大の3Dプリントセンターとして機能するだろう。
これまで述べてきたように、既に中国は3Dプリンターを配備するだけではなく、他社とは異なる強みを持つ独自3Dプリンターの開発にも乗り出している。このイノベーションセンター開設と同時に、国内の多くの製造業や、教育機関では当たり前の技術として普及が進み、ますます産業競争力を高めていくだろう。
この3Dプリンターへの注力は我が国日本よりもはるかに先を進んでいるのではないだろうか。驚くべきことは、既に2013年度の時点で、中国国内で生産されたハイエンドモデルの60%が輸出向けに製造されたという事実である。
ちなみに欧米勢も、中国も、シンガポールも、全ての3Dプリンターに注力する諸国に共通して言えることは、政府、企業、研究機関が一体となって取り組んでいるということだ。また同時にもう一点言えることは、こうした諸国は3Dプリンターの研究開発と各産業への配備といった両方の面に力を入れている。3Dプリンターを配備することで産業の強化を図り、同時に他国と差別化を図る独自技術の開発を行なうというわけだ。
海外諸国が官民一体となった効率的運営でデジタル化を進めていく中、日本がどのように今後展開していくか、日本の3Dプリンター開発に期待したい。
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