冷蔵庫がハブに!メーカーコミュニティのオープンソースのスマート冷蔵庫

メーカーコミュニティと家電製品のオープンソース化の流れ

ハードウェアのオープンソースの流れがどんどん進んでいる。オープンソースのモノづくりの特徴は、3Dの設計データを多くの人と共有し、試作改良を重ね製品開発を行なうという方法をとる。その共有と改良作業は、ソフトウェアのオープンソースとは異なり、ヴァーチャルな世界だけではなくリアルな世界でも行われるのが特長的。

そのリアルな世界とは、多くの人たちが集まる製品開発の拠点とも言ってもいい。その代表的な存在がGEが手掛けるFirstbuildだ。このFirstbuildは、家電製品のものづくりコミュニティで、ヴァーチャル上でのアイデアや設計データの共有、さらには現実の場所でも交流し改良しようという試みが行われている。以前も詳しくご紹介したので、下記の記事をご参照いただければと思うが、GEだけではなく多くの企業が参画している。

製品開発のアイデアを出すのは、自動車のオープンコミュニティ、ローカルモーターズに参加する技術者たちや、大手3DプリンターメーカーのストラタシスやMakerbotも参加している。設備にはストラタシスの最新式の3Dプリンターやプレゼンテーションルームといったアイデアをカタチにするための設備が整っている。そのFirstbuilが、今回のインターナショナルCESで、コミュニティから生まれたオープンソースの冷蔵庫を発表している。

オープンソース スマート冷蔵庫

冷蔵庫がハブになり55種類の機能性パーツを統合できる

オープンソースの冷蔵庫とはいったいどのような機能を持っており、これまでの冷蔵庫と何が異なるのだろうか。表面的な機能だけ見れば、この冷蔵庫ChillHubはあまりインパクトが無い。例えば、USB機能とWiFi接続を完備したオープンソースの冷蔵庫と言われてもピンとこないに違いない。

しかし、その本質的な機能はIT化されることによって多くの外部の機械と接続し様々な機能を発揮することができる点にある。現段階ではまだ試作中だが、例えば、バターを溶かす柔軟化トレイや、重さが軽量できる重量センサー、脱臭機、自動給水のピッチャー、LED消毒光、音声制御システムなど、冷蔵庫を一つの器にして、食品管理や調理に関するあらゆる機能を持つデバイスを接続できることになる。

不要な人はわざわざ取り付ける必要もないし、取り付けたい機能に応じてこのChillHubと接続すればいい。まさに冷蔵庫(Chill)が一つのハブ(Hub)として機能することになるのだ。現在FirstbuildではこのChillHubに関する55種類の機能性パーツと互換性がある。またオープンソースであることから、この設計データを自由に入手可能で改良もできる。

ちなみに55種類の機能性パーツもオープンにされ徐々にMakerbotが運営する無料ダウンロードサイトThingiverseで3Dプリント用データをダウンロード可能だ。このChillHubの価格は2999ドル。

まとめ 起業家や技術者とともに発展する仕組み

メーカーコミュニティによる製品開発は今後ますます拡大していくかもしれない。特に大手メーカーが多くのアイデアを収集する方法としてこの手法を行なうだろう。またそうしたモノづくりの手法にしたがってハードウェアのオープンソース化はさらに拡大していくだろう。

結局、試作や開発レベルでは3Dプリンターが力を発揮したとしても、実際のエンドユーザーが購入して使用する段階では、クオリティの高い質感を出すことができる加工方法を使用しなければならない。そうなると、量産段階では資金が豊富で技術力を持つ大手メーカーでなければ実行は難しい。しかしGEの場合は、その点は上手く起業家やアイデアを持つ技術者と協調し相互発展を行えるような考えをとっている。

ややもすればメーカーコミュニティは、大手メーカーの一人勝ちと、アイデア搾取の懸念もあるが、GEはそうした起業家に資金提供を行い、さらにはGEが独自に持つ販路すらも紹介して共栄していこうという理念が見えるようだ。その動きはGEが行なうエコマジネーションチャレンジなどからも見て取れる。

真の強者は、自己の利益のみではなく他社も巻き込むことが、強い広がりと発展をもたらすものなのだと知っているのだろう。利益と効率化のみに目を向け、コスト意識のみでモノづくりのクオリティを落とし、なおかつ設計と製造が分離し、製造現場を見たことすらないモノづくりをする何処かの国のメーカーは見習うべき動きだ。

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