Carbon3Dプリンターがグーグルベンチャーズから1億ドル調達

TEDカンファレンスでも有名に。グーグルベンチャーズが1億ドル投資

学術や科学、エンターテイメントなど分野を問わずさまざまな人物のプレゼンテーションが注目のTEDカンファレンス。このTEDカンファレンスは日本でもNHKの番組、スーパープレゼンテーションで見ることができる。そのプレゼンテーションの多くは、あらゆる分野に影響を与え、まさに世界を変える可能性を秘めた秀逸なプレゼンが行われる。

このTEDで、先月放送された「もし3Dプリンターが100倍速かったら」というプレゼンテーションでは、今次なる3Dプリンターとして注目されているCarbon3DプリンターのCEOで、ノースカロライナ大学の教授を勤めるジョセフ・デシモーン氏が登壇。現状の3Dプリンターの課題を上げ、その全てを克服するものとしてCarbon3Dプリンターの発表を行った。

本サイトでも、Carbon3Dプリンターに関する記事を度々ご紹介してきたが、一言で言うと、射出成形並みのクオリティを保ちながら、高速で立体造形することができる3Dプリンターだ。ベースは液体状の紫外線で硬化する光造形タイプ(紫外線硬化性樹脂はエポキシ樹脂アクリル樹脂ポリウレタンなどがベースとなる)だが、液体樹脂を硬化させる現象を阻むのが酸素であるという研究から、液体樹脂内部で造形するCLIP製法を開発。

これにより、積層することなく、物体を造形することができる。また、造形スピードも酸素による阻害がないため圧倒的に速い。このCarbon3Dプリンター、まさにTEDカンファレンスのタイトル「もし3Dプリンターが100倍速かったら」に相応しい性能を備えており、スピードだけではなく造形精度も金型に匹敵する。

CLIP製法とCarbon3Dプリンター自体の性能は、「射出成形なみのハイクオリティな仕上がりを高速3DプリントCarbon3D」の記事をご参照いただければと思うが、今、次なる3Dプリンターとして業界が大注目のこの機種に、新たに巨大な投資が行われた。それがグーグルベンチャーズからの1億ドル、約120億円もの巨額投資である。

CLIP製法

総額170億円ちかい資金を背景に3Dプリンター市場を席巻する可能性

Carbon3Dプリンターへの投資額は、今回のグーグルベンチャーズの出資により、累計で1億4100万ドルにも登る。既に投資関連企業のセコイア・キャピタル、シルバーレイククラフトワーク、およびノースゲート・キャピタルを始め、3Dデザインソフトの最大手、オートデスクも1000万ドルの出資を行っている。

この巨額の出資を受け、Carbon3Dプリンターは本格的な最終品の開発と製造に乗り出す予定だ。ちなみにグーグルベンチャーズにお披露目したのも、このTEDカンファレンスが最初とのこと。約170億円近い巨額の資金を背景に生産と販売を開始すれば、3Dプリンター市場を一躍塗り替え席巻する可能性が高い。

現状の3Dプリンター市場は大きく分類して、2種類、2分野の分け方ができる。 二つの種類とは高性能で高額なハイエンドモデルの市場と、特許切れによって広まる廉価版の市場。2分野とは素材による分類で、樹脂素材の3Dプリンターと金属素材の3Dプリンターという分け方ができる。

もしCarbon3Dプリンターが完成し、販売を開始した暁には、樹脂素材の廉価版の市場シェアは一気に塗り替えられる可能性が高い。 現在廉価版の樹脂素材を使える3Dプリンターは、樹脂をフィラメント状にして積層するFDM熱溶解積層法か、紫外線硬化樹脂による光造形法の2パターン。

あらゆる新興メーカーが登場し、玉石混合の状態とも言える。極論すれば、どのメーカーも小さな特長を差別性として打ち出してはいるが、ベース技術が変わらないためスピードと精度自体は大差がない。 少なくとも積層しないといったCLIP製法がもつ革新性、圧倒的な高速、金型レベルの精度は持っていない。

Carbon3Dプリンター動画

まとめ 試作の域を出ない廉価版3Dプリンターの役割を変える

CLIP製法を備えたCarbon3Dプリンターの登場と普及によって、ようやく低価格版の市場は大きく変わるだろう。ハイエンドなFDM3Dプリンターはエンジニアリングレベルのプラスチック素材など、専門性に特化し、最終品レベルでの使用を十分満たしているが、廉価版は、クオリティ、スピードともにプロトタイプ製造の域を出ない。

CLIP製法を搭載したCarbon3Dプリンターが製品開発の現場で使用されるようになれば、製品企画からデザイン、試作、修正といったスピードがますます高速化されるだろう。現状の廉価版で1日から2日かかっていた試作時間数十分程度に短縮されれば、プロダクトデザインの現場が大きく効率化される事になる。

また、高圧力で金型内に注入され、分子が均一に行き渡り綺麗な仕上がりができる射出成形と同等のクオリティは、場合によってはそのまま最終品として使用ができるかもしれない。少なくとも、耐久テストなどではこのCarbon3Dプリンターで出力したモノをそのまま使用できるだろう。

現実にフォードや映画制作の現場などではCarbon3Dプリンターの利用が行われ始めている。ものづくりの革命がさらに進化しそうだ。 Carbon3Dプリンターに関する記事はこちらもどうぞ

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