100ミクロンの精度で1.3㎥がプリント
2014年に入り新規に3Dプリンターを開発する取組が続々と行われている。
今回ご紹介するBigRep Oneも従来にはなかった特長をもつ3Dプリンターだ。Big Rep Oneの特長を一言で説明すると、プリントできる対象物のサイズが圧倒的にでかい点にある。
BigRep Oneの開発目的が、消費者向けのデスクトップタイプの3Dプリンターと企業が使う業務用のハイエンドタイプの3Dプリンターのギャップを埋めることだという。
その造形サイズは最大で、1147mm×1000mm×1188 mm、または1.3㎥だ。従来の一般的なデスクトップタイプの3Dプリンターと比べても圧倒的な大きさと言える。参考までにデスクトップタイプの3Dプリンターで最も有名といえるMakerBotのReplicator2のプリントサイズは285㎜×153㎜×155㎜だ。
BigRep Oneはほぼ5倍~6倍近いサイズがプリント可能になる。気になる造形精度だが、こちらも高分解能を保っているとのことで、Replicator2とほぼ同等、100ミクロンの精度をもつ。
Big Rep One
スペック
- 製造方法:FDM・CNCフライス盤(オプション)
- サポートされている印刷材料:PLA、ABS、PVA、HDPE、PC、NYLON、TPE、LAYWOOD、LAYBRICK
- プリンタの重量:約200kg
- 加熱テーブルの重量:約40kg
- ポール:1.575m
- 高さ(最大):1.585m
- 長さ:1.665m
- 造形サイズ:1147mm×1000mm×1188 mm
- 分解能:100ミクロン
- 価格:39,000USD
家具から自動車部品まで3Dプリント
BigRep Oneを開発している創設者マルセル氏とルーカス氏は、この3Dプリンターを主に芸術の分野でつかっているとのことだ。
特に家具や置物などは製品自体のサイズも結構大きいため、従来のデスクトップタイプの3Dプリンターで出力することは不可能であった。しかしBigRep Oneを使用することで、巨大なサイズのロボット用部品や車両のパーツ、家具、芸術的な彫刻など、多くの作品をプリントすることができると発表している。
下記はBigRep Oneのメンバーとその実物の写真だが、非常に大きいことがわかる。ちなみに発売は2014年の4月から5月ごろとされており、価格は39000ドル約390万円と高額だ。
BigRep One本体とメンバー
印刷スピードと正確さが課題
BigRep Oneは精度だけ見てみると従来のデスクトップタイプの3Dプリンターとほぼ同等だ。
そのため産業用で使用されている高度の精度が要求されるハイエンドタイプほどの精密さは無いだろう。デスクトップタイプの3Dプリンターの巨大版ととらえた方がいいかもしれない。
2点気になる点がプリント時間と、プリント精度だ。
第一の課題:プリントの速度
第一にプリント時間についてだが、MakerBotのReplicator2を例に挙げると、約1cm程度の物体をプリントするのに約1時間程度かかるそのため、対象物によってはほぼ24時間、まる1日機械が動き続けていることが多い。
ちなみにBigRep Oneのプリント方法はFDM方式といって既存のデスクトップタイプの3Dプリンターと同じ方法だ。
そうすると、BigRep Oneの造形スピードは既存のデスクトップタイプの3Dプリンターとあまり変わらないのではないだろうか。もしスピードが変わらなかった場合、プリントする面積が大きい分、ものすごい時間がかかるのではないだろうか。
例えば物体の容積が10倍であれば、時間も10倍かかる気がする。
第二の課題:プリントの正確さ
第二のプリント精度についてだが、ここでいう精度は解像度のレベルではなく性格にデータ通りに失敗せずにプリントすることができるかどうかという意味だ。
たびたび言及させているが、今のデスクトップタイプの3Dプリンターははっきり言って、精度はよくない。
ミスプリントもざらにあるし、最悪材料が出ずにノズルだけ1日中動いているというケースもある。
つまり、3Dプリンターの精度はもとになる3Dデータの精度や周囲の環境(温度や湿度など)に強く依存するためだ。データが物体の物性等を無視したつくりであればミスプリントするケースも非常に覆い。
これは3DプリンターメーカーであるMakerBot自体もその点を認めており、ミスプリントが絶対にしないデータのみを集めたダウンロードサイトを立ち上げているぐらいだ。
MakerBotのミスプリントしないサイトの記事はこちら
そのためBigRep Oneほどの巨大な大きさをプリントする場合、3Dデータを制作する人が相当知識を持ち物性に関しても広範な知識を持っている必要があるのではないだろうか。
そのため、巨大なものをプリントできるのはいいが、ミスプリントの場合は最悪である。無駄になる材料の量も多く、無駄に費やす時間も多い。
この二つの部分、プリントスピードとプリントの正確さ、この二つがどのように担保されているか問う点が、現在のBigRepOneの発表では見えてこないのが現状だ。
最悪のケースを想定すると、大きい物体をプリントするのに3日も4日もかかり、その挙句ミスプリント作ができて、時間と材料を大幅に無駄にしてしまうという可能性もありうる。
まとめ
今回のBigRep Oneについて、現状のデスクトップタイプの3Dプリンターの性能から、大きくなった分のデメリットをあえて強調して記したが、上記に記した二つの課題は現在のデスクトップタイプの3Dプリンターに共通して言えることだ。
この二つの課題をクリアにすれば大きくなった分のメリットがしっかりと機能するのではないだろうか。
価格も日本円にして約390万円と決して安くはないため、同じ金額であれば造形サイズは小さいが安いハイエンドタイプの3Dプリンターを購入した方が十分メリットがある。
しかし、BigRep Oneのように従来の3Dプリンターでは再現できなかった機能が開発されたり、登場したりすることで、技術レベル全体が向上していくのだと考えられる。
1.3㎥の大きさを3Dプリントするという取り組みが始めは信じられなくても、失敗と研究を繰り返していくことで、将来的にはもっと大きな物体を正確に早くプリントする技術が確立するかもしれない。是非今後の発表に期待したいところだ。
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