3Dプリンターの真価を発揮させるクラウド設計ソフト
3Dプリンターの最大の特長は、プリンター本体とクラウドの環境が備わっていれば、世界中どこにいてもプロダクトを生み出すことができる点にある。あらゆるプロダクトに関するデータをクラウドで共有し、世界各地に配備した3Dプリンターを使いこなせば、現地生産と製品開発を行うことが容易だ。
これが3Dプリンターがもたらす最大のメリットの一つであるサプライチェーンの変革に結びつく事になる。現在はラピッドタイピング、すなわち試作製造を目的にした使用が中心だが、3Dプリンターの性能がより向上することで、現地生産を行うことも可能になるだろう。
例えば、中国でパーツを製造し日本に輸送するという場合、物流コストや通関費用が発生するが、こうした費用は全てゼロになる。こうした物流コストの低減効果は、単純な費用だけではなく、物理的な時間やリスクもゼロにする。中国から海上輸送で日本に送る場合、モノにもよるが、工場から港までの梱包と運搬の日数、コンテナ詰めや通関手続きの日数、海上輸送の期間など含めると、どんなに少なくとも1ヶ月の日程は必要になる。
しかし、3Dプリンターとクラウドを使用すれば、こうした日数はわずか数時間から数日に低減することができる。さらには国によって異なる煩わしい通関手続によるリスクをなくし、一連の貿易に必要な人員、作業、時間を大幅に削る。これこそがサプライチェーンの変革と言われる所以だ。
しかし、こうしたサプライチェーンの変革を完遂させ、3Dプリンターの真の力を発揮させるためには、設計と製造に関する一連の流れを管理できるクラウドソフトが必要になる。また同時に、3Dプリンターの現状の課題でもある、ファイル変換の問題も解決する必要があるだろう。本日はそんな3Dプリンターの力を発揮させ、クラウドの真価を発揮する新たな3Dソフト、オートデスクの「Autodesk Fusion 360™」をご紹介しよう。
今年の秋から日本語版が開始される予定で、より使いやすくなりアイデアから形にし、3Dプリントまで一貫して行うことができるクラウドソフトウェアだ。
※「Autodesk Fusion 360™」のプレスリリースはこちらです。
「Autodesk Fusion 360™」動画
オートデスクの「Autodesk Fusion 360™」の日本語版が開始予定
オートデスクの「Autodesk Fusion 360™」は、既に次世代型のクラウドベースの3D CAD/CAM/CAEツールとして、英語版では使用されているソフト。今回新たに秋から日本語版での使用も開始されることとなった。この「Autodesk Fusion 360™」はこれまでのCADソフトやCAMソフトなどとどのような点が異なるのだろうか。
冒頭で3Dプリンターの真価についてご紹介したが、この「Autodesk Fusion 360™」はまさにその力を確立するためのクラウドソフトウェアということが言える。クラウドをベースにデザインと設計を行うということから、パソコンがあればどこでも作業が可能、また遠隔地に居るデザイナーやエンジニアとも共有できることからコラボレーションが可能だ。
また、この「Autodesk Fusion 360™」をつかえば、わざわざファイル変換を行うことなくそのまま3Dプリンターで出力が可能だ。以前もご紹介したが、このファイル型式の課題は、マイクロソフトと共同で開発するファイル型式で解決済み。「Autodesk Fusion 360™」にもそれが適応される。
これにより、進化する3Dプリンターの性能をいかんなく発揮することができる。こうした3Dプリンターとの適合はもちろんのこと、プロダクトデザインに関するあらゆる設計ニーズを満たすことができるのが「Autodesk Fusion 360™」の最大の特長といえよう。
フリーフォーム モデリングとスカルプティング機能により、アイデア段階からプロダクトの形状を素早く落とし込みができ、尚且つ形状から入ったラフデザインに対して、正確なパラメータをスケッチに設定し、反映させることができるのだ。基本的にはラフデザインから数値パラーメータに落とし込みを行う過程は全て履歴として記録され、設計プロセスや修正が一目瞭然となる。

レンダリングから構造解析機能まで搭載。3Dプリントもスムーズに
また「Autodesk Fusion 360™」は、さらに一歩進んだ詳細設計のフェーズもそのまま行うことができる。実際に設計されたパーツをアッセンブルした状態の設計も可能だし、パーツとパーツ同士を繋げ動作確認を画面上で確認することもできる。
このアッセンブリモデリングとジョイント部分のモーションスタディ機能は、パーツを組み上げた状態で造形することができる3Dプリンターには最適な機能だと言えるだろう。さらには、レンダリング機能によって、素材ごとに応じたリアルな表示を可能にしてくれる。
プロダクトデザインは機械的な特性やプロダクトとしての特性をデザインに落とし込むことも当然だが、同時にそれは素材の選択という部分にもつながってくる。このレンダリング機能では、複合材料の選択や、細かいカメラ設定でプロダクトをリアルに再現してくれるわけだ。
また、構造解析機能が搭載されており、実際に3Dプリンターで製造を行う前に、パーツやプロダクトの強度を分析、改善点や修正点を一目瞭然で教えてくれるわけだ。プロダクトの場合は、実際に製品として使用される場合には、必ず耐久性などの特性を担保する必要がある。
このシミュレーション機能は、落下試験や載荷試験、引張試験など、パーツの機械的特性を事前にチェックしてくれる。ちなみに対応しているCADデータは50種類以上。同時にSTLやOBJなどの中間ファイルのデータもインポート可能だ。

アッセンブル動画
レンダリング動画
ジョイント動画

まとめ クラウドによる設計と製造が本格化
ものづくりは、3Dプリンターとクラウドによってあらゆる分野に影響を与える。だがこれまでは3Dプリンターの性能や、設計ソフトの状況により、その真価を発揮することができなかった。しかし、3Dプリンターの製造スピードが向上し、あらゆる素材が最終品に使用できるようになってきた昨今、データをクラウド上で共有し、3Dプリンターを配備したその場所で製造するという体制が可能になりつつある。
冒頭でも述べたとおり、安価な人件費を求めて海外に生産工場を移すこともなく、産業空洞化を防ぐということにもつなげられるだろう。しかしそれには「Autodesk Fusion 360™」のような、アイデアから製造まで一貫してシームレスに行い、同時にクラウド上で共有することができるソフトウェアが不可欠だったと言えるだろう。
今回の「Autodesk Fusion 360™」の日本語版のリリースによって、早晩ものづくりの体制が大幅に変わることになりそうだ。ちなみに日本語版は近日発売予定とのこと。Windows64bitとMacOSに対応しており、月額 4,320 円、年間 35,640 円という手軽な価格。
また、学生を始め、教育機関、NPO、趣味での使用、さらには新たに製品開発を行うスタートアップ企業、年間10万ドル未満の利益の企業であれば、無償で利用することが可能だ。特にスタートアップや教育機関の無償提供は、新たな価値を提供する製品開発や、新たに産業を育成する環境づくりにもつながっており、実に意義深いものだといえよう。
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