オートデスクはオープンソースで進化する3DプリンターEmberを発表

オープンソースで進化する3Dプリンター

オートデスクがフラッグシップモデルとなる3Dプリンターの受注を開始した。Emberと言われるこの3Dプリンターは、光造形モデルのオープンソースタイプ。

オートデスクが進める3DプリンターのOS、スパークプラットフォームのフラッグシップモデルだ。この3Dプリンターは、エンドユーザーを対象にしたものではなく、材料開発者や、研究機関、ハードウェアメーカー、その他のメーカーに販売されることになる。

ちなみに光造形とは液状の熱硬化性樹脂であるエポキシ樹脂に紫外線を照射し造形する製法。デスクトップタイプのFormlabs社のForm2などが人気だ。 

価格は1ユニット5995ドル(約70万円)で、2015年の初頭には出荷される。このEmber 3Dプリンターを購入するには、スパークプラットフォームのプログラムに参加することが必須で、オートデスクからアクセスパスを与えられた企業のみが購入可能。このプログラムに参加することので、SLA、DLPのEmber 3Dプリンターのキットの取得と、専用の技術サポート、独自情報やイベントへの限定アクセスが可能だ。

オートデスクはこのプログラムを通して、3Dプリント業界のイノベーターを発掘し提携したい考えだ。具体的には、ハードウェア、ソフトウェア、材料関連の業界から優れた人材と提携パートナーを見つけ出し、ともに発展する狙い。まさにオープンソースの力をフルに活用した展開方法と言える。

性能は10ミクロンの積層ピッチの高解像だが、参加し購入した企業は、スパークプラットフォームに参加することで、更なる改良につなげられるというわけだ。ちなみに販売予定の国は、米国、カナダ、ドイツ、フランス、ベルギー、イタリア、イギリス、アイルランド、スペイン、オランダ、スイスで、残念なことに日本やアジアは含まれていない。

オートデスク オープンソース3Dプリンター
オープンソースの3DプリンターEmber

Ember 3Dプリンタースペック

  • 積層ピッチ:10ミクロンの超高解像
  • 最小造形サイズ:100ミクロン
  • 製法:SLA、DLPの光造形
  • オープンソースでスパークプラットフォームで進化・改良

拡大するスパークプラットフォームとは、その真の狙いは?

それでは一体オートデスクが提供するスパークプラットフォームとはどのようなものなのだろうか。オートデスクはこのプラットフォームで、3Dプリントに関するハードウェア、ソフトウェア、材料に関するイノベーションを興したいというが、なかなか想像が難しいだろう。

実はスパークプラットフォームには既に多くの3Dプリント関連の有名企業が参加しつつある。その実態を見ていただければ、スパークプラットフォームの凄さ、恐ろしさがわかるのではないだろうか。例えば、全世界でローカル3Dプリントサービスを展開する3DHUBSや、オンライン3Dプリントモデルの検索サービス3D Industri.es、3DプリンターメーカーのExOne、つい先ほど3Dプリント業界に名乗りを上げたヒューレットパッカード、そしてクラウドコミュニティの製品開発を行なうローカルモーターズと、既にこの業界の多くの有名企業が参画しているのだ。

下記はその一覧になるが、3Dプリント業界の、ハード、ソフト、システム、アートなど様々な分野が参加している。この一大プラットフォームはこうした3Dプリント業界のリーディング企業が参加する巨大オープンソース機構と言えるだろう。

3DHUBS:1万社近いローカル3Dプリントサービスのネットワーク

3DHUBSは、言わずと知れたローカル3Dプリントサービスのネットワーク。既に全世界から登録するローカル3Dプリントサービスは1万社近くに上る。スパークプラットフォームとの提携では、全世界で急速に拡大するネットワークをよりシームレスにするための提携だという。

3D Industri.es:3Dデータ検索のグーグル

3D Industri.esの使命は、インターネット上の全ての3Dデータ、オンライン3Dモデルを検索可能にすることだ。3Dコンテンツへのアクセスを民主化し、ユーザーが必要なパーツの3Dプリントを迅速化することを目指している。スパークプラットフォームでは、すべてのユーザー、消費者へのアクセスを可能にするために提携している。

Authentise:3Dデータの著作権保護

こちらはたびたびご紹介した、グーグル生まれのベンチャー。Authentiseは、3Dプリントデータのストリーミング技術、いわば3Dデータの著作権保護と、データの安全性を確保するシステムを開発する企業だ。

Emerging Objects:3Dプリント建築企業

Emerging Objectsは、3Dプリント建築に特化した企業だ。家や建築物のカスタマイズや3Dプリント製造、そして素材の開発を行なう専門企業。スパークプラットフォームへの参加は、大規模建築の3Dプリントに関する構造プリントと、素材開発が狙いだ。

ExOne:バインダージェット3Dプリントメーカー

ExOneは40年以上続く3Dプリンターやレーザー加工の精密機器メーカー。特に独自のバインダージェット技術に強みを持ち、ドイツ、アメリカ、日本をはじめ世界中に展開している。

DREMEL:ユーザーフレンドリーな3Dプリンター

DREMELはユーザーフレンドリーな3Dプリント体験を提供する3Dプリンターメーカー。スパークプラットフォームでは優れたデジタルコンテンツや製造のためのハードウェア接続をよりよくする目的で参画。

ヒューレットパッカード:3Dプリンターで新規参入を果たす

ヒューレット・パッカードは最近インクジェット3Dプリント技術を利用した独自のマルチジェットフルカラープリントの3Dプリンターを発表した。スパークプラットフォームでは、マルチジェット技術をさらに開発しより多くの種類の素材で対応させる目的がある。

ローカル・モーターズ:自動車のクラウドファクトリー

ローカル・モーターズは自動車のクラウドファクトリーだ。自動車を3Dプリンターでカスタマイズし、全世界で販売する計画を持っている。スパークの参加は、ツールパスの最適化、層間剥離の問題や支持構造を含む3次元印刷プロセス中に発生した課題解決のためにだ。

MatterFab:低価格な金属用3Dプリンター

MatterFabは、アメリカカリフォルニアに居を構える工業用金属3Dプリンターのメーカーだ。彼らの狙いは金属製3Dプリンターの超低価格化。スパークプラットフォームへの参加は、プリントスピードの向上と材料費の削減を向上させたい狙いからだ。

Nervous System:科学・芸術の3Dプリントデザインスタジオ

Nervous Systemは、服やアクセサリなどフアッション、アート、科学などの3Dプリントデザインを手掛けるデザインスタジオ。Webベースの製品設計のアプリの開発をスパークプラットフォームで強化し、ユーザーがより簡単にオンラインでカスタマイズできる仕組みを開発することが狙いだ。

Ultimaker:オープンソースのFDM 3Dプリンターメーカー

Ultimakerはいわずとしれたオープンソースの低価格3Dプリンターメーカーだ。スパークプラットフォームへの参加はより自社のFDM3Dプリンターを性能アップし、ユーザーエクスペリエンスを最適化するためだ。

まとめ 全世界の3Dプリント関連企業の巨大研究開発機構

既にスパークプラットフォームにはこれだけの企業が参加している。このプラットフォーム内で共有され、そして改良されたアイデアは、プラットフォームに参加している企業たちによって実現される。いわば、全世界の3Dプリント関連企業の巨大研究開発機構と言い換えてもいいだろう。そしてこの開発と同時に今回公開されたオープンソースの3DプリンターEmberもどんどん改良されることになる。

もはや1企業、1国が行なう研究開発では到底太刀打ちすることができない動きと言える。オープンソースと、一部の参加企業たちによるクローズドなコミュニティは、競合することなく共に進化する上手い仕組みで市場における手動的地位を占めていく可能性が高い。製品開発や技術革新の概念を超える取組だ。

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