オートデスクは起業家と中小企業支援のための1億ドル基金を立上

デジタル製造時代を見据えたオートデスクの狙い

ガートナーの市場予測に見られるとおり、3Dプリンターの普及は2015年以降本格的に進み、業界は確実に成長してきている。しかし、その一方でその使用範囲はプロトタイピングの域を出ないのがほとんどの状況だ。工業用のハイエンドモデルならともかく、低価格なデスクトップタイプの3Dプリンターの造形精度は、いまだモックアップレベル。

それでも以前から比べればかなりの進歩だが、新たな製品開発を望む起業家や中小企業からすればもう一歩クオリティの高い機種が欲しいところ。そんな製品開発に情熱を燃やす起業家や中小企業を支援し、そして3Dプリンター自体の普及も促進していこうという動きが登場している。

その企業支援を行なうのは3DCADソフトの世界的メーカーオートデスク。オートデスクはつい先ごろ、3Dプリンターの汎用OSとなるスパークと、それに対応するフラッグシップモデルの3Dプリンターを発表したが、このふたつの商品を普及させるため、企業支援専門の投資基金と新たな著作権保護のサービスを立ち上げた。本日はオートデスクの製品開発サポートをご紹介。

1億ドルの基金で製品開発をサポート

オートデスクが今回立ち上げたスパーク投資基金はおよそ1億ドル(約100億円)にも及ぶ巨大なもの。

その基金の目的は、素晴らしいアイデアや製品を持つ起業家や中小企業に対して資金援助を行い、彼らの製品化を実現させようというもの。その際、資金援助をすると同時にオートデスクが提供するスパークプラットフォームとオープンソースの3Dプリンターを使用してもらうことが狙いだ。

また、オートデスクは、アイデアを持ち、それを実行する能力を持つものに資本を提供することで、このスパーク基金が3Dプリント業界における促進剤として機能するように望んでいる。このスパーク資金の面白い点は、資金提供される企業はメーカーに限っていないことだ。

開発される製品やサービスがハードウェアでもソフトウェアでもどちらでもよく、また材料でも資金を受ける資格を持つ。その条件は詳しく明かされていないが、オートデスクのスパークパートナーになることで、3Dプリンターの現在障壁を破り、更なる発展を遂げることが望まれるものとある。

3Dデータの知的財産保護の仕組みも提供

オートデスクは起業家や中小企業を資金面からサポートすると同時に、もう一つ製品開発には欠かすことのできない分野でのサポートを提供し始めた。それは3Dデータの著作権保護システムをオートデスクのさまざまなソフトウェアアプリケーションに組み込むというもの。

この著作権保護のサポート提供に当たり、オートデスクはシステム開発を行なうAuthentiseとパートナーシップを締結した。Authentiseは以前もご紹介したが、グーグルが創設した教育機関Singularity Universityから生まれたスタートアップ企業。

フォーチュン100に名を連ねる大手メーカーや小売りチェーンが3Dプリントサービスを開始するにあたり、Authentiseの著作権保護システムの導入を検討している。

ちなみにAuthentiseが提供する3Dデータの著作権保護のシステムとは、3Dプリントしたいデータが3Dプリンターに送信された時点で、デジタルデータが破棄されるという3Dデータをストリーミング化する仕組み。オートデスクは自らが開発する3DデザインソフトウェアにこのAuthentiseのシステムを導入することで、製品開発に携わる起業家や中小企業が安心して3Dデータを配布することができるようにする。

ストリーミングシステムで3Dデータの著作権保護を図るAuthentise

まとめ

3Dプリンターがもたらす最大の影響の一つは、優れたアイデアが製品化される機会をより多く作り出すことだと言える。これまでの製品開発は、極端な表現を使えば、常に蛇口のひねり先、いわば販売量を基準に行わなければならなかったと言える。金型による製造は製造コストが高く一定数の販売量が見込めなければ生産はされない。

もちろん、購入してくれるユーザー数を増やし、売上を伸ばすことは大切なのだが、一定以上の販売数が見込めなければ開発されない商品は山のように存在していた。

しかし3Dプリンターとインターネットが普及することで、販売数にとらわれないより小規模な製品開発が可能になっている。こうしたアイデアをカタチにする製品開発は、今後ますます拡大していくし、その拡大の背景には3Dプリンターが大きな役割を果たすことは確実だ。

またその逆もしかりで、こうした製品開発のアイデアや、製造のアイデアが促進されることで、3Dプリンターの性能も一段と向上すると言える。オートデスクはこうした3Dプリンターがもたらす製品開発への影響を正確に読み取とり、それにより今後群がり起こる起業家や中小企業を支援することで将来くるであろう本格的なデジタル製造時代に対応しようというものだ。

オートデスクの3Dプリンター専用OSスパークの記事はこちらもどうぞ

i-MKAERでは光造形3DプリンターForm3+やレーザー焼結3DプリンターFuse 1Raise3Dシリーズなど多彩な3Dプリンターのノウハウ、販売をご提供しています。ご質問や無料サンプルや無料テストプリントなどお気軽にご相談ください。