進むグラフィックデザインから3Dプリントへの連動
グラフィックデザインの世界で圧倒的な存在感をほこるソフトウェアがAdobe社のイラストレーターとフォトショップだ。むしろこの二つのソフトウェア以外に使用されている存在は無いといっても過言ではない。もちろんその使用範囲はグラフィックの枠を超えプロダクトやパッケージなど、幅広くデザイン制作の現場で使用されている。
中でもフォトショップは写真や3Dモデルなど画像編集ソフトとして幅広く使用されている。特に3Dモデルの専用ソフトではないが、フォトショップは2013年以降、本格的な3Dモデルの編集やカラー、テクスチャーの編集、3Dプリントとの連動機能を強化してきている。グラフィックソフトならではのペイント機能を生かし、メッシュ修復機能によってより高い3Dプリントでの再現性を実現している。
既にMakerBotやi.Materialise、Shapewaysなどとの3Dプリントの連動も果たしているが、今回新たに、3Dプリンターの巨人、ストラタシスと提携し、ユーザーに高性能なフルカラー3Dプリントサービスをもたらしている。本日は拡大する3Dプリントの利用と、ストラタシスの新たな3Dプリントサービスについてご紹介しよう。

フォトショップでストラタシスの高性能3Dプリントを利用可能
今回ストラタシスとアドビが開始する新サービスは、ストラタシスダイレクトエクスプレスといったアメリカとカナダで展開するストラタシスの3Dプリント製造サービスを利用するもの。
フォトショップのユーザーは誰でもファイルをストラタシスダイレクトエクスプレスにアップロードすることが可能で、高性能なフルカラー3Dプリントを体験できる。手順は極めてシンプルで、フォトショップのユーザーは、3Dプリンターと材料を選択し、見積もりを入手、その後3Dファイルをエクスポートすると、数日以内にフルカラーで尚且つ耐久性に優れた3Dプリント造形物を手にすることができる。
前述で述べたとおりグラフィックアートの世界で活躍するアーティストやデザイナーはほぼ全てがアドビのイラストレーターとフォトショップに馴染みが深く、3Dソフトや3Dプリントには親しみが無いのが現状のところ。このプロジェクトに関して、ストラタシス執行副社長Dan Yalon氏は「ストラタシスはプロダクトデザイナー、アーティスト、エンジニア、メーカーがフルカラー3Dプリントの限界をプッシュする手助けする態勢を整えています。
今回のアドビシステムズ社との提携は、この目標を達成するための大きな一歩である」と述べている。PolyJetや高性能なFDMを揃え、最終品の製造まで手がけることが出来るストラタシスならではの取り組みだといえよう。そしてこうした取り組みにより、さらにアーティストやデザイナーといったクリエイターの新たな可能性を拡大し、クリエイティブの世界を刺激することにつなげられるとしている。
アドビフォトショップからストラタシス3Dプリント動画

本格的なクラウド製造。ストラタシスダイレクトエクスプレスとは
今回フォトショップから3Dデータをアップロードし、実際に製造が行われるストラタシスダイレクトエクスプレスとは一体どのようなサービスなのだろうか。一般的に3Dプリンターはラピッドプロトタイピングと言われるように試作のための道具であったが、ストラタシスは最終品の製造を行うラピッドマニュファクチャリングという新たな概念を打ち出している。
このラピッドマニュファクチャリングという概念は、高性能でさらには実際に実用品として使用することが出来る性能を持つストラタシスの3Dプリンターならではのものだといえよう。例えば、一般的な廉価版のFDM3Dプリンターでは、ABSフィラメントやPLAフィラメントといったフィラメントが主流だが、ストラタシスの高性能FDM3Dプリンターでは、上記の素材に加え、ナイロンやポリカーボネート、ASA樹脂、ULTEMといった実際の工業用で使用が耐えうるエンジニアリングプラスチックを高性能で造形することが出来る。
これは他のFDM3Dプリンターとは明らかに一線を画し、最終品を作ることが出来る数少ないレベルだということができよう。こうした3Dプリンターを持つことから始まった直接製造のサービスが「ストラタシス ダイレクトマニュファクチャリング」で、「ストラタシスダイレクトエクスプレス」はその高速プロトタイプとコンセプトモデル製造のためサービスになる。
そこではマルチマテリアルでフルカラー対応のPolyJetを始めFDM3Dプリンター、光造形、さらにはレーザー焼結、CNCミリング、射出成形機まで搭載し、3Dデータからの迅速なプロトタイプ製造を行っている。ちなみにFDMやPolyJetの技術はストラタシスの技術だが、エポキシ樹脂やアクリル樹脂、ポリウレタンなどをベースにした紫外線硬化性樹脂に紫外線を照射して硬化させる光造形は他社のもの。ここでは、ダイレクトデジタルマニュファクチャリングに特化したストラタシスの懐の深さが伺える。
また、「ストラタシス ダイレクトマニュファクチャリング」では品質マネジメント規格であるISO 9001と9100 ASを取得しており、プロトタイプからパーツ製造までを行っている。今回のアドビとの提携でもPolyJet White、PolyJet HD Blue、PolyJet GreenFire、SLA White、SLS White、FDM ABS in multiple colorsといった素材に対応している。


まとめ データ化はボーダレスに。サプライチェーンの変革は間近
アドビのフォトショップはかなり前から3Dプリントとの連動機能を拡充し始めている。また、その一方で、オートデスクなどの従来からの3Dデザインソフトも3Dデータ化をどんどん使いやすくし始めている。このような状況から見て取れることは、二次元のグラフィックデータや三次元の3Dデータなどの境界線がなくなり、双方の互換が進むことが予測される。すなわち、データ化という作業が大幅に効率化され、それ以前のどのようなものを作るかといったデザインの能力が問われることになる。
こうしたソフトウェアの簡略化、自動化が進むに従って、3Dプリンターの性能は向上し、より忠実に高性能な造形が可能になるだろう。今回のストラタシスダイレクトエクスプレスやストラタシス ダイレクトマニュファクチャリングのように、本格的なデジタルデータからの製造の時代が到来することになる。既に自社の3Dプリンターだけではなく、レーザー焼結や光造形、さらには射出成形機まで揃え、試作から製造まで一貫して行うクラウド製造の体制が整いつつある。
現状はアメリカ、カナダを中心に他国での展開は未定だが、クラウドを中心に行うのであれば、将来は全世界展開も不可能ではないだろう。既にUPSなどもストラタシスの3Dプリンターを配備してパーツの3Dプリントサービスを開始した。本格的なサプライチェーンの変革が間近にきているようだ。
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