競争が激化するオンライン3Dプリントサービス市場
3Dプリンターの進化は、続々とオンライン3Dプリントサービスを拡大させている。数年前までは、オンラインから直接製造に繋げるこのサービスは、世界に数社しか存在しない状況であった。Shapeways、Sculpteo、i.materialiseといった数社のみで、3Dプリンターが注目されるに伴い、新規参入する企業が後を絶たない。また最近では新規参入する企業の業態もさまざまで、少なからずものづくりや、サプライチェーンに影響を与える業界が顕著だ。
UPSやキンコーズといった紙のプリントサービスしかり、シンガポールポスト、フランス郵便局といった郵便事業を展開する業界も当然のことながら時代に対応する動きを見せている。更にはストラタシスのような3Dプリンターのグローバルリーダーも参入を開始し、自社の高性能3Dプリンターだけではなく、レーザー焼結、光造形、レーザーカッター、射出成形機まで搭載している。
このサプライチェーンに巨大な影響を与えるサービスは、もはや新しいものでもなんでもなく、生産拠点をグローバルに拡大するデジタル製造時代の新たな形態として、既に競争が開始され始めている。
3Dプリントプロバイダを選ぶ基準とは。EOS創設者が後押しするオンラインプリントサービス
このように続々とさまざまなサービスが登場する中、実際にユーザーがオンライン3Dプリントサービスを開始する際に、どのような基準で判断すれば良いのだろうか。例えば3Dプリントの価格や精度は、物体の形状や素材、使える3Dプリンターの種類、CADデータの種類や完成度、プリントする数量、距離などによっても千差万別である。
また基本的に3Dプリンターというマシーンが製造するとは言え、現状の3Dプリンターでは対応出来る範囲が限定されており、更には表面処理や塗装といった後加工などサービスによって対応出来る範囲も異なる。このように3Dプリントサービスを提供するプロバイダが拡大するに伴い、当然、最適なサービスを選ぶ基準が必要になるだろう。
このような状況の中、ドイツで画期的なサービスが登場している。3DYOURMINDと呼ばれるこのサービスは、自らの3Dモデルをアップロードするだけで、即座に最適なサービスプロバイダを選定してくれるというものだ。また、このサービスにレーザー焼結の金属3Dプリンターで世界一のシェアを持つEOSの創設者ハンス・J・ランガー氏が投資を行い後押しを行っている。
150種類以上ものパターンが選択可能。自動補正とCADプラグインも搭載
この3DYOURMINDは、3Dデータをオンライン上にアップロードすることで、Shapeways、Sculpteo、i.materialiseの3社の価格と納期を比較することが出来る。また、アップロードされた3Dファイルをリアルタイムに自動修復する機能が搭載されており、プリントサイズ、素材、形状などによって3Dプリンターに最適化される。
データ補正後は上記3社から選択しプリントボタンを押せば購入出来るという簡単な仕組み。また自らが使用している3DCADソフトにプラグインとしてインストール可能で、プリントボタンという形で3Dソフトと一体化出来る。対応しているCADソフトはSolidWorks、Sketchup、SolidEdge、AutoCAD、Fusion360、Blender、Inventor、3DS Max、Rhinoなど、ほとんどのCADソフトに対応済みだ。
下記はこの3DYOURMINDのデモサイトだが、実にシンプルなオンラインサービスで、アップロード後はサイズと素材を選択するだけ。選べる素材は多岐に渡り、ナイロン(ポリアミド)、アルミ粉末とポリアミドの混合物であるアルマイド、石膏、樹脂、ABS樹脂、金属、セラミック、ゴムライク、などなどさまざまな種類が選択可能。
また素材と同時に仕上がりの方法も選択でき、素材と仕上がりの組み合わせで合計150以上もの高精度な3Dプリントが選択できる。選択する素材によってそれによって使用されるプリント方法や、強度、ディテールの幅も明確になりユーザーからすると極めてシンプルで分かりやすいサービスだといえよう。もちろんアップロードされるデータはドイツのデータ保護法と暗号化されたSSLにより転送される。
まとめ 3Dプリント製造の世界的な品質基準を明確化する動き
3Dプリントサービスといってもさまざまである。3Dプリンターはデジタルデータがあればマシーンが自動で行ってくれるというイメージが先行しがちだが実際はそれを使いこなす技術が必要になる。その機械の特性とデータの形状、物性などを正確に理解しあるべき姿で製造することが求められる。
爆発的に3Dプリンターが登場し、様々な種類のマシーンが登場してきている中、ものづくりに即した正しい使い方が必要になってくる。いわばこの3DYOURMINDというサービスはこうした氾濫するサービスと情報を精査し、一定のクオリティを確保する役割を担っていると言えるだろう。
この動きは、このベンチャー企業に投資する創設者ハンス・J・ランガー氏が立ち上げたEOSが3Dプリンターの生産性と品質保証を確立する品質基準を作り始めている動きと無縁ではないのだろう。その一方で、デモサイトを見る限り、オンラインサービスに求められる徹底した利便性とユーザーインターフェースがシンプルに確立されている。
このベルリン工科大学のスピンオフとして生まれたスタートアップは、ほぼ全てのCADソフトに対応した専用プラグインと、シンプルなプリントまでのインターフェースを武器に、「最高の3Dプリントサービスから完全な3Dプリントを受け取るためのオンラインサービス」をグローバル市場で展開する明確なビジョンを持っているに違いない。
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