3Dsystemsの大手3Dプリントサービス買収に見る世界の生産工場を制する動き

大手3Dプリント製造サービスRobtec買収

3Dプリンターのグローバルリーダー、3Dsystemsがまた新たな買収を発表した。3Dsystemsは昨年来、数々の企業を買収、資本提携することで多分野における3Dプリント市場への参入を果たしているが、今回の買収によって本格的に3Dプリント製造サービスを開始するようだ。

これまでの3Dsystemsの買収は、自社の技術力を向上させるものや、自社製品の販路拡大を進めることにメリットのあるものが多かったが、今回はラテンアメリカ最大の3Dプリントサービスということで、本格的に製造分野への参入を行うとみられる。

今回買収されたRobtecはブラジルサンパウロに本社を置く3Dプリント製造サービスを行う企業で、アルゼンチン、チリ、メキシコ、ウルグアイ、中国など、今後の生産工場となりうる諸国への展開を行っている企業。

今回の買収にあたり、Quickparts®(クイックパーツ)サービスというサービスを拡大させることになる。クイックパーツとは名前の通り、パーツ製造を迅速に行うことを意味しており、既にRobtecが取引している、

航空宇宙分野や自動車関連、電子機器関連企業に対してパーツの3Dプリントサービスを強化するとのことだ。

例えば有名企業でいえば自動車メーカーではフィアット、メルセデス、フォルクスワーゲン、自動車パーツメーカーでは全世界170以上の拠点を持つビステオン、航空宇宙関連ではシーメンスやブラジル最大の航空機メーカーエンブラエルなどだ。

Robtec

 まとめ –世界の工場を制する動き-

3DsystemsはRobtecの株式の70%を取得し、残り30%は今後5年以内に買い取っていくとのことだ。3Dsystemsは今回の買収によって、3Dプリント製造のグローバルネットワークを構築することができるだろう。

前述のようにRobtecは今後、世界の生産工場となりうる新興国に拠点を持ち、大手メーカーの3Dプリント製造を一手に引き受けているからだ。これにより、より安価な人件費を求めて生産拠点を探すというこれまでの事業展開が行われなくなるかもしれない。

3DsystemsとRobtecが持つネットワークを利用することで、データ通信と迅速なオンデマンド生産によって速やかに現地でパーツ製造ができるためだ。

こうしたグローバルワイドな3Dプリント製造を構築できるかどうかは今後の国の競争力に大きく影響してくるのではないだろうか。3Dプリント技術がもたらす経済的効果は膨大であり、製品開発のスピードを速め、競争力を強化してくれる。

こうした3Dプリンターの特性は、巨大なグローバルネットワークを持つ生産体制に活かすことで何倍にもその力を発揮するだろう。アメリカは3Dsystemsが中心となってこうした体制を整備しつつあるが、イギリスやシンガポールなども、国家予算を投じて一大3Dプリントセンターを建設中だ。

これにより在庫不要のオンデマンドなパーツ生産と、スピーディな商品開発を可能にすることで、自国の主力産業の強化を図る方向にある。

もはや3Dsystemsの動きは一企業の範疇を超えた国策にまでなっていると考えられる。

このようにして自国製造業の競争力を高めた国と、そうではない国との違いは今後明確になって出てくるだろう。イギリスなどは3Dプリントセンターの開設で得られる経済効果まで発表している。

これまで日本も自国メーカーの利益率が海外企業と比べた場合圧倒的に低く、競争力低下の一因にもなっていると指摘されてきたが、3Dプリント技術をどう製造業に取り入れるかで異なってくるだろう。

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