FDM、FFFタイプのフルカラー3Dプリンター
空前の3Dプリンターブームが起きた2013年、一躍注目を集めたのがbotObjectsのフルカラー3DプリンターProdesk3Dだ。正確にはフルカラーではなくカラーグラデーションのFFF3Dプリンターだが、出荷時の対応から極めて評判が悪く、一部のユーザーからは入金詐欺とも言われていた。しかし相当の期間のびたものの出荷は実際に行われており、同社のソフトウェアやファームウェアも更新を重ねている状況であった。
しかしここにきて、3Dプリンターメーカーの雄、3Dsystemsに買収されたことが発表された。3Dsystemsは自社で進めるフルカラー3DプリンターCubePro®Cの開発にbotObjectsの技術を利用していると発表。今日からラスベガスで始まる世界最大の家電見本市CESの同社のブースで展示を行なう予定だ。
既に見本市で製品が展示されるということは、買収はもっと早い段階から開始されていたようで、より高精度で、高速なフルカラーFDM3Dプリンターが登場することとなる。展示が開始されればその詳細も明確になるだろうがリリース状況をご紹介しよう。
プリントスピードを向上し、ABS樹脂にも対応
botObjectsのProdesk3Dのフルカラー技術は5色のPLAフィラメントを混合することで再現している。5色はシアン、マゼンダ、イエロー、ブラック、ホワイトで色の混合はソフトウェア上で簡単に設定できる。1色でもプリントできるがProdesk3Dの最大の特長はポインティングすることで物体のカラーを自由にグラデーションが出せる点にある。
グラデーションの階層は6段階まで可能で、カラーチャートの好きな部分にポイントを合わせるだけ。今回の3Dsystemsが発表するCubePro®Cには、botObjectsのデザイナーやエンジニアなどが既に水面下で参画しており、同様の5色混合のフルカラー技術が使用されているとのこと。
積層ピッチもProdesk3Dの25ミクロンという高解像度を踏襲し、プリントスピードも大幅に向上させてあるようだ。ちなみにProdesk3DはPLA樹脂のみであったが、フルカラーのCubeProではABS樹脂にも対応している。価格は4990ドルで、Prodesk3Dよりも若干高め。リリース内容ではProdesk3Dがそのまま高度化してCubeProとして生まれ変わったような印象を受ける。
この発表に関して3DsystemsのアビCEOは「私たちは、消費者やプロシューマー向けに対して、botObjectsからの超薄層と高速技術による画期的なフルカラー3Dプリンターを追加することに興奮している。これにより3Dプリンターの民主化とグローバル化を加速する」と述べている。
まとめ 買収でアフターサービスと製品のクオリティが高まる
この買収がエンドユーザーにとってありがたい点は二つある。第一は保守、メンテナンスなどのアフターサービスが安心になるという点だ。botObjectsのエンドユーザーに対数対応は評判がきわめて悪く、出荷時期も1年近く遅れる状況が多発していた。これは開発資金を先に調達するためとの悪評が高く世界中の消費者から信用を失っていた。
こうしたメーカーが相手ではどうしてもメンテナンスなどのアフターサービスの対応が不安になるもの。一方で3Dsystemsは世界中に販売代理店や支社があり、3Dプリンターでは老舗ともいえる。技術的なサポートなどもはるかに安心だと言える。もう一点ユーザーにとってありがたい点の第二は、製品自体の性能が安定するということが言える。
現在のbotObjectsの3Dプリンターは製品としての完成度が雑で、各パーツ部分の接合部は極めて粗い。こうした製品自体の性能も3Dsystemsの傘下に入ることで向上することが予測される。